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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第六話 その結婚式にでた食事の素材を僕らは知る気はない
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その悪戯が度を超えていることを、僕らは知らなかった

「ちょいさー」


「てーい」


「ぴくしぃー、ぱーんちっ」


 それは突如襲ってきた。

 濃霧の中、姿は見えないけどカインに、クーフに、リエラに、エンリカに、バズ・オークにと、見えない場所からの奇襲攻撃。


「うっ。ちょ、このっ!」


 わき腹に直撃したらしいカインの声が聞こえた。


「きゃぁぁ!? 髪ひっぱらないでぇ!?」


「あはははは、ひっぱっちゃうに決まってんじゃ……きゃあぁぁ!?」


 だけど、こっちだってやられてばかりじゃない。

 葛餅がリエラの髪を引っ張っていた何かを絡め取る。


「い、いやぁぁぁっ。スライム、スライムがいるっ!? スライムプレイ嫌ぁ、捕食されたくないぃっ!?」


「ちょぉ、掴まないでぇっ。誰かたっけてぇ、アニアぁ、アニア、私を救ってぇ!?」


 どうやらネフティアに誰か捕まったらしい。

 しかも途中から助けを呼ぶ声が二人に増えた。おそらく両手で掴んでいるのだろう。

 掲げている姿が普通に予想できる。


「そりゃぁ!」


 ついでに、アルセにも奴らの襲撃は来た。

 当然、アルセに痛い思いなどさせません!


「オルァッ!」


「きゃぁぁ!?」


 辰真の声に被さって、僕は突撃仕掛けて来た妖精をぱっと掴んで投げ捨てる。

 むぅ、今の娘結構胸があったぞ。役得役得。


「ちょぉ、この変なの本気だしたぁ、私達遊んでるだけなのにぃ」


「今の当ってたら死んでたよっ! この妖精殺しッ!」


「お、おるぁ?」


 辰真の一撃は外れたらしい。けど、外れて良かったのかもしれない。

 さすがに妖精さんたちを一撃粉砕は可哀想だろ。

 ちなみに、今襲撃して来てるのは全部妖精のようだ。


 今のところ反撃出来てるのは葛餅とネフティアだけだな。

 その方角からは妖精たちの悲鳴だけが響いている。

 葛餅は体内に妖精たちを埋める事で収集してリエラへの被害を減らしているようだ。

 ネフティアは両手を巧みに使い、キャッチ&リリースをしているらしい。

 たぶん、本人物凄い楽しんでいると思われます。


 アルセもきゃっきゃきゃっきゃと楽しげに妖精たちが飛んで行くのを見ている。

 安心してくれアルセ、穢れた妖精共には指一本触れさせませんよ?

 遠くの方でプリカの声で「毟る、絶対羽毟る」とか聞こえて来たけど、気にしない方向で、というかあいつ怒ることあるのかな? 幸福病にかかってるのに。


 しばらくクスクス笑う妖精たちの洗礼が行われた。

 おもにリエラ、アルセ、ネフティアだけが難を逃れたと言っても良い。

 妖精たちの方が被害甚大だったとも言えるけど。


「はーい、妖精郷とうちゃーく」


 アニアの声でようやく抜け出たことに気付いた。

 急に靄が消え去り真っ青な空が広がる外へと辿りつく。

 凄い。一面花畑だ。

 そんな花畑の一角にネッテが倒れている。

 バンリがそれに気付いて一番に走ってネッテの元へ向って行った。

 どうやら無事に辿りついていたらしい。


 そして、僕は気付いた。

 辰真のリーゼントに無数の妖精が突き刺さっている事実に。

 クーフの頭の上にはシロツメクサだろうか? 何かの花冠が装備されていた。ちょっと可愛い……わけがない。


 カインなんてリボンが何個もついている。

 バズ・オークはヤバい。誰かのパンツを被ってる。しかも女物……

 エンリカに関しては髪を束ねていた止め具を外されストレートヘアにされており、代わりにプリカがパイナップル頭にされていた。


「ちょっと妖精さん、パンツ返してくれない? 毟っちゃうよ?」


 押し殺した声で告げるプリカが物凄い笑顔の圧力を掛けてくる。

 妖精が怖々指し示すのは、バズ・オーク。

 おい、マジか。容赦ないな妖精さん。


「ぶ、ブヒァ!?」


 慌ててパンツを取り去るバズ・オーク。

 即座に返そうとするが既に遅かった。

 彼の変態行為は既に妻に見られていたのである。


「あ・な・た?」


 束縛する女の執念発動。自分のパンツを被っていたのならエンリカは多分笑って許しただろう。

 だが、自分の夫が他の女のパンツを、妖精の悪戯で被されたとして、許せる訳がなかった。

 危機を察したバズ・オークは即座に土下座。

 エンリカはそんなバズ・オークを立ち上がらせると腕を絡み取り密着。大丈夫、わかってるわ。そう蛇のように絡みついて耳元で囁くと、きっ、と怒りの視線を周囲の妖精たちに向け、無言の威圧をかける。


「妖精共……私の夫に手を出して……殲滅するわよ?」


 妖精たちは悪戯気分だったのだろう。だが、エンリカには冗談で済まされないモノがあったらしい。彼らはやりすぎたのだ。

 怒り心頭の彼女は怒りをバズ・オークに向けることなく妖精たちに静かに弓矢を向けた。


「女の怒り、その身に刻みなさい」


 矢束に存在した全ての矢を弓に番え、ぎりぎりと弓を引くエンリカさん。

 妖精郷の惨劇が今、幕を開けようとしていた。

 ちょっとエンリカさん洒落になってないですよ!?

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