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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その不良系魔物の生態を彼らは知らない
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その不良どもが何をしているのかを彼らは知らない

 狼モドキは相変わらず襲ってきた。

 さすがにクーフや元番長がいるので多少遠巻きにしていた彼らは、100匹程に増えた途端、我が意を得たりとばかりに突撃して来た。


 当然予想していたクーフの柩と元番長の拳により大多数の狼モドキが露と消えた。

 その奮戦ぶりはバズ・オークの活躍が殆ど無かった程である。

 優秀すぎる仲間って素敵。


 アルセはそんな激戦の中、リエラの横で踊っていた。

 彼女も剣こそ構えていたが、ネッテやリエラに襲いかかる個体すら今回は居なかった。

 カインやバルスはなんとか十匹倒せたくらいかな。

 ユイアなんか大魔法唱えてたのに放つ段階には既に3匹になってて涙目だし。

 エンリカの弓が地味に活躍してたけど。


 正直狼モドキ100体はクーフと元番長、そしてエンリカが居れば殲滅可能だと思う。

 後の面々はもはや飾りでした。

 ゴボル平原を移動する間三回程襲撃があり、全て100匹以上の大集団だったけど、最後の方なんかネッテとユイアがすさんだ瞳でアルセの踊り見てたし。

 魔術師の存在が確かに霞むよね今のパーティー。呪文唱え終える頃にはほぼ敵が壊滅とかね。


「はぁ、さすがにこれだけメンツが揃うとこの平原でも普通に戦えるわね」


「私達の魔力も温存されますしねー」


 ユイアさん言葉に感情が籠っていませんよ!?


「ん? また敵か……!?」


 バズ・オークの鼻息で気付いたカインがそちらに視線を向け固まった。

 なんだ? と皆もそちらに視線を向ける。

 ツッパリが居た。

 それはもう凄い数のツッパリたちがこちらに向けて近づいて来ていた。


 その行軍、まさに圧巻である。

 で、出入り、じゃなかった、アレだよアレ、これからツッパリ同士の抗争でも起きそうな、その行軍を見るだけで震えあがる圧倒的な実力があった。

 周囲を睨みつけるようなツッパリ軍団に、僕らに近づこうとしていた第四陣の100匹以上いる狼モドキたちも震えあがって自ら倒れ、自分の腹を見せつけていた。


 完全屈服してやがる。

 野生さが全くみえないぞ狼モドキ。さっきまでの威勢はどうした!?

 あ、一匹勇敢にも襲いかかった。

 その瞬間、ギロリとそいつに視線を向けたツッパリたち。

 飛びかかった狼モドキに一斉に襲い掛かるヤクザキック。

 まさに哀れな獲物でした。合掌。


 震えだすカインたちは、なんとか対応しようと一固まりとなりクーフと元番長を先頭に先陣を組む。

 いや、ここはアルセ、アルセの笑顔を……

 「「「「「「「「オルァ」」」」」」」」

 ひぃっ!? ごめんなさいっ!?


 威嚇するようなツッパリたちの声にビクっとなった僕。

 当然カインやバルスも膝が笑っている。

 バルス、気を確かに! ここで洩らしたらお前は終わるぞ!!


 バズ・オークが一歩前に出て元番長の肩に手を置く。

 それに気付いた元番長。バズ・オークの鼻息に溜息吐きながら一人前に出る。

 なんだ? 何が起こる……いや分かる。なんとなくだけどわかるよこの状況。


「「「「「「オルァ!」」」」」」


 リーダー戻ってきてくださいッ! あんた以外にリーダーに相応しい人はいません!!


「オルァ」


 止めろ。俺は既にリーダーを退いた身だ。次のリーダーはお前達が決めろ。


「「「「「オルァァッ」」」」


 番長ッ!!


「オルァ」


 よせ。今の俺はただのツッパリ。笑顔の女に恐れられすらしない雑魚だ。こんな男のことなど忘れて生きろ。お前たちなら大丈夫だ。


「「「「「オルァァ……」」」」」


 ツッパリたちが涙を流しだす。

 なんだこの安い不良ドラマ見させられてる気分は?

 まさに戻ってくれ番長ッ! と手を伸ばし惜しむツッパリたち。

 それに背を向ける元番長。

 アルセが勝利した爪痕は、予想以上にツッパリたちに傷を残していたようだ。

 なんか、ごめん。


「オルァ!!」


 もう、俺に構うんじゃねぇっ!!


「ゴルァ!」


 しっかりしろテメェら! 俺の分までしっかりツッパリやがれ!!


「「「「「「「「「「オルァッ!!!」」」」」」」」」」


 今まで、今ままでありがとうございました番長ッ!!

 みたいな感じで両腕をクロスしてから左右下方へと振りながら頭を下げるツッパリたち。

 送り出されるように踵を返して歩きだす元番長。

 って、勝手に向うのはいいけどそっち来た道だよ!?


 直ぐに気付いた元番長。ちょっと恥ずかしそうに顔を赤らめながら立ち止まり、空を見上げる。

 そしてもう一度ツッパリたちに振り向く。

 当然ながらそっちが僕らの向う道だ。ツッパリたちが塞いでる。


「オルァッゴルァッドラァッ!!」


 元番長が叫ぶ。人波が割れるように左右に避けるツッパリたち。

 ツッパリ軍団に見送られ、僕らはようやく森へと向うのだった。

 やっぱりツッパリ怖いです。ああもう、手を振っちゃだめだよアルセ。

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