その助っ人の存在を、僕は知りたくなかった
アルセに死甦水を持たせて持ち上げる。
再び突撃しようとしていたクーフへと、アルセと共に向う。
突然現れたアルセに驚くクーフ。その視線が手に持たれた瓶へと注がれる。
「それは?」
クーフの言葉にアルセは笑顔を向ける。
アルセは瓶の蓋を取ると、クーフに……掛けた。
ちょ、飲ますんじゃないんですか!?
びっちょりと掛けられたクーフは何がしたかったのだという顔をする。
手で顔を拭って水気を飛ばし、口を開きかけて気付いた。
両手が、動いている。
「これは……回復薬か? いや、違う、何だこれは!?」
ああもう、もう一瓶使わなきゃだめか。
僕はクーフのためにもう一つ死甦水を取り出し彼に手渡す。
アルセを介すとまたぶっかけそうだし。
空中を走る瓶に一瞬怪訝な顔をしたクーフだったが、僕から瓶を受け取ると、蓋を開けて飲み始める。
いや、躊躇なしですか。そんなに信頼しちゃっていいんですかクーフさん。
まぁ、こっちとしてはありがたいけどさ。
死甦水を飲み干したクーフが空瓶を取り落とし、唸りだす。
その身体が、ヤバい、凄い怖いことに。
何しろ干からびた肉体が青い肉が盛り上がるようにして変化していく姿が普通に見えるのだから驚きだ。
そうか、ネフティアもこんな感じに変化してたのか、あの湖の中で。
そんなクーフが変化している間、辰真が一人、化け物相手に闘っていた。
ロウ・タリアンのネギを拳で弾き、蹴りを叩き込む。
買い物籠でガードされ、巨体の体当たりを気力で防ぐ。
しかし、やはり勝てない。今の彼ではロウ・タリアン相手には闘うには弱過ぎる。
総長でも苦戦しかねない相手なのだから。
リエラとネッテはタマネギンたちの相手で忙しく、プリカは一応援護しているけど弓なので決定打に欠ける。
そればかりか命中率まで悪いので外しまくっている。
それでも辰真が敗北しないのは、実はアニアの御蔭でもあった。
アニアはロウ・タリアンの足元に妖精の輪というものを作りだし、ロウ・タリアンを蔦で絡めて阻害しているのだ。
妖精の輪。サークル内に足を踏み入れた存在を蔦の罠で絡め取り首吊りにするんだとか。
アニアにしてはえげつない魔法を覚えているが、これは妖精族の特性ともいえる能力らしい。
おもに悪戯に使っているんだと。
宝の持ち腐れである。
「取りいだしたりますはミニマムテルトード! アニアちゃん、いっくぜぇ!」
遊び心を忘れない妖精さん、両手で持ったピンクのピコピコハンマーを大きく振り被ってロウ・タリアンに飛びかかった。
「くらえぇ、ミニミニ光線、ビビビビっ」
ピコピコハンマーっぽいのから放たれた一撃を、ロウ・タリアンは大根を投げて回避。
光線に直撃した大根が玩具サイズに縮んでしまった。
なんか人形遊びのキッチンパーツ辺りにありそうなサイズの大根になりました。
「ああん、避けないでぇ」
アニアって結構えげつない能力持ってるね。
あんなもん僕が喰らったら即死確定ですよ。
皆に見えない僕が縮んだら、巨人の国に迷い込んだ透明人間、絶対踏まれる。
そんなアニアに放たれる反撃の金貨。
ぎりぎりでアニアは回避したが、風圧に煽られ吹き飛んでいた。
地面に墜落してはうっと悲鳴を上げている。
「選手交代だ辰真!」
お、おおおおっ。来た、なんか凄い人来ちゃった!?
剣持ち颯太さんのおなぁりぃ!
両手で巨人殺しを構えた巨漢の男が走り込む。
青白い肌に盛り上がった筋肉。漆黒の短い髪、クーフさん、生前はアメフト選手かなんかですか?
実は結構良い身体していたクーフさん。
ロウ・タリアンの振るったネギに巨人殺しをかちあわせる。
よし、戦力増強だ! これでネフティアが復活してくれさえすれば……
って、うおおおお!?
いつの間にか増えに増えたタマネギンにアルセが囲まれていた。
クーフに近づいて、皆から離れたせいで一人、というか僕とアルセが囲まれる結果になったのだ。
タマネギンは大した攻撃はないがこう多いとアルセ一人では……
タマネギンがアルセに体当たりをしかける。
いけない。そう僕が思った瞬間、一迅の風が吹いた。
黒いそいつは割り込むようにタマネギンを蹴り飛ばし、アルセを守るように現れる。
シルクハットのツバをきゅっと直し、柔和な笑顔でアルセに背中を見せる一人の変態。
彼はアルセに視線だけ向ける。
お嬢さん、大丈夫ですか?
そんな言葉が聞こえた気がした。
アルセの危機に、ロリコーン紳士が助っ人に来たのである。
なぜ、お前だし……
ロリコーン紳士はステッキを構えて近づくタマネギンたちを撃ち抜いて行く。
まさにフェンシングのような鋭い一撃。
穴を穿たれたタマネギン達の死骸が転がって行く。
そういえば、こいつは幼女の危機に対して力が上がって行くんだったよな。
なるほど、アルセが危機に陥れば陥る程に強くなる偽人か。
でも、変態はご遠慮ください。




