その敵の技を誰も知らなかった
バズ・オークがいるから警戒力はあるが、危険を察知し過ぎるのも考えモノだ。
絶えず緊張させられるので気が抜けない。
危険察知を行う頻度がこの辺りに来てから多い。
言葉が分かればいいのだけれど、バズ・オークはブヒッと鼻息を鳴らすだけ。
僕たちでどんな脅威なのか判断しなきゃいけない。
大抵は直ぐに警戒を解くのでどうやら魔物か何かが近くを通っただけのようなのだけど。
そしてようやく、長時間の安全が確保されたらしく、ここ十分くらいバズ・オークの反応が無い。
カインたちは安全になった途端一気に力が抜けてしまったようだ。
警戒をバズ・オークに任せて完全に座りこんでいた。
これから川までいくらあると思っているのだろうか、これでは先がやられてしまう。
「しかし、危険だらけだな。やっぱこっち側に来るにはパーティーが足りん」
「そうね。本来10人くらい纏まって移動して初めて何とかなる手合いだしね、あいつら」
あの狼モドキは結構大変な奴らのようだ。
まぁ、アレだけ際限なく群れてこられると大変なのはわかるけど。
結局あの狼モドキは狼なのかなんなのか。誰か名前教えてくれないかな?
「ふぅ。とりあえず、少し落ちつけたし、先を行こうか」
「ブヒッ」
カインの言葉にバズ・オークが立ち上がる。
しかし女性陣が動かない。
「カイン、もうチョイ待って。魔力回復したいから」
「あ、ああ。まぁもう少しならいいけどさ、余り長いと夜になりかねないぞ」
いやいや、そこまで長い間休まないでしょ。
せかし過ぎだよカイン。
ほら、アルセを見てよ。
木の棒片手にくるくる回ってるよ。
素晴らしい暇潰ししてるよ!
さぁ、君も混じって踊っておくんだ。そうすれば小一時間の時間が潰せる。はず。
「でも、アルセは元気だね。あんな大軍に襲われたのに全く恐がってないし」
「というか、あれは何をしてんだリエラ?」
「さぁ? ただ暇潰しに踊ってるだけだと思いますけど」
リエラがなぜ私に聞くんですかといった態度で投げ槍に言う。
でも、僕が見てない時は大抵リエラがアルセ構ってるよね?
彼らからすれば立派な御守役だと思うんだけど。
「いつも通り……というか、アルセと出会ったの数日前なのに、なんだか長年このパーティーで旅してる気がしてくるわ」
「あー。確かに、なんか心休まる時がないっつーか、目を離せないガキが出来たっつーか」
アルセの突拍子もない行動に対応することで手一杯で、今までの冒険よりも濃密なんだそうだ。
確かに僕たちの冒険と言えばアルセというかアルセを操る僕に振りまわされることは多かったかもしれない。
でもそれくらいの冒険なら前々からしていたはずだ。だってこいつ勇者だし。
それでも、気を抜くと変なもの持ってくるわ、目を離すと変な場所行ってしまうわで慌ただしいのは確かだ。アルセ、時々僕の予想も付かない行動するしね。
実は本当にアルセの知能が高いんじゃないかと思う時もあるくらいだ。
間もなく川へ出る。といった場所だった。
それまでにも時折バズ・オークが警戒していては直ぐに警戒を解いていた事態が何度かあったんだけど、やはり、何か危険な敵がいたらしい。
視界が開け始めたところで、ついに襲われた。
「おい、マジか……スマッシュクラッシャーだと!?」
その姿を見た瞬間、カインが驚愕の面持ちで剣を構える。
森から現れたのは三体の二足歩行するカワウソ。
右肩に巨大なハンマーを携えている。
眼がキュートだ。凄く愛らしい。
「な、何ですかアレ!?」
「いいかリエラ。絶対に奴らの攻撃範囲に入るな。あのハンマーのスイングが当れば一撃で死ぬぞ。ネッテ、お前が頼りだ。牽制する!」
バズ・オークにも敵の攻撃は絶対に受けるなと告げたカインはじりじりと近づきながら相手の攻撃範囲を探る。
どうやらスマッシュクラッシャーの動きは亀のように鈍いらしく、攻撃も大きく振り被ってからの一撃なので攻撃範囲に入った瞬間カインがバックステップで逃げる時間はあった。
なんとかいけそうか。とカインが安堵した瞬間だった。
攻撃範囲外のスマッシュクラッシャーの一体が大きく振り被り一回転。
なんだっ!? と思った次の瞬間、カインに向けて巨大ハンマーが飛んできた。
回転力を利用してハンマーだけを投げ飛ばしたのだ。
咄嗟に両手をクロスして接触と同時に真後ろへと地面を蹴るカイン。
そんな彼の両腕にベギャリと音を鳴らしハンマーが飛び込む。
超重量の飛来物に巻き込まれ、カインが森の奥へと消えて行った。
し、死んだんじゃ……
武器を失くしたスマッシュクラッシャーはバズ・オークが接敵と共に一撃。
そこに攻撃を行うもう一体のスマッシュクラッシャー。
一体を屠ったバズ・オークに巨大なハンマーが襲いかかる。
「ブゥァ!?」
剣で受け止めようとしたバズ・オークだったがハンマーの一撃は重かった。
剣が粉々に破壊される。
ダメージ自体は負わなかったものの、武器を破壊されたバズ・オークが慌てて下がる。
も、物凄く危険な敵ではないですかこいつら?
何とかしないとマズいな。でも、あんな重量物持ってる奴ら相手にどうすれば……
重量物? まさかと思うけど……僕、攻略法気付いちゃったかも。
スマッシュクラッシャー
種族:かわうそ クラス:カワウソ重戦士
・キュートな瞳のカワウソたち。巨大なハンマーを引っ提げている。
握力は強いが一度ハンマーを落とすと二度と持ち上げられないため、余程の強敵に合わない限りはハンマーを一生手放す事はない。
このため転倒してハンマーの下敷きになると自力で脱出できなくなる。




