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転生ダンジョンマスターですが、弱小だし、辺境だし、どうやって生き残れと?  作者: 膝関節の痛み
第3章 弱小辺境ダンジョンの新事業

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9.歓迎!侯爵様御一行

 そして、ついにやってきたプレオープンの日。


 モニタさんを迎える日も緊張したけど、今回の緊張はその比ではない。

 吐きそう。


 なんと言っても、昨日聞かされたプレオープンのお客さんがヤバ過ぎる。

 前日まで教えないとかやめろよ。

 「サプライズだ!はっはっは!」じゃねーよ!

 喜ばせる要素ゼロ、委縮させる要素100%。そんなのサプライズイベントにはなんないの!


 お客さんはアンブロシオ・ウルス・エスパルガル=ガロヌ侯爵様とその奥方。

 王国の西部地域一の家格を持つ超大物貴族だそうだ。

 最近まで自分の住む領主の名前さえ知らなかった私である。

 その名を聞いても「覚えられっか!」という感想しか出なかったけれど(でも必死に暗記した)、西部貴族で逆らえるやつはいないとか、昔併合された国の王家の血筋だとか、領都の人口30万人超えとか教えられてようやくイメージが浮かんだ。

 要するに、アカンやつじゃん!

 もうちょっとマイルドな人とかいなかったわけ?


 あのさあ、確かにここは超ラグジュアリー施設だよ?

 でも、プレオープンの招待客にいきなりそういう人連れてきちゃダメだと思う。

 不慣れで粗相とかしたら物理的に首が飛ぶでしょうが!

 首が飛んでも私は復活はできるけど、DP半減だよ?

 あのあとさらに魔石吸収したから、今うちの保有DP3万超えてんだよ?

 1000DPが500DPになるのとはわけが違うの!

 

 あーもう!

 でも、思い出し怒りしたら、ちょっと落ち着いてきた。


 今さらどうしようもないし、「そういう些細な事を気になさるような人物ではない」というユードラさんの言葉を信じてがんばりますかね。


 そうこうしていると、到着を知らせるベルが鳴り、私たちは頭を下げてお迎えの態勢に入る。ド平民の私は一番端っこに立っている。

 頭を下げたまま、上目づかいで、商会の転移部屋から出てくる足の数を数える。

 先頭はユードラさん。見たことのある靴だ。

 続くのは軍靴っぽいの履いた人が2名。護衛の人かな。

 その後ろからは編み上げのごついブーツと厚底サンダルみたいなのを履いた華奢な足。

 出てきたのはこの5人だから、最後のふたりが侯爵夫妻ってことになる。


 ふたりがソファに腰を下ろし、私たちに頭を上げる許しが出る。

 もちろんガン見はしないけど、ユードラさんと談笑する侯爵の姿を確認する。


 侯爵様は貫禄のある上流階級の黒髪紳士。

 骨太のがっしりタイプで、ダイエットの必要はあまりなさそう。

 リラックスしていて、威張っている感じはないけど、大物オーラがにじみ出ている。

 話の内容からすると、どうやらユードラさんの息子さんが、侯爵の末娘の婿になったようだ。逆玉おめでとう!

 親戚なら色々多めに見てくれるかもしれない。ちょっとホッとした。


 侯爵夫人のセシリアさんは、上品な老婦人。侯爵の隣で微笑みを絶やさない。

 うちのお客さんにふさわしく、しっかりぽっちゃり体型だ。

 サロンのターゲットはこっちだね。


 さて、いよいよご案内タイムだ。

 案内役はもちろんユードラさんだ。


 まずは第一関門のダンジョンイン。

 移動に関しては、場所を特定されないために、転移扉を使った入念な仕掛けがなされているので、気づかれないかドキドキする。


 問題なくロビーに入る。

 この手前、商会の建物内に転移部屋があって、正規のお客さんは自宅からそこに転移することになる。

 元の洞窟第1層以外には外部からの転移はできないので、この方法しかなかった。

 そして、ロビーの扉をくぐったところからがダンジョンだ。


 本当の入口となる最初の転移扉は、注意を引かないように、デザインは敢えて地味なものに変更してある。

 最初の大々的な転移で、直後の転移を隠すって作戦だ。

 これは「この扉、地味だったら誰も気に留めないと思いますー」というヴァネッサさんのアイディア。賢い!


 ロビーは豪華だけど、侯爵様的にはどうってことないらしく、先を促される。

 次はお城フロアだ。


 ここへの移動は、私たちが一番苦労したセキュリティーポイントである。


 お客さんはロビーから「豪華な転移扉」を使って跳ぶ。

 ロビーから下りる階段を作ればそんな必要はないのだが、お客さんは「大げさな転移」によって、商会地下から「どこか知らない遠い場所」に移動したように思い込む。

 目に映るのは森と湖とお城。まさか地下だとは気づくまい。


 実はこの転移扉もダミーだ。

 使っているのは、私が日々使っているシンプルなダンジョン内転移と同じもの。

 ほら、RPGとかでダンジョンの奥に飛ばされるでしょ?アレよ、アレ。


「うお! 何だここは!

 城があるじゃないか!

 誰の居城だ?

 挨拶にいかねばならん!」


 侯爵様、大興奮だ。


 よっしゃ! 大成功!

 私とディオさんは顔を見合わせ頷き合った。

 国内トップクラスの有能貴族が気づかないなら、他の人に見破られる心配はほとんどなくなる。


「ご安心ください。城の形をしたホテルでございます」

「あれがか⁉

 小さいが本物の城のようではないか!名のある建築家の作と見たが違うか?」


 そりゃ本物のお城だからね。ダンジョンパーツだけど。


「いえ。作ったのは土魔導士です。

 実力は十分なのですが、世間には知られておりませんでした」

「そうか、お前のところも隠しておったか。

 儂のところにもそういう隠し札はいるが、あまり知られないように気を付けないといかんぞ。

 この城は少々よくできすぎている」

「はい。ご指摘ありがとうございます」

「しかし、いい腕だな。一度儂に紹介してくれんか?」

「申し訳ありません。そうしたいのはやまやまですが、当人はこの大仕事で魔力を使い果たし、元からの病状が悪化し亡くなりました」

「死んだのか⁉」

「はい。残念ながら。全身の粘膜が糜爛(びらん)する奇病で、治療の方法がありませんでした」

「そうか。それは残念だ……」


 その会話の間、私は腹筋に力をこめて、必死に吹き出すのをこらえていた。


 設定では、その土魔導士の名は「ジョゼッペ・ブリガンドーン」、演じるのはホーカス・ビレン男爵というはずだったんだけど、うちの男爵、登場前に出番なくなちゃったよ。

 しかも、全身の粘膜の糜爛とか、勝手に設定追加してるし。

 てか、そのネタ、オリジナルは私だかんね?著作権料請求するぞ?


 私は一度だけ会った、少々イっちゃった目をして雑草の根について熱く語るビラン、いやビレン男爵の日焼け顔を思い出した。

 実際、彼は土魔法に長けていて、修行すれば城くらい作れそうな気配はあるそうだけど、本人の興味は農地開拓にしかないらしいので、登場シーンなくなっても喜ぶだけだろうね。


 ならまあ死んでも問題ないか。架空キャラだし、その方があとあとの面倒もないし。


 侯爵様御一行は、その架空天才魔導士の遺作を絶賛しながら進む。

 ほんとはダンジョンのパーツだから、私もなんか嬉しい。


 スタートダッシュで侯爵の心をつかんだプレオープンは、順調にプログラムを消化していった。


 お城地下のトレーニングエリアで心地いい汗を流し、露天風呂の解放感と風景に感動し、ユードラさんが連れてきたシェフの料理を堪能し、ダンジョンにもちゃんと訪れる日暮れまで、侯爵様たちは全ての施設を楽し気に動き回った。

 ターゲット層の侯爵夫人セシリアさんも、意外と積極的に体験に参加してくれた。

 私たちも心を込めておもてなしをさせてもらった。


 あ、早速魔道具も売れたのよ。

 モノはディオさん渾身のトレーニング機材。

 騎士さんズの熱い要請で、侯爵領騎士団への導入が決まったのだ。


「――うむ。久しぶりに仕事を忘れて楽しませてもらった。招待、感謝する」


 仕事が忙しいため日帰りになる侯爵は、満足げにそう言ってくれた。


「しかし、ひとつ問題がある」

「はい、ご指摘いただければ幸いです」


 ユードラさんが居住まいを正す。


「ここの最低滞在期間は1ヶ月だったな」

「はい、そのようになっております」

「それではダメだ。儂が来られぬではないか。

 それとも、お前は儂に隠居するまで待てというのか?」


 そう言って侯爵はニヤッと笑った。


「他の奴らはどうでもいいが、儂は好きな時に来られるようにしろ。

 その代わり、間違いのないやつをここに送り込んでやる。

 後で詳しい条件を教えろ」

「……はい! かしこまりました!」


 ユードラさんは破顔して、深く一礼した。

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