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第11話 リースの事情

前回のあらすじ

魔術組がオリビアに魔術の指導をしてもらった

 

 放課後。

 俺はリースと共に、旧校舎の屋上にやって来ていた。


 最初は職員室で話そうとも思っていたけど、人がそこそこいたので人気の少ないここまで移動していた。

 これから話す内容は、あまり人がいない方がいいからだ。


「それで……あたしに話ってなんですか?」


 リースがそう尋ねてくるけど、彼女の顔はどこか不安げだった。

 俺が話そうとしていることを、なんとなくでも予想しているのだろう。


 俺は屋上の手すりに身体を預けながら、リースの顔を真っ直ぐに見据えて尋ねる。


「リース、キミ……氷属性の魔術が使えないな? 氷属性魔術の名家であるアウローラ家の人間であるにも関わらず、だ」

「……っ! ………………はい、そうですよ」


 俺の言葉に、リースはとても険しい顔をしながら頷く。


 今までに俺以外の人間からもさんざん質問されてきたのだろう。

 その証拠に、リースは両手を固く握り締め奥歯を強く噛み締めながら俯いている。


「別に俺は、リースを貶すために聞いたわけじゃない。ちょっとした疑問だったんだ。なんでアウローラの家名を名乗っているのに、氷属性の魔術が使えないんだろうってな」

「そう、ですか……。先生はちょっとした興味から尋ねてきているんですよね? 本当にあたしを、アウローラの人間なのに氷属性の魔術が使えないのか、とか罵るのが目的じゃないんですよね?」


 顔を上げたリースが、そう尋ねてくる。

 その顔には今までと違うんじゃないのかという希望と、どうせ今までと同じという絶望が同居していた。


 俺はリースの言葉に、力強く頷く。


「ああ、違うぞ。そもそもなんで、教師が自分の教え子を罵らなきゃいけないんだ? リースにそういった性癖があるんなら別に止めはしないが……」

「あたしはいたってノーマルです!」


 俺の言葉にリースはやや憤りながら、そう返してくる。


「そ、そうか……。少し話が逸れたが、本題に戻ろう。なんでリースは氷属性の魔術が使えない……いや、違うな。アウローラ家で氷属性の魔術が使えないのはリースだけか?」

「そう、ですね……。親戚も含めて、アウローラ家ではあたしだけが使えません」

「両親や兄弟は普通に使えるんだろう?」

「そうですね。お父さんもお母さんも、それにお姉ちゃんも氷属性の魔術は普通に使えてます」

「それじゃあ……家族の中で使えないのはリースだけか」

「そうですよ。けど……悲しくはなかったですよ」


 リースはそう言いながら俺の隣にやって来て、手すりを掴んで空を見上げる。


「なんでだ?」

「あたしの家族は、あたしが氷属性の魔術を使えなくても冷たく接することなく、今まで通り温かく接してくれてましたから」

「貴族なのに珍しいな」


 貴族という人種は、自分に不利益を被る存在がいれば、たとえ親兄弟であっても冷遇か、もしくは無関心を貫く。

 だがリースの話を聞く限り、彼女の両親と姉は自らが被る不利益を度外視して、リースのことを心から愛しているようだ。


 俺の言葉に、リースはどこか自信に満ちた表情で頷く。


「そうなんですよ。あたしのちょっとした自慢なんですよ? あたしの家族のことは……。ですけど……」


 だけどその顔も、すぐに曇ってしまう。


「あたしの……というより、アウローラ家の親戚や家の繋がりがある他家の人達は、氷属性の魔術が使えないあたしのことを疎ましく思っているようです」

「そうか……」


 リースの言葉に、俺はそう返すしかなかった。


 俺は貴族じゃないから貴族のことは分からないが、リースにはリースなりの苦労があったのだろう。


「……話はこれだけですか? それならあたしは帰りますけど……」

「いや、まだだ。というか、こっからが本題だ」


 帰ろうとしていたリースに、俺はそう声を掛けて引き留める。

 すると彼女は、きょとんとした顔をする。


「え? 本題、ですか……? あたしのことが聞きたかったんじゃないんですか?」

「それも本題の一つだ。これから言うのは、もう一つの本題だ」

「もう一つ……?」


 まったく心当たりはないようで、リースは首を傾げている。


 もう一つの本題の方は、今日の実技の授業を見て思い付いたことだ。


「ああ。もしリースが望むのなら……」


 俺はそこで一旦言葉を区切り、続ける。


「……俺が個人的に、雷属性の魔術を教える」






リースの返答は……。




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