表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/21

第19話 生徒達との交流④

前回のあらすじ

チンピラに絡まれてたルルを助けた

 

「それで……先生は何をしてたんですか?」


 隣を歩くルルが、俺にそう尋ねてくる。

 今の彼女は、普段目にする制服姿ではなく私服姿で、彼女のメリハリの効いたスタイルも相まってどこか大人びた雰囲気を醸し出している。


「ああ……特にやることもなかったから、暇潰しに街をぶらついていただけだ。そういうルルはどうなんだ? 彼氏とデートか何かか?」

「そっ……!? そんな訳ないじゃないですか!」


 俺の言葉に、ルルは顔を真っ赤にしてあたふたと動揺する。


「本当か?」

「本当ですよ! 生まれてこの方、ボーイフレンドなんて一人もいたことなんてないんですから!」

「……言ってて悲しくならないのか?」

「……はい」


 ルルはシュン……と肩を落とす。


「それじゃあ……何の用なんだ?」


 俺が改めてそう聞き返すと、ルルは気を取り直した様子で答える。


「あ、はい。今日はリンちゃんとリーナねぇ……リーナお嬢様の二人と一緒にお出掛けする約束をしてたんです。……あ、リーナお嬢様っていうのは」

「リースの姉だろう? 前に一度挨拶をした」

「そうなんですか。リーナね……お嬢様と知り合いだったなんて意外でした」

「軽く言葉を交わしただけだけどな。……それと俺の前で無理にお嬢様呼びしなくてもいいぞ? 普段通りに呼んでいる呼び方で全然構わない」

「そ、それはその……恥ずかしいです……」


 ルルはか細い声でそう言うと、さっきとは別の理由で顔を赤くして俯いてしまった―――。




 ◇◇◇◇◇




 二人との待ち合わせ場所は、王城前の大広場にある噴水前らしい。

 この場所は待ち合わせ場所としても有名で、多くの人で溢れかえっていた。


 この人混みの中から二人を探すのは困難……に思われたけど、そんな事はなかった。

 お揃いのワンピースを着て、色違いのカーディガンを羽織っているアウローラ姉妹が、道行く人々の注目を集めていたからだ。


 二人は人々からの熱い視線を物ともせず、涼しい顔をして噴水前に並んで立っていた。

 他人からジロジロと見られることに慣れているのだろう。流石貴族。


「リンちゃーん! リーナねぇー!」


 ルルが大きな声で二人の名前を呼び、自分の居場所をアピールするように大きく手を振る。

 それに気付き、リースがこちらに駆け寄ってくる。


「遅いわよ、ルル! ……と、メテオライト先生? 何でルルと一緒なんですか?」


 俺の存在に気付いたリースが、首を傾げて尋ねてくる。


「ルルがチンピラに絡まれてる所に遭遇してな。成り行きで助けた」

「えっ!? 大丈夫だったの、ルル!?」


 リースは慌てた様子でルルの肩を掴み、彼女に問い質す。

 そんな友人の様子に、ルルは苦笑いを浮かべながら答える。


「あはは……心配し過ぎだよ、リンちゃん。先生が助けてくれたから、わたしは何ともなかったよ」

「そう。良かった……」


 リースはホッと安堵の息を吐く。


「お久しぶりですね、メテオライト先生」

「ああ、これはどうも。お久しぶりです」


 二人の様子を見守っていると、優雅な足取りで妹に追い付いたリーナがそう挨拶をしてきたので、俺も彼女に挨拶を返す。

 するとそれが気に食わなかったらしく、リーナはぷうっと頬を膨らませる。


「もうっ。そんな畏まった挨拶をしなくてもいいんですよ?」

「そうでした……いや、そうだった。久しぶり、リーナ。それなら俺の事も気軽に名前で呼んでくれて構わないぞ?」

「それこそ畏れ多いですよ。勇……あの称号を持つお方を呼び捨てなどと」

「いや、俺が言ったのは名前で呼んでくれってことだけだけど……」


 俺がそう言うと、リーナは一瞬きょとんとした後、みるみると顔を赤くして両手で顔を覆う。


「は、恥ずかしい……! 勘違いしてしまうなんて……!」

「まぁ……間違いは誰にでもあるから、そんなに気に病まずに」

「うぅ〜……はい……」


 リーナはそう言って頷くと、一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

 そして未だに赤さの残る顔で、俺に話し掛ける。


「それじゃあ今度からは、シン様とお呼びしますね」

「……『様』はいらないんだけど……」

「最大限の譲歩です。これ以上は無理です」


 キリッとした表情を浮かべ、無駄に胸を張ってリーナはそう宣う。

 テコでも彼女の意思は動かないだろうなぁ……となんとなく察した俺は、早々に諦める。


「はぁ……ならそれでいいか」

「それで……シン様はこの後のご予定とかは?」

「ん? 何でだ?」

「もし良かったら、わたし達のお出掛けに付いてきてくれませんか?」

「ふむ……」


 俺は顎に手を当てて思案する。

 特にやることもないから、リーナの提案を受け入れるのは吝かじゃない。

 それにこの三人は、控えめに言って美女美少女の類だから、またさっきみたいな輩が現れないとも限らない。


「お邪魔じゃなければ喜んで。悪い虫が寄り付かなくなるくらいの働きはするよ」

「そんなつもりは……確かにちょっとありますけど。そんなことよりも、妹達が学院でどんな学生生活を送っているのか知りたいんです」

「そんなことであれば、ネタは山ほどあるぞ」

「「せ、先生!?」」


 俺の言葉に過剰に反応して、リースとルルが俺に詰め寄って来る。


「先生! お姉ちゃんに何を言うつもりですか!? 良い事なら別に構わないですけど、悪い事は言わないでくださいよね!」

「そ、そうですよ! リーナねぇには変な事言わないでください!」

「あはは……」


 教え子の必死過ぎるお願いを、俺は笑って受け流した―――。






両手プラス1に華の状態のシン。




評価、ブックマークをしていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ