後日談・その出会いたくなかった人物を、彼ら以外知らない
SIDE:灼上信夫
「はぁ、どうして、こんな事に?」
「あら、何か問題?」
「ん、無問題」
両手に花。と言えば僕にとってはウラヤマリア充対象でしかなかったはずなんだけど、オカシイ、これって両手に花でいいんだろうか?
異世界から現実世界に戻ってきた僕は、行くところの無い美樹香たんとゴールドたんを自分の家に住まわせるようになった。
六畳一間のアパートに、三人が生活することになったのだ。
初日はゴールドたんにこの世界での過ごし方と文明の利器の使い方説明で終わり、夜はどぎまぎしながら女性にひっつかれて寝るという素晴らしくも緊張で眠れない夜を過ごした。
次の日には服装購入に向かい、僕のなけなしの貯金が吹っ飛んだ。
このままだと金欠になるのはすぐだろう。
なのでお金を何とかするため、本日はグーレイさん達に紹介されたカフェを目指して移動中である。
両腕に女性を絡ませたおデブ男。
周囲を歩く男女が思わず二度見をして来る。
二人とも美少女なのでなおさら僕が浮きあがっていた。
チャラそうな男に声を掛けられることもしばしば、ゴールドたんが即座に鎮圧するので問題は無いけど、さすがにちょっと申し訳なくなってくる。
まぁ向こうから突っかかって来るのでどうしようもないんだけど。
「あいつか、お前らノシた奴ってのは」
「は、はい、デブと女性二人、一人は外国美人、間違いないです」
「おい、テメェら、ウチの馬鹿が世話に……リーダー?」
「うぇ!? 矢田!?」
明らかに不良といった容姿の男二人を引きつれてやって来たのは、矢田。
まさかの遭遇に一瞬立ち止まる。
「あ、あの、矢田さん?」
「おーおー。お前らもこっち来たんだっけか。生活どうだ?」
「チッ、矢田に遭うとか最悪ね」
「ん。とっても充実。でもそっちのみたいなのに絡まれて困る」
「かはは、相変わらず嫌われてんなぁ。リーダー、何処行くんだ、デートか?」
「あー、いや、当面のお金が欲しくてね、グーレイさんに紹介されたとこ行こうかなって」
「あー、そういや金、俺もねぇな。折角だし連れてってくれや」
「あ、あれ? 矢田サン?」
矢田、部下っぽい人たちが唖然としてるよ?
「あ? こいつ等のこたぁ放っといていいぜ。そら、さっさといこうぜリーダー。あ、そうだテメェら。この人は世話になった人だからよ、手出しすんなよ。まぁ、手出ししても鎮圧されるんだが……とりあえず死にたくなけりゃ近寄ンな」
なんで矢田は僕なんかをリーダー扱いするのか未だに納得できない謎である。
にしても、なんで矢田まで付いて来てるんだ。
というか、コレどう考えても異世界で組んでた四人パーティーだよなぁ。
現代世界に来てまでなんでこんなことに?
ほら、矢田が来たせいでなんかちょっとギスギスしてるじゃん。
「あら? ねぇ、アレって……」
最初に気付いたのは美樹香たんだった。
向いの道を歩く四人組。
ソレはどう見ても……
「尾道さんたちだ」
「あー、おっさんたちもカフェ向うつもりか」
なんか、同じ日に皆集まるってどうなんだろう。
運命じみてるというか、神の意思を感じるよ。ちょっと駄女神さん、なんかやったな。
―― なんのことかわかりませんなー ――
しかも普通に声返って来たし。つまり見てたなこいつ。
僕らを見てるってことは全員が集まるように仕組んだのはコイツと見て良さそうだ。
他の人たちは自分たちで今日行こうと思ったようだけど、流れ的な何かを駄女神に掌握されたようだ。あまり良い気はしないなぁ。
「とりあえず、合流する?」
「そうだね、どうせ向う場所は一緒だし。おーいっ」
「……ん? うわっ!? なんでまたあんたに会わなきゃいけないのよ矢田!」
「そりゃこっちのセリフだシシリリア」
通りの反対側だったので一先ず横断歩道まで歩いた後、彼等に合流する。
尾道さんとシシリリアさん、そして斬星君とギオちゃんの四人だ。
取り合わせとしては珍しいけど、同じ世界に来た仲間としては……
「そう言えばこの世界選んだのってあとリックマンだけだっけ?」
「そうなの? 光来とか小玉君とか杙家さんとかは?」
「確かグーレイさんの話じゃ小玉君たちは別世界だったはずだよ。光来は……どこかな?」
「別に全員揃わなきゃいけねぇってわけじゃねーだろ。光来なんざほうっといていいじゃねぇか。リックマンのおっさんも連絡わからねぇし」
そうなんだよなぁ、連絡先、知らないんだよなぁ。
まぁこれだけの人数が揃っただけでも、いや、駄女神の事だし既に他のメンバーも揃えてたり、するのか?
「つか、これだけ女が揃うと姦しいな」
「「矢田は黙ってろ」」
「リーダー、シシリリアと朝臣が辛辣過ぎるんだが」
「ははは、自業自得だ、諦めな。なんつって」
あ、危な、軽口叩いたら今一瞬イラッとした顔したぞ矢田の奴。殴られたらかなわんから言葉は濁しとこう。




