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姉(←大魔王)、妹(←超魔王)、長男(←オカン)  作者: くまのき
第十六章 魔王、魔王、長男、
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142話 『魔王に見つかるな! 姉大脱出ゲーム』

「よし、右!」


 そう叫んで桜はシンデレラ城上空の穴に入り、すぐさま右へ歩を進めた。

 何故叫ぶのかと言うと、ディ●ニーリゾートがあっても尚一人きりであるこの状況が、ちょっと寂しいからである。


 穴の中は意外と明るかった。と言うか、普通に電灯が点いていた。しかも見慣れた光景だった。

 何故ならば。


「ここ、うちの道場じゃないの」


 真奥家に隣接する道場と、同じ間取り、同じ板張り床、同じ天井。つまりは同じ建造物なのであった。


「なんで夢の国の上に自宅があんのよ。フロリダと日本(くにざかい)の長いトンネルを抜けると実家であった。みたいな。全然長くなかったけど」


 後ろを振り向くと、今通って来た大穴からは相変わらずエレクトリカルなパレードソングが流れている、無人の遊園地だ。

 そして前を向くと、いつもの道場。ただし無人ではなかった。


「ゲーヒョ、ゲヒョゲヒョォー(笑い声)! よくぞ来たゲヒョ。悪の組織ピョッカー大幹部である、このメカ・タコゾンビ様が守るゲートに! ゲヒョ!」


 ゲヒョゲヒョうるさい変な生物がいる。

 生物なのかも定かでは無い。というか特撮の怪人ぬいぐるみにも見える。

 頭がタコで、身体が人間。全身が金属で出来ており、所々わざとらしく塗装が剥げてゾンビっぽい柄になっている。


「何あんた誰? うちにこんなペットいたっけ」

「ペットじゃないゲヒョ。メカ・タコゾンビ様」 

「いやだからそれ何?」


 桜は最初こそ驚いたが、よく見ると機械っぽい身体なので「ネバネバやヌメヌメはなさそうね」と考え、思い切って近づき触れてみた。

 カチカチでひんやり。本当に機械だ。


「でもあんた、どっかで見た覚えがあるような……ないような……? 忘れちゃった」

「このメカ・タコゾンビ様は、貴様の深層心理が生み出した心の消防士さん(ガーディアン)でゲヒョ!」

「ええー……あたしの深層心理どうしちゃったのよ」


 こんな魚介類だか半魚人だか分からない、気持ち悪いロボットを作り出してしまうとは。

 桜は生まれて初めて自分のセンスを疑った。


「心配すんなゲヒョ。多かれ少なかれ、他の皆も心の中で生み出すキャラクターはどうせこんなカンジでゲヒョ」

「そうかなあ……? そうよねえ……多分」


 桜はとりあえず無理矢理納得した。


「それにこのメカ・タコゾンビ様は、貴様がゼロから作り上げたキャラではないんだゲヒョ。(きさま)がどっかで見かけた、『基本的にどうでもいいし、忘れちゃったけど、何となく心の奥底で印象に残ってるもの』が元になっているんでゲヒョ~!」

「ああそうなんだ」


 桜は、造詣センスの問題じゃなかった事に安堵する。


「でもどうりで全然思い出せないワケよね。莉羅ちゃんに付き合って観た特撮番組の敵キャラとかかしら?」

「ゲーヒョヒョヒョヒョヒョ!」

「あははははー」


 と、和やかに笑いながらも、


「でもあんたが『どうでもいいし忘れちゃったもの』って説明するのは、あんた自身のアイデンティティを否定してるわよね……」


 そんな悲しい考えを抱きつつ、桜は改めてメカ・タコゾンビ様に尋ねる。


「メガたこ助さあ」

「メカ・タコゾンビ!」

「メカゾン。あんたはあたしの深層心理内で作られたキャラなのよね。ってことは、あたしの味方よね?」

「ゲヒョ……ゲヒョッヒョ……ゲーッヒョッヒョッヒョ!」

「いや笑ってないでさ」


 するとメカ・タコゾンビ様は「ゲッヒョ!」と叫んで、桜の顔目掛けてキレの良いパンチを放った。

 それを桜はすんなりと避け、「ちょっと何すんのよタコ」と口を尖らせる。


「確かに生み出したのは貴様ゲヒョ。でもこのメカ・タコゾンビ様は『今現在桜の肉体を支配している者』の味方なのゲヒョ!」


 メカ・タコゾンビ様の非情な告白。

 それに対し桜は、


「あっそ。そうなんだあ。ふーん。」


 と冷ややかな目で呟き、あくびをした。


「あんまり驚かないゲヒョね? 裏切られてショックじゃないゲヒョ?」

「ついさっき会ったばかりのゲテモノ怪人に、裏切られてショックも何も無いわよ」

「なるほど然りゲヒョ」


 桜の暴言まじりの回答に、メカ・タコゾンビ様は特に気を悪くなどはしなかった。

 機械仕掛けのタコ頭を左右にリズムよく振りながら、首から下の人型部分で格闘の構えを取る。


「このメカ・タコゾンビ様は、『今の桜』の意識が行き渡らない部分を守護しているのでゲヒョ」

「なるほど。『今の桜』って呼び方はムカつくけど……だから『大魔王の力(アイツ)』に見つからないように進んだ穴の先に、タコ野郎(あんた)がいたってワケなのね」

「ワケなのでゲヒョ」


 そして二人は対峙した。

 戦う理由は一つだ。わざわざ言うまでも無いかもしれない。

 だがメカ・タコゾンビ様は親切にも、その理由を述べる。


「ここは通さんゲヒョ! 最強の怪人、メカ・タコゾンビ様がいる限」



「うっさい」



「ゲヒョー!」


 口上を言い終わる前に、桜のラリアットが炸裂した。

 メカ・タコゾンビ様のタコ頭は体から分離し、メカ部品や火花をまき散らしながら道場の天井に突き刺さる。

 床に残った身体部分は、バチバチと音を立て煙を上げている。


 桜は右手をグッと握りしめ、


「爆砕!」


 とお茶目に叫んだ。

 するとメカ・タコゾンビ様の身体は木っ端微塵に砕け散り、爆発。


「み、見事だゲヒョ……ウギヒョッ」


 メカ・タコゾンビ様の頭パーツが天井から落ち、お次は床に突き刺さった。


「首だけでも生きてるんだ。タフねあんた。さすがメカ」

「ゲヒョヒョヒョ……良い気になるのも今の内だけゲヒョよ……このメカ・タコゾンビ様を倒しても、第二第三のガーディアンが貴様を必ずやひっ捕らえるゲヒョ……」

「へえ。あんたみたいなのが、まだまだいるってコト? あたしの潜在意識ながら超メンドクサイわね」




 ◇




 メカ・タコゾンビ様を退け、先を急ぐ桜。

 すると彼女の前に、さっそく第二のガーディアンが現れた。


「レーホョホョホョ(笑い声)! 心のお巡りさん(ガーディアン)であるこのメタル・タコタイガー様が、貴様を絶対に通さんでレホョ!」


 新たな守護者。

 それは頭がタコで、身体が人間。金属製。


「さっきと同じじゃないの!」

「違うレホョ。ほら虎柄シマシマでレホョ」


 桜の指摘に、メタル・タコタイガー様は平然として答える。

 メカ・タコゾンビ様と違い、タイガーという名に相応しく全身が黄色と黒の虎柄であった。


「確かに柄は違うけど……あんた、さっきのタコの親戚か何か?」

「違うレホョ。ただの色違いレホョ」

「それ自分で言っちゃうんだ……」


 と、戦い前の会話はこれまでにして。

 メタル・タコタイガー様は格闘の構えを取った。


「ここは通さんレホョ! このメタル・タコタ」

「滅殺!」

「レーホョー!」


 メタル・タコタイガー様は爆発四散した。


「み、見事だレホョ……だが、このメタル・タコタイガー様を倒しても第三第四の」

「ああもうそういうの良いから。じゃあね」


 二度目なので戦闘後の会話をする気も無い桜は、さっさと次の場所へと移動した。




 ◇




 そして、


「キューフォヌッフォヌッ。ヌファッ(笑い声)!」


 すぐさま第三の敵が現れた。

 やはりメカ・タコゾンビ様の色違い。

 今回は金属では無く、半透明のガラスに近い素材で出来ている。


「キューフォヌッフォヌッ。よく来たなファヌッフィ。心の弁護士さん(ガーディアン)が守るこの地へと!」

「何その笑い方。相当無理してない?」

「してないキューファニャッファナッ」

「無理してるでしょ」


 無理しているのだ。


「してないキュファ! とにかく聞けフォヌ。俺様の名は、クリスタル・タコレインボ……」



「天誅!」



「ぐへええあ……あっ、フォヌウウウ!」

「さらば、クリスタルたこなんとか。最後までイマイチキャラに徹し切れなかったヤツだったわね」




 ◇




「グッチェグッテェグテェ(笑い声)! 心の雨戸(ガーディアン)であるこのシルバー・タコサクリファイス様が」

「討伐!」

「グッチェー!」




「ジョーヂジョヂジョヂ(笑い声)! 心のカビキラー(ガーディアン)であるこのプラチナ・タコ曼珠沙華様が」

「殲滅!」

「ジョーヂー!」



「マルッタマルッタ(笑い声)! 心のマジックテープ(ガーディアン)であるこのプラスチック・タココンサルタント様が、貴様を捕縛するでマルッタ!」

「なんで全員タコのロボットなの!? あたしの心理どうなってんのよー!」


 桜はプラスチック・タココンサルタント様を爆破させつつ、己の精神を疑うのであった。


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