そのオークが気付いているのかを僕は知らない
葉っぱ人間の集落は、初めこそバズ・オークたちの再襲撃を警戒していたが、直ぐにいつもの日常に戻ったようだ。
普通に昔映画で見たようなアマゾン奥地の人みたいな生活をし始めた。
ちなみに現代アマゾン奥地は現代技術が広まっている村が多く本当に原始的な生活をしている民族は少なかったりする。あのマサイ族すら自転車乗って携帯電話弄ってるくらいだし。
そんな葉っぱ人間たちに当らないよう気を付けながら僕は様々な室内を探して行く。
あ、宝物庫発見。
あそこだろうな多分。
というわけで見張りの葉っぱ人間の後ろを通って侵入成功。
ふっ。透明人間最高。こんな時にしか自分の特技を認識できないとは……
犯罪者になったつもりは無いんだけど罪悪感が……
って、すごいな葉っぱ人間! これ、普通に一財産築けるぞ!?
僕は宝物庫を見て思わず立ちつくしてしまう。
多分冒険者たちから奪ったのだろう。無数の武器防具、貴金属の山。中には拳大の金塊とか銀の延べ棒みたいのもある。
金貨の山とか初めて見たよ。ちょっと拝借させて貰おう。
資金源確保!
ポシェット大活躍の予感です、片っぱしから入手、入手。
えーっと、おお、この剣凄い、金の刀身に幾つもの宝石がちりばめられた柄。
その金額はもはや計りしれない、王族とか見栄を気にする人が佩いている剣だろう。
当然貰っておく。
ポシェットの存在に気付いていてよかった。誰にも気付かれることなく好きなだけ持って行ける。
……やばい。これは危険だぞ。僕の理性崩壊の危機だ。
ん? これは書物? 絵が描かれてるから絵本かな?
とりあえず暇な時にアルセに読ませてみようか? よし持って行こう。
ああ、勇者になった気分だよ。他の人の家を誰に見咎められることなく勝手に探索。一度やってみたかったんだ。
あ、見つけた。カインの装備。コレも回収。というか、すぐ横にクリスタル製かな? 透き通った綺麗な剣を発見。綺麗なのでもちろん貰う。
あ、コレ、バズ・オークの手甲にいいな。コレも貰おう。
これはネッテの杖に使えるかな? こっちはエンリカの弓とか?
杖もう一つあるからユイアさんにもどうかな?
こっちの剣は? まぁバルス君用にも貰っておこう。
鎧もちょっと強そうなの見つけたから貰い。
これは? 黄金の短剣? サバイバルナイフ見たいな形状をしている。
当然拝借。うほほほ、金じゃ金じゃ!
と、思わずお金を真上に放りあげじゃらじゃらと音を立ててしまった。
「にょきっ!?」
突然聞こえた音に外で警護していた葉っぱ人間が入って来る。
そこには何故か中に浮き上がるお金が自由落下して音を立てる怪現象。
そして見るからに消え去った財宝の一部。
「にょっきっ!!?!」
慌てたように彼は宝物庫を飛び出して行った。
って、見てる場合じゃない。脱出しないと!
僕は慌てるように宝物庫を脱出した。少し遅れて葉っぱ人間が大軍引き連れ宝物庫に飛び込んで行った。
あ、危なかった。あんな人数に囲まれたらいくら姿が見えないと言っても発見されて火あぶりにされていたぞ。
初めて見た宝物の数々で自我が崩壊していたようだ。危うく自滅するところだった。
というか、今更だけどポシェットに入れたモノが全く把握できてない。これ、全部取り出せるだろうか? 何を持ってきたかすら覚えてないぞ。
これでは箪笥の肥やしもいいところだ。
「ぶひ」
うわっ!? びっくりした。
茂みかき分けたらバズ・オークのドアップでした。
葉っぱ人間のせいで心臓バクバクだったのでさらに驚いたせいで一瞬気が遠くなったよ。
バズ・オークは僕を待っていてくれたのだろうか? 茂みが動いたのを確認してクーフ達のもとへと戻って行く。
付いて行けばいいよね?
というか、もしかしてバズ・オークは僕の存在を認識してくれてるのだろうか?
時々僕のこと気付いたような態度取るんだよね。
でも言葉が通じないから気付いているのかどうかすらわからない。
エンリカさんが訳してくれないかな。
僕の言葉は訳せないだろうけどさ。
というか、手に入れたアイテムどうやって皆に送ろう?
やっぱりリエラと合流してからかな。アルセが見つけたみたいな感じでリエラに託そう。
金塊とかも入れた記憶があるからどうにか売る算段見つけないと、それこそ宝の持ち腐れだ。
お金? 僕の買い食いのために使わせていただきます。
お金があればアルセを通して買えるしね。
これで露天のケバブっぽいのとか焼き鳥っぽいのとか食べられるぞ!
「あ、戻ってきた。バズ・オークさん何してたんですか?」
「ぶひぶひ」
「え? 気にするなって、気になりますよぉ。私とクーフさんにここで待てって言っただけで引き返すから何があったか気になってたんですよ。でも無事でよかったです」
「ぶひ」
「はい。本当に無事でよかったですよ。ん? よかったですね? んん?」
ごめんエンリカさん。ちゃんと翻訳してくれないと何言われたか全く分かりません。
クーフ大先生も困ってますよ。
そんなクーフはカインを肩に引っ提げ柩を抱えると歩きだす。
「さぁ、さっさと戻るぞ。他の面々が心配しているかもしれん」
「あ、そうですね。急ぎましょう」
クーフに促され、僕らは町に急いで戻るのだった。




