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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その不良系魔物の生態を彼らは知らない
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その森の生態区域を彼らは知らない

「ふむ。この森、何か変だな」


「どうしたのクーフ?」


「いや、なんとなくだが……気のせいか。まぁいい。それよりこれからどうするのだ?」


「一度河原に出るわ。そこをキャンプ地にしようと思うの。森の中でゆったりできる場所があれば良いけどこう襲撃が多いと……ね」


 と言いつつ魔法を唱えるネッテがコ・ルラリカで森の中から覗いていたスマッシュクラッシャーを撃破する。

 森に入ってから既に襲撃は十二回目だ。

 その敵は全てスマッシュクラッシャー。

 円らな瞳が可愛いのにその膂力から繰り出される一撃が危険過ぎる。

 回復の魔弾が無ければ早々バルスやエンリカが重傷で離脱していたことだろう。


 一度十匹からなるスマッシュクラッシャーが一斉にハンマー投げして来た時はさすがに死を覚悟した。

 我が背後に隠れよ! と叫んだクーフが六個ぐらいのハンマーを何とか受け止め、カインが一つをアルセソードで切り裂き、リエラとミミックジュエリーのタッグが一つ切り裂いてたけど、迎撃し損ねたハンマーがバルスとエンリカに直撃したのだ。

 いや、エンリカについてはバズ・オークが引っ張ったので直撃ではなかったけど右腕を持って行かれる大ダメージだ。骨が砕けていたのに回復の魔弾で元通り。


 普通の回復薬使うより全然使える魔弾に、カインとネッテは自分たちも魔銃を買う決意を固めるのは簡単だった。

 弾代さえあれば神父から魔法を込めてもらうのはアルセの笑顔一発だしね。

 下手な回復手段を買うよりも安く付いて完全回復ならもはやそっちを取るしかないだろう。


「そうか、今まで他の魔物を見ていないのダ」


「ん? どういうことだクーフ……ってそういえば、この森スマッシュクラッシャー以外見てないな」


「あれ? でもクーフさん飲み込んでた大蛇が居ましたよね?」


「アレは例外でしょ。のたうちまわっている間にこの森に来たみたいだし。でもそう言われると確かにスマッシュクラッシャーしか見てない気がするわ。となると、やっぱり河原に行かないとゆっくりは休めそうにないか」


「オルァ?」


「ブヒ? フゴッ」


「オルァ!」


 ……なんか、喋っとる。


「エンリカ、アレ、何言ってるか分かる?」


「えーっと、バズ・オークさんの言葉なら。どうもこの森で休める場所を探しているのか? とツッパリさんが言ってるみたいですけど?」


 元番長は休める場所に心当たりがあるらしい。

 付いてきな。と言うようにポケットに両腕ツッコミ歩きだす。

 その背中を戸惑いながらも進みだすカインたち。


 それからしばらくもスマッシュクラッシャーによる襲撃はあったが、ある時期を境に突然襲撃が止まった。

 それに僕が気付いた時、目の前が突然開けた。

 そこは湖だ。


 森の中の湖畔とも呼べる場所に、無数のレディースとツッパリが屯っていらっしゃった。

 それに気付いたカインたちは完全に固まっている。

 い、いやぁ壮観ですね。

 100や200じゃ数えきれない数のツッパリが屯っています。

 どうやらここがツッパリの巣というか溜り場のようです。


 胡乱気な瞳を向けてきたツッパリたちは同じツッパリが案内して来たことに気付いた様で睨みこそすれ思い思いにオルァオルァと話合いをしているようだった。

 これはダベっているといえばいいのだろうか。


 アルセがなんか楽しそうだ。

 ツッパリの顔が面白いのだろうか?

 数体失敗面と呼ばれる程酷い顔のもいるけどさ。アレってツッパリじゃなくないか? むしろツッパリたちにヘコヘコしてる。おそらくツッパリの下位存在なのだろう。うん下っ端とかかな? いや、むしろ舎弟か。


「オルァ」


「ぶひっ」


「え、えっと、ツッパリさんはここなら自分たちのテリトリーだから自由に休んでいいって言ってます。とバズ・オークさんが言ってます」


 元番長の言葉を理解できるバズ・オークの言葉を理解できるエンリカによるややこしい伝達ゲーム。いや、もう、めんどくさいな。言葉が通じないと不便だ。

 でも、元番長が紹介してくれたこの場所。ツッパリやレディースさえ気にしなければ確かに休める場所だろう。

 下手な魔物もツッパリたちのテリトリーらしいので襲いかかっては来ず、来てもツッパリたちが対処してくれる。


 ツッパリたちは元番長がいることで僕らに手出しすることもなく、胡散臭そうな眼を向けて来ることに眼を瞑れば安全な場所であることは確かだ。

 バルスの下半身が心配だけど。


 元番長の言葉を訳したバズ・オークの言葉をさらに訳したエンリカの御蔭でここが安全であると理解したカインたちはテント設営を始める。

 無数の威圧的な視線にさらされるので気が気ではないが、森や河原で周囲を警戒するよりはまだ楽な事は確からしい。


「オルァ!」


「オルァ?」


 ただし、そんな僕らがゆっくり休むことを良く思わない奴もいたらしい。

 威圧的な眼光を湛えた一回り大きな個体が腰を上げ、元番長へと近づいて来ていた。

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