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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第五話 その二人の婚約を彼らは知りたくなかった
190/1818

その少女のマイペースさを、彼らは知らない

「ここだよぉ」


 プリカに案内されたのは、一軒の民家だった。

 いや、ログハウスのような作りの木製店とでも言うべきか。

 他の家とは違い、入口の上の方に横看板が取り付けられており、風で揺れている。


 扉を開いて店に入って行くプリカの後を追い、僕らはカインを先頭に店へと入って行く。

 ……あれ? 本当にここ武器店?

 入口を入ると何脚かの椅子と机が設置された場所があり、その奥にカウンターがある。

 けれど武器は一つも見当たらない。


 あるのは観葉植物だろうか? 陶器の置物に土を入れて作ったらしいプランターが四隅に設置されているくらいだ。

 カウンターの奥に見えるのはキッチン。おそらく居住区兼用なのだろう。

 さらに奥には階段があるようなので二階が寝室などになると思われる。

 階段横に通路があるのでそちらは鍛冶場かな?


 カウンターには一人のエルフ。

 やはりエルフなだけあって美形だ。

 さらさらヘアのお兄さんだ。


「おじいちゃんただいまぁ」


 訂正、お兄さんではなくおじいさんでした。

 どんだけ若作りなのおじいさん。エルフパネェっす。

 そんなおじいさんはにこやかに微笑みプリカを出向える。


 プリカからカインたちを紹介されたおじいさんは彼らが客だと知ってカウンターの下から何かを取り出す。

 書物、いや、カタログだ。

 どうやら武器のカタログを見せて相手に選んでもらう方式のようだ。


「勝手に武器を選ぶ訳じゃないのか?」


「儂らエルフは基本オーダーメイドという奴じゃからな。こんなカタログすらいらんのじゃが、一応この村にも外からのモンが来るからな。ウチにある予備がここにあるぶんじゃ。それ以外は多少時間がかかるかの」


「じゃあ、とりあえずそれ見せてもらっていいかしら?」


 ネッテの言葉にカタログを差しだし、テーブルを指差すお爺さん。

 どうやらこの机と椅子はカタログを見る外からの冒険者用に用意されたものらしい。


「プリカ、飲み物でもだしてあげなさい」


「はーい」


 プリカがカウンター奥へ向い、キッチンで作業を始める。

 それを流し見ながらカインたちは小さな丸机にカタログを置いてネッテとカインを中心に集まるようにカタログを見始めた。


「ぶひっ」


 そんなネッテたちを尻目に、バズ・オークだけはおじいさんのもとへと向かうと、懐に持っていた何かを取り出しカウンターへと置いた。

 二つに折れた新緑色の刀身を持つ剣。アルセソードだ。

 僕が貰ったというか、使っていた剣だったんだけど、バズ・オークが使っていた際折れちゃったんだよね。


「なんじゃと? オークのクセにエルフに武器の補修を頼みたい? ふざけているのか?」


「あ、あの、ランツェルさん、すいません、無理を承知でお願いできませんか?」


 バズ・オークの行動に気付いたエンリカが慌てて隣にやって来る。


「むぅ、しかしなエンリカ、エルフにとってオークがどういう存在か、わからぬ訳ではあるまい」


「それを承知でお願いします。バズさんは皆の知ってるようなオークとは違うんです。この剣も、ゴブリンキングと戦った時に折れたモノで、できるなら直していただけませんか?」


「ふむ。他ならぬ娘の幼馴染の頼みでもあるし、やってやりたいのはやまやまじゃがな。ここまで見事に折れているとのぉ、新たに作った方が早いわい。この剣も素材を削っただけのものじゃし、エルフの魔法を付加すればより強力にできるが……材料はないのかの?」


「材料……」


 エンリカとバズ・オークの視線がアルセへと向う。

 そんな視線を浴びたアルセは……豚娘と手を取り合ってクルクル円を描いていた。

 ワルツでも踊ってるのですかアルセさん?


 アルセはエンリカとバズ・オークの視線に気付き、ニッパと笑顔を見せる。

 そしてそぉれ、とばかりにマーブル・アイヴィを発動した。

 アルセイデスはマーブル・アイヴィを放った!

 床が砕けた。

 カインは拘束されてしまった!


 ピンポイントでカインの真下から出現したマーブル・アイヴィ。彼を絡め取り周囲を驚かせた。

 って、アルセさん、店の中でなにしてんですか!?

 さすがにおじいさんが驚いて呆然と口を開けてるぞ。


 が、そんなことは御構い無く動いているプリカが皆の前に透明なグラスに入った飲み物を設置していく。

 幸せそうに鼻歌交じりだ。

 一人だけカインに起こった現象すら意識の外で出すもの出してキッチンへと戻って行った。


 今のうちだ。ちょっと拝借。

 折角なのでクーフの分をちょっと戴くことにした。

 ミイラなので多分飲まないだろうと思ってのことだ。

 というか、クーフはどうやって活動してるんだろうか? 今更ながら謎である。


 あ、これおいしい。

 果実ジュースみたいな味だ。おそらく何かの果汁を搾った100%ミックスジュースなのだろう。幾つかの果物が混ざった味がする。

 僕の行動に気付いたネフティアとアルセがいの一番に飲んでいた。

 アルセさんや、やるだけやって後放置ですか?

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