表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/27

15.ポスターの想い人

「羨ましいぞ、別役! なに青春しちゃってんだよ!」


 石山先輩は、声がでかい。いや、大きいのは声だけじゃなくて身長も態度もなんだけど。


「オレが灰色の高校生活を終えようとしてるときに、どうして告白されただの、好きな人だの、そんなバラ色のハイスクールライフ満喫しちゃってるんだよぉ!」

「石山先輩は、そんなだから灰色なんですよ」


 あぁん、ズバッと切り捨てちゃう梓ちゃんが素敵過ぎる!

 そんな風に悶えていたら、青木先輩が優しく聞いてくれた。


「石山くんの話は置いといてー、別役ちゃんはどうしたいのー?」

「今まで通り、好きな人を眺めてたいです……」


 それも、あのぐいぐい来る丹田くんがいる限り、どうにも叶えられそうにないんだけどね。


「いいねいいねー、恋の悩みって感じで」

「灰色な石山先輩は黙っててください」

「青木ぃ、なんかオレって後輩に嫌われてる?」

「石山はー、過干渉ってやつだと思うよー?」


 あー、せめてポスターのざっくりデザインだけは今日中に考えておきたい。逃避行動? うん、まさにそれだ。


「高齢者講習に絞ってみたら?」

「あ、うん。それもありだね。ありがとう、梓ちゃん。……って冷静だね」

「もうこの話題、飽きて来たから」

「梓ちゃぁん!」


 さすがにクール過ぎる! いや、確かに私のせいで梓ちゃんにも迷惑がかかってるのは承知しているんだけど!


「おーおー、さすが鹿宮。親友と言えどスパッと切るのな」

「部長がこうだからー、来年度も心配なしよねー」


 先輩方もなんかパチパチパチって拍手しちゃってるし、いやいやいや、いいの、それで?


「言ったでしょ? ユズがとっととコクればいいんだって」

「それは、そうかもしれないけど……」


 それができたら苦労しないんだよ、梓ちゃん。

 がっくりと肩を落としながら、私は教習所のパンフレットをめくって、高齢者講習の部分を読み始めた。ふむふむ、チャレンジ講習なんてのもあるんだね。スラローム走行とか楽しそう。うまく絵に落とし込めるかな。


「鹿宮は構図決まったのか?」

「こんな感じですね。標識をいくつも描くと楽しそうだと思ったので」

「鹿宮ちゃんはレタリングとかも好きだしー、いいんじゃないー?」


 話を聞いていると、石山先輩は大型バイク、青木先輩は特殊車両をメインに描くらしい。バイク好きだったはずの石山先輩は、ブルドーザーやショベルカーをざっと下書きした青木先輩を見て、いいなーいいなーとウザいぐらいに連呼していた。どうやら大型特殊車両には男のロマンがあるらしい。よく分かんないけど。油圧ジャッキがどうとか言われても、どれのことを言われてるんだか。


「これって、いつまでに完成させなきゃいけないんだっけ」

「1月末のはずー」

「おー、とっとと終わらすべ」


 そうですよ先輩方。受験があるんだから、息抜きとか言ってないで、そっちに専念してください。ポスターはノルマの関係があるので描いて欲しいけど。

 私もだいたいのデザインが決まったところで、部活の時間も終わりになった。



・:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・



 ストレス、というのであれば、これは確かにストレスなんだと思う。

 ことあるごとに丹田くんは話し掛けてくるし、それを邪魔する宇那木さんたちも合流するし、こんなんじゃ落ち着いて七ツ役くんウォッチングができないよ!


 そんなここ一週間ほどのやさぐれ気分を抱え、部活がないのをいいことにいつもの本屋へと足を向けた。

 丹田くんから一緒に帰らないかと誘いがなかったかって? ここ2、3日はその提案をされる前に教室を出るという技を覚えたのさ! 宇那木さんたちもいい感じに話し掛けて妨害してくれるしね! 共闘関係ビバ!


 今日は会えるといいな、なんて願いつつ、それでも駅までの道で後ろから丹田くんが追いかけてきたら怖いな、なんて遠回りをして本屋に到着すると、いつもの棚の前で七ツ役くんの姿を見つけて、なんか癒された。

 うん、あれだよね。砂漠のオアシス。これであと3日は頑張れるわ。


「今日は天気じゃなくて星の本なんだね」

「あ、別役さん。来年の文化祭の話が出てて、その資料があればなって」


 進学校だからなのか、うちの高校の文化祭は早い。でも、それにしたって準備早過ぎない? 美術部だって新年度にならないと、そんな話しないよ?


「随分と早いね。もう星の話って決まってるの?」

「そうだね。化石や地層の話は地味過ぎるって言われるし、天気も、いまいち来場者の食いつきが良くないみたいなんだよ」

「地学天文部って、他に気象予報士志望の人はいないの?」

「うーん、うちの学年だと俺だけかな。どっちかって言うと星好きが多くて」


 まぁ、私も七ツ役くんて存在がなければ気象予報士なんて志望すらしてないと思うんだけどさ。


「そうなんだ。また惑星? でも、そんなに時間かかるものなの?」


 すると、七ツ役くんはちょっと困ったような顔をして首の後ろを掻いた。


「単なる展示だけだったら1ヶ月もかからないんだけどね。プラネタリウムやりたいって言ってるのがいるからなぁ」

「もしかして、お手製プラネタリウム?」

「うん。そこに音声解説を加えるって。そうすると当日の当番も結構やることたくさんあるから、反対意見も多いんだよね」


 プラネタリウムか。もし、七ツ役くんとこれ以上に仲良くなって、どこかに出かけるとしたら、そういう場所なのかな。……って考えただけで、なんかニヤけそう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ