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転生ダンジョンマスターですが、弱小だし、辺境だし、どうやって生き残れと?  作者: 膝関節の痛み
第4章 辺境平民ダンジョンの身の丈

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5.冬休みの宿題

 4日後、父さんたちはご機嫌で帰ってきた。

 魔猪を3頭も仕留めたらしい。

 村から調査に同行したフレディさんとポーラさん夫婦もいる。


 早速、無事の帰還を祝って、自宅の食堂で魔猪大会が開かれる。

 フレディさんたちは時々温泉仕事を手伝ってくれる身内だから、この前第2層の草原エリアのことを教えた。

 口止めはしたけど、仲のいい村の人にはもう知られてもいいかなって思うから、魔法契約はしなかった。


 どんな反応をするかドキドキしたけど、「そっか、ダンジョンだったのね」というポーラさんの一言で終了。興味ナシかよ。

 さすがニーニャ村民、小さいことも大きいことも気にしない。


「いやあ、メイジーを連れてって良かったわ!

 木の洞に角兎の変種が隠れていやがって、危なく足やられるところだった。

 やっぱいい目してんな、お前」


 珍しく父さんからダイレクトに褒められて、お姉ちゃんは照れてる。

 無事にフラグを折ってくれてありがとね。

 とかほっこりしてたら、ポーラさんが無神経バスターを炸裂させた。


「すごいわね、メイジーちゃん!

 その腕なら、温泉の受付なんかしてる場合じゃないんじゃない?」


 今その話題に触れないで! てか、ピンポイントでそこ突く?

 ほら、お姉ちゃん、笑顔ちょっと引きつってるじゃん。

 あと、「なんか」とは何だ! 温泉受付バカにすんな!


「なんだ、メイジー、変な顔して。

 ああ、そっか。確かに笑ってる場合じゃねえかもな」


 父さんがなんか勝手に納得して話題を変え、表情を引き締めた。

 話がそれたのでOK。


「今の時期の魔猪はありがてえけど、おかしいっちゃおかしいんだ。

 今だけだったらいいが、魔物の分布が変わった結果だとしたら、春になったらもっと危ねえのが出てくるかもしんねえ」

「ヒュー、カッコつけてるとこ悪いけど、それだったら、もう男爵が動いてるわよ?

 ねえ、ミリ」


 無事帰ってきたんだから、母さんもそんなバッサリ切らなくてもいいのに。

 でも、特にフォローせず引き継ぐ。


「うん。春に大物が出てくるのは父さんの予想通りで、討伐のために冒険者に応援を要請することになった。

 明日ディオさんが王都に転移して、顔見知りの冒険者に直接手紙を渡すって」

「なんだよ、つまんねえ。せっかく俺が情報拾ってきたのに。

 つーか、あのデブエルフ、いなくなってせいせいしたのに、また出て来やがったのか。まあ、パシリなら子供に丁度いいけどよ」

「もうとっくに痩せたでしょ?いつのこと言ってんのよ、まったく……」


 父さんとディオさんは相変わらず仲が悪いけど、以前よりはマシにはなった。


 翌日、ディオさんはその使い走りから帰ってきた。

 レイチェルさんからの返事もしっかりもらってきている。


 チェルさんはこちらからのお願いを快諾してくれた。

 森の情報をアプデしつつ、春に間に合うように人選をしてくれるそうだ。

 実にありがたい。これだけでも、ダイエットサロンやった甲斐があったよ。


 魔物対策が一段落し、温泉の日常が戻ってきた。

 お姉ちゃんが復帰したから、シフト的にも余裕がある。

 猟師復帰問題は、解決策が見つからないので、申し訳ないけどちょっと保留。

 一度お姉ちゃんの意見も聞いて、猟が本格的に始まるまでにはなんとかしたい。


 そんで私は、お勉強期間に突入した。

 新機能の習得を終えたコアちゃんから呼び出しを受けたのだ。

 マニュアルレベルⅡになってマニュアルも更新されたんだけど、目を通すように言われてたのを放置してたら怒った。

 私が悪いのはわかってるけど、マジ忙しかったんだよ。

 世間的には冬休みなんだから、ちょっとぐらい休んだっていいじゃん。


 また、コアちゃん先生の『は?』を聞くのはキツかったど、これが本来のダンマスの仕事だから、ちゃんと頑張りました。

 頭がパンパンなので、受付業務はお姉ちゃんにお任せしちゃったけど。

 「なんとかする」って決めたばっかなのに、すごくバツが悪かった。


 レベルⅡダンジョンの新機能のメインは、ダンジョンの存在自体に関係するものだった。

 具体的に言うと、「ダンジョン分割」「ダンジョン吸収」「ダンジョン移転」が可能となった。

 聞いただけで重要機能だとわかる。進化条件の予測でびっくりしている場合じゃなかった。


 まず「ダンジョン分割」。

 これは、大きくなりすぎたダンジョンをふたつに分ける機能だ。

 レベルⅠでもできた階層の切り離しは、リストラみたいなもので、切り離された階層は生き残ることができず消滅する。

 これに対し、ダンジョン分割の場合は、コアも分割するので、両方が生き残ることができる。

 経営効率化のための分社化っていうイメージだ。

 緊急時には、片方を囮として、侵攻者を引き付けることもできる。


 「ダンジョン吸収」は、近くにダンジョン成長の邪魔になるようなダンジョンができた場合、それを「食べちゃう」機能。

 ダンジョン同士の縄張り争い対策だね。

 食べれたダンジョンは基本消滅するが、能力によっては内部にコアだけ残され、素材を生産させられることもあるらしい。

 負けたら死刑か永久奴隷。どっちにしても最悪。

 近くのダンジョンが対象ということは、ダンジョン分割した相手と争う可能性もあるわけで、異世界もの定番の皇位継承争いを思い出した。


 最後の「ダンジョン移転」は、つまりダンジョンの引っ越し。

 ダンジョンの場所が生存に適さなくなった場合に、別の場所にコアを移転させてダンジョンを再構築する機能だ。

 コアを運ぶのはダンマスの役目になるから、責任はこれが一番重い。


 どれもダンジョンの生存に関わることだ。

 成長すればするほど、リスクも跳ね上がるってことか。

 ダンジョン業界も、ほんと世知辛い。


 幸い今のうちのダンジョンは、そんな規模でもないし、近くにライバルもいない。

 場所も辺境のどん詰まりだから、戦場になる心配もない。

 可能性があるとしたら、ドラゴンに襲われて逃げるくらいだろうけど、その最強ドラゴンは温泉大好きな太客である。


 当分、この新機能を使うことはなさそうでホッとした。

 ダンマスになってまで大それた争い事とかほんと勘弁。

 戦いたいんだったら、素直に貴族に転生してるよ。

 まあ、ダンジョンの寿命はないに等しいから、未来には何かあるかもしれないけど、そんな先のことは知らん!


 その他にも、「モンスター召喚・送還」とか「部分吸収」とか「魔石製造」とか細々あったけど、一番嬉しかったのが「周辺偵察」っていうドローンカメラっぽい機能。空に飛ばして、コアルームからリアルタイム映像を見られるらしい。

 魔物戦に戦闘能力皆無の私が行っても邪魔なだけだけど、これがあれば気をもんで結果を待つ必要もなくなる。ナイス!

 今回の新機能の中で、お役立ち度ランキング1位は間違いなくこれだと思う。


 その後、勉強会をなんとかクリアした勢いで、お姉ちゃんと話をした。

 勢い、大事。一人でウダウダ考えていてもしょうがないからね。


「森に行ったのはね、父さんが油断してるから急に心配になっただけだよ。

 弓は敵わないけど、偵察は私が一番上手だからね。

 でももう大丈夫。冒険者の専門職来てくれるんでしょ?

 私はちゃんと温泉の仕事するから気を使わないで」


 ってお姉ちゃんは笑ったけど、気を使ってるのはお姉ちゃん方だよ。

 ダンジョンのことを知っている人が就職してくれればいいわけだから、いよいよ村の人にバラすタイミングを考える時かなって思った。


 コアちゃんや両親にも相談して、早めに結論を出そうって決めた。


 そうこうしているうちに時は進み、春を前に、色々なことが動き出す。


 冒険者が来る日が決まった。

 レイチェルさん自ら連れてきてくれるって手紙が来た。

 村の危機ではあるけど、久しぶりに会えるのは楽しみだ。


 弟子一号の階段づくりもなんとか間に合った。

 ホーさん、頑張った!

 最後の方には、直通トンネルの中間部に掘った仮眠室で寝泊まりして、難工事を一人でやり切ったよ!


 ホーさんは、到達した盆地の風景をちらっとだけ見て、興奮して帰ってきた。

 じっくり見てくればいいのにって言ったら、「師匠の家の中をじろじろ見るわけにはいかない! 失礼だろ!」って怒った。

 はいはい、そりゃ失礼しました。ご自由にどうぞ。


「おう! ちっとは魔法制御の腕も上がったみたいやな。

 村のバタバタ片付いたら、案内してやるさかい楽しみにとき」


 報告を聞いたネーさんも、嬉しそうにホーさんの頭をガシガシしてた。

 その時には、私も便乗させてもらおう。

 褒められる兄弟子を見たディオさんはちょっとむくれていた。


 土魔導士領主が再加入し、村側の魔物迎撃準備は態勢が整った。

 あとはまもなく到着する冒険者を待つばかりだ。


 ただ、そんな中、ネーさんがうるさい。

 内容は、温泉施設に関しての不満だ。

 今じゃなくてもいいのに、「装飾が足りない」だの「雰囲気が画一的」だの「客が増えたのに狭いまま」だの。

 「特にサウナは風呂から独立させた施設にしたい」だの。

 「特に」とかいいから! ちょっとは空気読めよオバ龍!


 あんまりうるさいので了承はした。

 まあ私も改装は考えていたからやるけど、魔物をやっつけてからだからね!


 ――そして、ついに冒険者がやってきた。

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