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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その不良系魔物の生態を彼らは知らない
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葉っぱ人間たちの生態を彼らは知らない

 エンリカの矢が降り注ぐ。

 突然の奇襲ににょきっ!? と慌てふためく葉っぱ人間たち。

 慌てるように逃げ出すモノと武器を持ってこちらに向ってくるモノとに分かれる。


「行くぞ!」


「ブヒァッ!」


 叢から飛び出すクーフとバズ・オーク。

 手短な葉っぱ人間を切り裂くと、そのまま撃ち掛かる葉っぱ人間たちを相手取る。

 あぶれた葉っぱ人間にはエンリカが狙いを定めた矢が飛んで行き、着実に数を減らしていた。

 だが、カインの真下に火をつけようとしていた葉っぱ人間は最初こそ驚いたモノの、自分の作業を優先しようとしている。


 これはいけない。

 この距離からだとクーフとバズ・オークは葉っぱ人間に阻まれ動けないだろうし、エンリカが飛び出すのは愚策だろう。

 ああもう、やっぱこっち来といてよかった。


 僕は一直線に走り出す。

 ああっ、本当に火を付けたよあの葉っぱ人間!?

 クーフの舌打ちとバズ・オークの驚きの鼻息が聞こえた。

 エンリカも間に合わなかった事実に青い顔になる。

 が、次の瞬間、突如カインを締めつけていた縄が解け、不自然に倒れたカインが炎に巻かれる前に脱出していた。


「これは……バズ・オーク、援護に迎え、我が送る!」


「ブヒッ!」


 クーフの言葉に頷きクーフへと走り出すバズ・オーク。クーフが彼のもとへ腕を伸ばし、バズ・オークは跳躍してその腕に飛び上がる。

 次の瞬間、クーフが腕力に任せてバズ・オークを投げ飛ばした。

 砲丸投げならぬバズ・オーク投げ。すごいや、バズ・オークが一気にカインのもとに飛んできた。

 危うくぶつかりそうになった僕は慌てて避ける。

 ごろりと一回転したバズ・オークは即座に立ちあがるとナイトブローバ―で火種を持った葉っぱ人間を切り裂く。


「ぶひっ」


 カインが気絶したままなのを確認し、彼を背中に背負うと撃ち掛かって来る葉っぱ人間たちに剣をぶつけていく。

 っと、見てる場合じゃない。今度はエンリカがピンチになりかけている。


 僕は慌てて走り出し、エンリカの矢から逃れて彼女に槍を突き入れようとした葉っぱ人間にスライディングキックをかます。

 突如足を滑らせたように倒れる葉っぱ人間。

 驚いていたエンリカは慌てて矢を番える。


 って、退避、退避ーっ!

 慌てながらも葉っぱ人間の下から這い出る僕。

 一瞬の差でエンリカの矢が葉っぱ人間の額を貫いていた。


「ぶひっ」


 と、エンリカの攻防に気付いたバズ・オークが周囲の葉っぱ人間を蹴散らし戻ってきた。

 カインをエンリカの傍に投げると、エンリカを守るように背を向け剣を構える。


「ば、バズ・オークさん……」


 だから、なんでエンリカはバズ・オークの背中見て乙女の顔をするんだよ!

 そして何気に酷いカインの扱い。

 バズ・オークさん、何も投げ捨てなくても……


 というか、クーフが無双しています。

 巨剣で相手の槍が届く前に数人単位で薙ぎ払っている。

 薙ぎ払われる側には堪まったモノではないのだが、物凄い威力で喰らった葉っぱ人間は等しく死亡していた。


 しばらく闘っていると、急に葉っぱ人間たちが一か所に集まり、その場を守るような動きを始める。

 彼らの家だろうか? 木の枝を無数に積み重ねて作ったらしい家に葉っぱ人間が集まり身を寄せている。

 その周囲を守るように武器を持った葉っぱ人間。


 それはまるで外敵から妻や子を守る戦士たちのようだった。

 ソレを見たクーフとバズ・オークは戸惑った顔で互いを見る。


「カインは救出した。戻るか?」


「ふごっ」


 ぶひ以外の音が出た!? バズ・オークさん他の音も出せたんですね!?


「い、いいんですか? 殲滅しないとツッパリみたいにお礼参りに来るかも……」


「妻子を守る手負いの獣を相手にするのか? このメンツで死に物狂いの相手をするのは辛いぞ」


「ブヒ!」


 同意するように頷くバズ・オーク。

 バズ・オークが撤退の意を示したせいか、エンリカもすぐに納得してしまった。

 ああ、もう、あの子はダメだ。完全に一人しか見えてない。


 クーフがカインを抱え上げ、叢に置いていた柩に剣をしまうと柩を持って歩きだす。

 バズ・オークは葉っぱ人間たちを警戒しながらもクーフの背後を付いて行く。

 エンリカはその横でぴったりくっついています。


 ちなみに、葉っぱ人間たちの死体を回収する事はしなかった。

 さすがにクーフも葉っぱ人間たちが見ている前で死体を回収する気にはなれなかったようだ。

 ちょっともったいないが仕方あるまい。


 ……あれ? よくよく見たらカインの武器が無いぞ?

 もしかして、別の場所に保管されてたのか?

 ……仕方ない、僕が探すか。とりあえず、バズ・オークたちは真っ直ぐ帰るだろうし、直ぐに走れば追い付けるはずだ。


 そう思い、僕は走って葉っぱ人間の集落へと向かったのだった。

 そんな僕に気付いたかのようにバズ・オークが視線を向けて来たのだけど、多分気のせいだ。

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