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第12話 弟子入り(?)

前回のあらすじ

リースは氷属性の魔術が使えない

 

「え……?」


 先生の言った言葉が信じられず、あたしは思わずそんな声を上げていた。

 すると先生は親切にも、先ほどと同じ言葉を投げ掛けてくる。


「だから、もしリースが望むのなら、俺が個人的に雷属性の魔術を教えようかって言ってるんだ」

「え、あの……ちょっと待ってください。そもそもなんで雷属性の魔術なんですか?」


 あたしは少し混乱しつつも、先生にそう尋ねる。


「今日リース達魔術組はセンセイ……学院長に、魔術を継続的に発動させる訓練をされてただろう?」

「え? 先生はレクス達の相手をしながら、あたし達の方も見てたんですか?」

「ああ、そうだが?」


 先生は、何を当たり前なことを? とでも言うような顔をする。

 普通はそんなこと出来ないと思うんだけど……そこは休業中とはいえ、さすがは『勇者』と言ったところだろうか?


「まあいい。あの訓練な……最後まで使える魔術っていうのが決まってるんだ」

「え? そうなんですか?」


 あたしがそう尋ねると、先生は頷く。


「ああ。その魔術っていうのが、その人物の得意魔術になってるんだ。リースは授業の終わりの方まで、雷属性の魔術を発動出来てただろう?」

「そう言えば……」


 先生にそう言われて、あたしは今日の授業を思い返す。

 確かに先生の言った通り、あたしは最後まで雷属性の魔術が発動出来ていたし、他のクラスメイトもあたしとは異なる魔術を最後まで発動していた。


「だからリースの得意魔術が雷属性魔術だと判断して、個別指導の提案をしたんだ」

「そうなんですか……でも、なんであたしだけなんですか?」

「F組の中で唯一、一ヶ月後のクラス対抗戦までにA組並みの実力をつけることが出来るからだ」

「え……?」


 先生の言葉が信じられず、あたしはすっとんきょうな声を上げる。

 だけど先生は、そんなあたしに構うことなく続ける。


「確かに俺は、対抗戦で他のクラスに勝てるだけの実力をつけさせてる最中だけど、それだけじゃ足りない。やっぱり、エースや切り札とも言うべき人物は必要となる。それを担えると思ったのが……リース、キミだ」

「そうなんですか……でも、それなら別にあたしじゃなくても……」

「さっきも言っただろう。A組並みの実力をつけることが出来るって。それに、俺の都合もある」

「先生の都合、ですか……?」


 あたしがそう尋ねると、先生は頷く。


「ああ。俺の得意魔術も雷属性魔術だからな。今の状態の俺でも、それだけならリースに教えることが出来る」

「そうだったんですか?」

「ああ。だからリースにその気があるのなら、俺は個別指導も吝かじゃないが……どうする?」

「……」


 先生の言葉に、あたしは顎に手を当てて思案する。


 先生の提案は、別に悪いことじゃない。

 先生の指導で実力がつくと言うのなら、逆にこちらからお願いするべきくらいのことだ。


 だけど……。


「……先生の指導を受ければ、あたしを馬鹿にした人達を見返せますか?」

「ああ、出来る。むしろ、そう出来るだけの実力をつけさせてやる」


 先生はあたしの言葉に即答するだけでなく、あたしの目を真っ直ぐに見つめながら、力強くそう言ってくる。

 その言葉で、あたしの迷いは吹っ切れた。


「あたしへの指導、よろしくお願いします、メテオライト先生」


 あたしは先生に向かって深々と頭を下げて、そうお願いした―――。




 ◇◇◇◇◇




 その日の夜。

 ベッドに寝そべりながらつい先日買った娯楽小説を読んでいると、コンコンと控えめなノックをされた。


「リース、わたしよ。入るわね」


 あたしが返事をするよりも早く、来訪者はそう言って部屋の中に入ってくる。


 来訪者はあたしと同じ色の髪と瞳をしていて、肩甲骨辺りまで伸びている髪をうなじの辺りでシュシュで一纏めにして、左肩から前に垂らしている。

 手足はスラリと伸びていて、胸はやや控えめだけど、それを差し引いても美人であることには変わりはない。

 そしてあたしとお揃いの、ワンピースタイプのパジャマを着ている。


 リーナ・アウローラ。

 あたしの四つ上のお姉ちゃんで、メイオール王国の魔術師団に勤める、アウローラ家の次期当主だった。


 あたしは本を閉じて身体を起こすと、お姉ちゃんはベッドの端に腰掛ける。


「どうしたの、お姉ちゃん?」


 あたしもお姉ちゃんの隣に腰掛けて、そう尋ねる。


「今日リースのクラスに新しい先生が来るって言ってたでしょう? どんな先生だったのかなぁって知りたくなっちゃって」


 てへ、とお姉ちゃんは小さく舌を出す。

 こういった可愛らしい仕草が自然と出来るのが、お姉ちゃんがモテる秘訣なのだろう。


「ああ、そのこと……。聞いたらきっと、お姉ちゃんも驚くよ?」

「そうなの? いったいどんな先生だったの?」


 お姉ちゃんが瞳をキラキラと輝かせながら、そう言ってくる。

 自分でハードル上げちゃったかな? と内心思いながらも、先生のこと含めて今日あった出来事をお姉ちゃんに話した。


 するとやっぱり、あたしのクラスの新しい担任が勇者だと告げた時は、お姉ちゃんもビックリしていた。


 それはいいんだけど……。


「……え? リースって、勇者様に弟子入りしたの?」


 今日の放課後にあった出来事を話していた時に、お姉ちゃんはそう言ってきた。

 お姉ちゃんの言葉を、あたしは首を左右に振って否定する。


「違う違う。先生があたしに個別指導してくれるって言ったから、あたしがそれを受け入れただけだよ」

「でも……経緯はともかく、リースは勇者様から個人的な教えを請う立場になったんでしょう? それならやっぱり、勇者様の弟子になったのと同じじゃないの?」

「そうかなぁ……?」


 あたしは首を傾げつつも、冷静に考えてみる。


 ……うん、やっぱりただの教師と教え子の立場でしかない。


 そう結論付けて、あたしはお姉ちゃんに笑って返す。


「お姉ちゃんの気のせいだよ」

「う〜ん……。リースがそう言うならそう……なのかな?」


 お姉ちゃんはそう言うけど、どこか納得していないようだった。


「話はそれだけなの?」

「まだあるわよ」


 お姉ちゃんはそう言うと、あたしの身体を優しく抱き締めてくる。


「たまにはリースと一緒に寝ようと思ってね?」

「……一昨日一緒に寝たばかりだけど?」


 あたしがそう言うと、お姉ちゃんはどこか哀しげな表情を浮かべる。


「わたしと一緒に寝るの嫌なの?」

「……別に嫌とは言って……わっ!?」


 お姉ちゃんの言葉にあたしが返していると、お姉ちゃんにベッドに押し倒されて途中で言葉が途切れる。

 そしてお姉ちゃんはと言うと、あたしを抱き締める腕に力を込めて頬擦りをしてくる。


「う〜〜〜ん! リースはやっぱり可愛いわね!」

「もう、お姉ちゃんったら……」


 妹離れ出来ていない姉の態度に苦笑しながらも、あたしはお姉ちゃんになすがままにされていた。

 こんなことをされてもお姉ちゃんを嫌いになれない辺り、あたしも姉離れ出来ていないと思う。


 お姉ちゃんの気が済んだ後、あたしは部屋の灯りを消してお姉ちゃんと一緒にベッドに潜り込む。

 そしてお姉ちゃんと手を繋ぎながら瞼を閉じる。


 睡魔はすぐにやって来て、あたしの意識は夢の世界へと旅立った―――。






シスコン(?)な姉登場です。




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