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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第五話 その二人の婚約を彼らは知りたくなかった
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その両親をどうしたらいいのか、彼らは知らなかった

 闘いが、終わった。

 終わってみればあまりにも一方的な蹂躙だった。

 その戦場には敗者の二人が無残な姿で横たわっていた。


 リカードさん、ルイーズさん。エンリカの両親は今、精神的に死線を彷徨っていた。

 自分の愛する一人娘が、よりによってオークの嫁になりたい。しかも既に、第一子を産み落とし、第二子が宿っているのである。

 その事実は、余りにも衝撃的だった。


 気絶したリカードさんの髪が真っ白になるくらいには……うぅ。

 ダメだ。僕はもうダメだ。涙が溢れて止まらない。

 カインも、ネッテも、リエラすらも、あまりの悲惨な結末に涙していた。


 考えてもみてほしい。

 リカードさんたちが愛情を持って、オークやゴブリンは危険だから絶対に近づくな。

 そう言い聞かせた愛娘がそのオークの子を産んでいた。しかも自ら望んで。

 あまりに酷だ。親不孝と言っていいだろう。


 その事実を、彼らは受け入れ切れなかった。

 たとえ子を産んでいたとして、相手が人間やエルフであるならば、多少の不満は飲み込んで娘の幸せを願ったことだろう。

 無理矢理オーク犯された場合は? それでも嫁ぎ先はちゃんと探す気だっただろう。

 だが、自ら好んでオークの嫁になりたい、そう言われてしまったら?


 僕からすればアルセがロリコーンと結婚したいと言いだすようなモノだ。絶対に……無理。

 リカードさんがバズ・オークを殺しにかかるのも理解できてしまう僕だった。

 エンリカは泣きながら二人を寝室に連れて行く。

 バズ・オークと二人で……オイ、そこの豚自重しろ。


「そっかぁ、エンリカの彼氏さんはそこのバズ・オークさんだったんだねー」


 同じ事実を知ったプリカは幸せそうにルイーズさんの手料理を食べている。

 こいつは明日世界が終わると教えられてもこんな状態だろう。

 まさに幸福という名の病気である。


「そういや、お前は驚かないんだな」


「いえいえ、私だって驚いてますよカインさん。プリカびっくり」


 とか言いつつ幸せそうにビスケットを頬張るプリカ。


「でも、どうしようかしら? あの状態だと起き上がっても……」


「なんとか、説得するしかないだろう」


「バズ・オークも悪い存在ではないのだ。彼がエンリカをしっかりと愛しているのだということを理解させることはできないか?」


「そうは言っても……あ」


 と、魔物図鑑で戻って来たバズ・オークのステータスを写し取ったネッテが声をあげる。


「どうした?」


「見てよカイン、これ」


 ネッテに言われて皆で魔物図鑑を覗き込む。


  バズ・オーク

  二つ名:裸族豚

  種族:オーク クラス:オークジェネラル

  装備:ナイトブローバー、屠殺ナイフ、ポールアクス、銛、アダマンタイトの手甲、剛毅の手甲

  スキル:気合いの咆哮:攻撃力を数ターン高める。

      二連撃

      鉄鋼断

  常時スキル:人語読解:人、あるいは亜人の言語を理解する能力

      アルセイデスの忠誠将軍:忠誠を誓ったアルセイデスが近くにいる場合、全ステータスがアップする。くいしばり付加。

      くいしばり

      守りの心得

  種族スキル:絶倫:殆どの男たちが夢見る能力。

        農作業Lv3

        オークの鼻:臭いでの索敵にプラス効果。

        愛妻家:このスキルを持っている男性は浮気をしにくくなる。


「おお、なんか増えてるな。愛妻家? マジか!?」


 カインの叫び。それはつまり、愛妻家、エンリカ以外に懸想しないというバズ・オークの決意の表れともいえるものだった。


「これ、エンリカのお父さんに見せたら少しは見直してくれないかしら?」


「難しいんじゃねぇか? オークは見敵必殺みたいな状態だろ。起きたら血の雨降るんじゃないか?」


「リカードさん、オーク鍋とか言ってましたしね」


 リエラさん、鍋じゃないよ。いや、どうでもいいけど。バズ・オークが未だにピンチであることに変わりはない。

 起き上がったリカードさんが包丁持って現れないともしれないんだ。

 とりあえずそっちの入り口じゃなくて玄関口に退避しとけバズ・オーク、そこだと背後から包丁が襲いかかるぞ!


 アルセを使ってバズ・オークの手を引き移動させる。

 戸惑うバズ・オークだったが、カインに言われて理解したらしく顔を青くしていた。

 少し遅れて、エンリカが戻って来る。


「どう、御両親大丈夫?」


「今は、眠ってます。私はもう少し、付き添ってますから、皆さんはここでゆっくりしていてください。悪いんだけど、マルケ、皆の相手お願いね」


「ちょぉ、娘さん、ウチまだ捕まったままやで!?」


 未だにネフティアに握られている妖精さんが手を伸ばして助けを求めるが、エンリカはそれに気付かず廊下を戻っていく。

 両親の看病に向うようだ。

 さぁて、どうなるかなこの状況。どうやったらグッドエンドに向えるのか、僕は全く予想できません。

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