後日談・そのカフェにいる人物を、彼らは知らない
SIDE:光来勇気
なんでこんな事になったんだ?
いまさらだが頭を抱えて泣きたくなってくる。
元の世界に戻って能力使って好き勝手やろうとしたが、ユーチューブデビューした次の瞬間大炎上した。
あまりの毒舌の嵐に速攻で動画削除したし。
株に手をだしたらいきなり円安突入とかよくわからん事になって借金が一気に増えた。
なんで10万なのに300万の借金になるんだよ、意味分かんね。
さすがに親に報告できなかったから困った時に来いって言われてたカフェへとやってきた。
まさか、ここで知り合いに遭うとは思っても見なかったが。
「ヘイユウキ、マタ会エテウレシイデース」
リックマンの日本語が怪しくなっていた。
異世界だと凄く流暢だったのによ。なんでカタコトの怪しい外国人みたいになってんだ?
しまいにゃ感動高ぶったらしく英語話だして何言ってるかまったくわからねぇし。
「あー、おっさん、あんたがグーレイさんの言ってた頼れって言ってた奴か?」
「詳細は聞いてるよ光来君」
とりあえずリックマンを放置して、カウンターにいるおっさんに声をかける。
尾道みたいなおっさんとはちょっと違う、何かデキるって思えてしまうアロハシャツのおっさんだ。
容姿的には普通の中年にしか見えないのに、この人ならなんかやりそう。と思えてしまう不思議な貫禄がある。
「それで、お金の稼ぎ方、でいいのかな?」
「ああ、とりあえず300万程必要だ」
「いや、多いね!? なんでまたそんなに……」
「株やったらなんか借金300万になった」
「異世界から帰ってすぐなのに盛大にやらかしたね。うーん。さすがに直ぐには無理だよその金額は」
「マジかぁ、サラ金に手ぇ出すしかねぇかな」
「止めておきなさい。とりあえず3カ月。ここで働けば元は取れるよ」
「……は?」
え? ちょっと待て。3カ月だけ? それで300万? 1カ月100万!? どんな仕事だよそれ!?
「とはいえやるからにはきっちりやって貰う事になるけど、どうするかね?」
「あー、やります、やらせてくださいっ」
いや、3カ月仕事するだけで元取れるって、あ、でも俺学生……
「ん、ああ、もしかして学生なこと気にしてるのかな? 気にしなくていいよ、君がするべき仕事は裏の仕事だ」
「う、裏の?」
「とある異世界で食材調達。異世界帰りの君には丁度いいだろう?」
な、なるほど、異世界の食材でカフェ開いてんのか。え? それいいのか?
行政入ったら訴えられない?
「そこは問題無いよ。そもそも異世界の肉を売ってはならないという法律は無いしね。もしも行政が入るようなら盛大に世間に伝えるだけさ、異世界の肉を売ってますってね、どうなると思うかな?」
このおっさん、ヤベェ……
世界が混乱すっぞそんなことしちまったら。
異世界は本当に実在した! とか滅茶苦茶な大炎上確定じゃねぇか!?
「あ、でもこの前総理大臣食べに来たわよねアナタ?」
「ああ、その時肉の産地聞かれたから本当のこと伝えたらめちゃくちゃ唸ってたけどその後なんにもないし、多分行政が動くことは無いだろうね」
国のトップ懐柔したのかこのおっさん!?
「最悪の場合異世界に行けばいいし、気楽なものさ」
なんだよこのポジティブシンキング。完全な行き当たりばったりじゃねぇか、でもまぁ確かに大繁盛してんだよなぁ、ここ。
店員も結構多いし。
「近所に学校があってね、そこの生徒を結構雇うんだよ、賄い食が意外と人気らしくてね」
「そ、そっすか」
というか、リックマンはほんとどうした?
こいつってこんなオーバーリアクションだっけ?
HAHAHAじゃねぇよ。言葉わかんねぇんだって。
カララン、っとドアに付けられたベルが鳴る。
入って来たのは……結構な人数……っていうか、なんでお前ら纏めて来てんだよ!?
「8名でよろ、あれ? 灼上さん? 何立ち止まってんの?」
「いや、あそこにいるのはもしかして……」
「OH! ミナサン久シブリデース!!」
「え、うわっ!? リックマンさん!? そっちにいるのは光来君!? 珍しい取り合わせだね」
「珍しい、じゃねぇよ、たまたまだたまたま」
またリックマンが英語で話しだした。
ってかなんで朝臣は普通に会話出来てんだよ!?
は? 嘘だろ、尾道のおっさんまで英語話しだしたぞ!?
「アレは、何語?」
「ゴールドたんは初めて聞くのかな? アレは英語だよ、この世界の共用語とでもいうべきか、ある程度の国で通じる言葉なんだ」
「複数の言語があるの? 全部覚えるの大変」
「え? 全部の言語覚える気なの!?」
「スパイの嗜み」
ゴールドの奴が燃えてやがる。
灼上、まぁ頑張れ。多分一緒に覚えさせられるんだろうなぁ、スワヒリ語とか古代語とか覚えても使う場面あるか? 滅多に国外行かないのに。