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14.提案の想い人

 翌日、学校に行く途中、私に声を掛けてきたのは、意外な人だった。


「おはよう、別役さん」

「おはよう。……宇那木さん?」


 おかしいな。昨日、追及は躱せたはず、だったよね?


「昨日はごめんね。それで、ちょっと別役さんに相談があるんだけど」

「うん、どうしたの? 授業で当たりそうな宿題の答え合わせとか?」

「あー……、昨日の丹田くんの件なんだけど」

「あ、そっちか。うん、なに?」


 ふふふ、私だって女優だ。もちろん、すっとぼけたのはわざと。だって、宇那木さんたちちょっと怖いんだもん。


「丹田くんが今日も別役さんに話しかけたらさ、その、早めに切り上げてくんない?」

「あー……、できるかな。ほら、丹田くんとしゃべってる時って、うまく口挟めないときがあるんだよね。何かいい方法ないかな」


 宇那木さんも「あー」って表情を浮かべた。うん、そうだよね。宇那木さんもマシンガントーク組だもんね。私には無理なんだよ、それ。


「じゃぁ、例えば、うちらが乱入してもいい?」

「あ、うん。いいよ。全然いい! そしたら私も梓ちゃんといつも通り喋れるし」

「別役さんって、鹿宮さんと仲いいよね」

「うん」

「……なんか、別役さんって、フツーにスゴいからね?」

「うん?」


 なんだろう。今、どうして私褒められたんだろう?


「と、とにかく。丹田くんが別役さんに話し掛けてきたら、うまくこっちに注意を向けさせてもらうか、ウチらが乱入するかしたいっていう話だから」

「うん。ありがとう」

「……まさか感謝されるとは思わなかったけど、とりあえずよろしく」

「うん」


 なんかよく分からないけど、丹田くんの件は上手くいくかもしれない。


「別役さんってさ」

「うん」


 うん? まだ何か用事があるのかな?

 こう言っちゃなんだけど、宇那木さんと共通点って何もないと思うんだよね。同じクラスってことぐらいで、見てるドラマとか被る……とも思えないし。


「丹田のこと、どう思ってんの?」

「ほぇあ?」


 あぁ、ごめんなさいごめんなさい。予想外過ぎて間抜けな声が出ちゃったよ。なんか逆に宇那木さんがびっくりした顔してる。


「えぇと、色恋的な意味で?」

「そう。嫌いだったりする? だって、そうでもなきゃ、こんな提案にありがとうなんて言わないっしょ」

「違う違う。嫌い……というのとは違うと思う。ただ、うーん、合わないな、って感じ? 遠くで見てる分にはいいんだけど、近くに寄られても対応に困る、みたいな?」


 必死で丹田くんを貶さないように好意を否定すると、宇那木さんは、「あー、なるほど?」と分かったような声を出してくれた。


「確かにタイプ全然違うよね。うちらにしてみれば、皆木(みなき)みたいなもんか」


 宇那木さんが引き合いに出したのは皆木くんというクラスメートだ。別に悪い人じゃないんだけど、日頃の口数が少なくて、でも大好きな鉄道のことになると、途端にマシンガントークぶっぱなすので注意が必要なんだ。

 まぁ、確かに教室の中心で流行を叫んじゃう系の宇那木さんたちとは合わないよね。むしろ合ったらびっくり。


「たぶん、そんな感じ。だから、全然気にしないで」

「分かった。じゃ、遠慮なくお邪魔するね」


 手を振って別れると、私は小さくため息をついた。

 うん、あれだ。日頃喋らない人と喋るのって、なんかすっごく気を遣って疲れるよね。それも怒ったら怖い人だって分かってるから余計に、かな。朝からなんか濃い時間を過ごしてしまった。



・:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・



「あー、もう! 無理!」

「どうどう、落ち着いて落ち着いて」


 美術室で思わず突っ伏してしまった私の背中に、梓ちゃんの手が添えられた。うん、分かってる。ここで興奮しても仕方がないって。


「んー? 悩める別役ちゃんはどうしたのー?」

「青木先輩、あんまり気にしなくていいですよ。告白してきたクラスメートがフられたのにしつこく話し掛けてきて、そいつのシンパがそれを食い止めようと話し掛けてきて、休み時間のたびに息が休まらないだけですから」

「ちょっと別役、今の詳しく!」


 あぁ、青木先輩だけじゃなく、石山先輩まで食いついてきた。

 私と梓ちゃんの前にはポスター制作課題がででんと鎮座してるというのに、残念ながら私の前の紙は真っ白だ。


「梓ちゃんが言った通りですよ。別に好きな人がいるって断ったのに、私が告白してOKされない限り諦めないって言うし、ガンガン話し掛けてくるから面倒で。元々その人と仲の良かった女子から、邪魔するように話し掛けていい?って許可取られたはいいんですけど、うまく引き離せなくて結局、休み時間のたびにずるずると……」


 はぁぁぁぁ、と地獄にまで響きそうな重いため息をついて、私は再び机に突っ伏した。

 顧問の宇戸先生のツテかなんかしらないけど、近所の自動車学校の宣伝ポスターを頼まれたとかで、部活動の一環で取り組んでいるわけだ。5種類ぐらい欲しいとか言われたので、部費のためにもこうして頑張るわけで。ついでに引退したはずの3年生も参加してるわけで。



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