その復活能力を、彼らは知らなかった
「リエラ、カインとクーフの回復、一応バズ・オークにもお願い。復活できるといいけど……」
「わ、わかりました」
慌てて魔銃を携え走るリエラ。回復魔弾をクーフに打ち込もうとして、ふと、止まる。
あれ? と疑問符を浮かべるような顔で、ネッテに声だけを掛けた。
「あ、あのネッテさん……」
「何?」
「さっき、ロウ・タリアンの首、ネフティアが切断、しましたよね?」
「ええ。さすがに首を切られれば生きてはいないでしょ。デュラハンじゃないんだし」
「気のせいですかね、首……くっついてません?」
震える手で指し示すリエラの指の先、そこにはロウ・タリアンの死体が……死体?
違うッ! 首が繋がってる。
そうだ。あいつの能力、悪夢再びだ! 戦闘中に限り一度だけ復活するという悪夢のような能力。
「リエラッ!」
慌てて僕は走り出す。
でも、それより早くロウ・タリアンが起き上がった。
金色に光る何かをリエラに飛ばしていた。
「きゃっ!?」
思わず手に持ったモノで受け止めるリエラ。
しかし衝撃が強過ぎて両手ごと跳ねあがる。
一瞬宙に浮いてから後ろに倒れるようにして尻から着地した。
「いたた……嘘っ、魔銃が!?」
魔銃の胴体部に深々と突き刺さっていたのは金貨だ。
そう言えば銭手裏剣とかいう謎の道具があったな。あれか!?
とにかく、これで僕らは回復手段を封じられたことになる。
クーフが両腕骨折、バズ・オークとカインが戦線離脱。エンリカが崩壊中。
まともに戦えるのはネフティアと辰真だけ。後方支援はネッテオンリー。
戦力外がリエラ、ミクロン、アニア、プリカ、アルセ、そして僕。
一応葛餅も居るには居るが、今の攻撃に反応できなかったことから、どうもロウ・タリアン相手に委縮している感じがする。
復活したロウ・タリアンは当然、全回復状態。
これ……詰んでない?
ネフティアが果敢に攻める。
ロウ・タリアンが買い物籠から取り出したのは、一本の白ネギ。
ネギっすか!?
ギュイイイイイイイイイと迫り来るチェーンソウの一撃を、何と正面から受け止めた。
火花を散らすチェーンソウ。しかし、不折の白ネギが折れる様子は一切ない。
なんだあのネギ!? 万能過ぎる。
一度飛び退いたロウ・タリアンは迫り来るネフティアから距離を取り引っ掴むと、それをネフティアに投げる。
薙ぎ散らそうとしたネフティアは、その物体を見て慌てて飛び退いた。
何を投げたかって? ロウ・タリアンが生み出したタマネギンですよ。
これは効果が無いと気付いたロウ・タリアンはネギを使ってタマネギンを一刀両断。
飛び散るタマネギの汁をネギにしこたま塗りたくると、ネフティア目掛けて飛ばしてきた。
予想外の攻撃に反応が遅れたネフティア。
その目にタマネギンの汁が直撃した。
刹那、声の無い悲鳴があった。
目を押さえながら転げ回るネフティア。
最大戦力が今、無力化されてしまった。
ロウ・タリアンは一番近くにいたリエラに標的を変更し、走り出す。
慌てて立ち上がるリエラだが、その立ち上がるだけの間で既にロウ・タリアンは彼女の目の前に現われていた。
驚くリエラに振るわれる白ネギ。
咄嗟に動いた辰真がリエラを身体ごと掴んで逃がす。
ぶうんと空を切る白ネギ。
そこへ迫るクーフ。両腕がイカレているので突進からの蹴りだ。
だが、対男性に置いて有利になるロウ・タリアン相手では、彼の蹴りも児戯に等しかった。
足裏を掴み取られてスイング。プリカが射撃を行っている場所目掛けて吹き飛ばした。
「いかン、逃げろッ!!」
「ひゃ、ひゃあああああああああああ!?」
かろうじて避け切ったプリカの直ぐ上を滑空していくクーフ。なんとか体勢を入れ替え太い木に着地する。
轟音響かせ木が根元から折れるが、代わりにクーフが無傷に生還した。
次にターゲットに指定されたのはミクロンだ。
いきなり迫ってきたロウ・タリアンに恐怖するミクロン。
慌てて逃げ出そうと背を向けた、その刹那、ロウ・タリアンはネギをくるりと回転させ、根っこ部分を向ける。
そして……
「ア゛ァ゛―――――――――――――――――ッ!!?」
僕らはミクロンの断末魔の叫びを聞いた。
それは、余りにも恐ろしい結末だった。
ミクロンの尻に、刺さっていた。あの白ネギが……
「み、皆、後ろ見せちゃダメよ! あいつ、後ろ見せた相手にはネギを突き刺してくるわっ!!」
アニアが今更過ぎる忠告。ありがとうよ。お前のせいで犠牲者が出ちまった。
ロウ・タリアンは再び買い物籠に手を突っ込む。
出て来たのは白ネギだ。もう一本あったらしい。
「プリカさん、こうなったら牽制お願い。魔法でなんとかやってみるわ!」
リエラを庇った辰真も直ぐに起き上がりロウ・タリアンの牽制に向う。
ただ、ツッパリでは敵わないと、辰真はテンションをあげようと努力する。
血管が浮き出そうなほど力を溜める辰真。
おお、変身か、変身するのか!?
「おるぁああああああああああああああああああああ!!」
総長、ではなかったが番長に変化した辰真。
テンション上げるのはいいけど、番長じゃまだ厳しいかも。
何か方法はないだろうか?
強い戦士がもう一人くらいいれば……あ、ある。あるぞ。
もう一人、即戦力を参入させる方法が!
僕はポシェットの中から死甦水を一瓶取り出した。




