後日談・その少女の冒険を、彼らは知らない
SIDE:ピピロ・バックラ
皆さん元気ですか?
僕は元気です。
正直、戻ってきた当初はあまりにも酷い環境に、やっぱり異世界に戻ろうかな? と思いもしました。
でも、ここが僕の世界なんです。
まずは訓練兵として所属していたエリエンルア王国ですが、僕は既に死亡扱いを受けていたので国に戻ることはしないでおきました。
なので、国々を回って自分に合った国を見付けだすことから始めました。
正直、いろんな国を見回るのは楽しいです。
皆さんと冒険していた時が懐かしく、また、一緒に旅がしたいと思えたりもしますが、ここには皆さんはいないのです。
それに、新しい仲間が増えました。
冒険者ギルドに所属して日々の路銀を稼ぎつつ、仲間たちと旅を続けています。
最初の方は同じ国に向かうパーティーに同行する形でしたが、その内僕と一緒に旅がしたいという子たちが出て来て、その子達と一緒に旅をする中で一人、また一人と増えていきました。
へんてこなパーティーですが、グーレイさんやバグさんのいるパーティーと比べると随分と普通なパーティーじゃないですかね?
ギルドランクもどんどん上がって来て、今では中堅と呼べる冒険者になる事が出来ました。
ふふ、なんだかズルしてる気分ですよ。
何しろ盾の英雄としての能力を持ったまま元の世界に戻っちゃいましたからね。
棺の盾は壊れた物の、盾の英雄の能力である盾自動修復の御蔭で今も現役で使わせて貰ってます。
あの、本当にこれ、返さなくていいんですか? 凄く使い勝手がいいし、今でもこれに勝る盾を見掛けないのですが。
あ、でも僕にとっての切り札的な盾は未だにアズセ式の盾ですね。対軍防御は意外と役に立ってますよ。
惜しむらくは、アズセさんに会って感謝を伝えられないことでしょうか?
盾の英雄、当初こそ嫌だなって思いましたけど、今では盾の英雄に選ばれて良かったって思います。
こちらの世界でも応用が効きますし、基本武器が無くとも盾さえ持ってれば皆を守り切れますから。
ああ。そうそう、忘れるところでした。
今回この異世界びでおれたぁ? を送らせて貰ったのは、グーレイさんたちに僕は元気でやってますってことを伝えることと、同時に送封しておいた宝玉についてお聞きしたいのです。
この世界では禁忌とされているこの宝玉なのですが、呪いの類は見当たらず、ただ能力上昇アイテムというだけのようなのです。
スキルオーブというものらしく、使用の意思があればスキルを覚える事が出来るとか。
ただ、この世界ではこの宝玉でスキルを覚えること自体が禁忌とされておりまして、せっかく手に入れたのに使えないのはもったいない、と神様経由でグーレイさんにお送りします。
とりあえずこちらでは使い道がないので、そちらで使っていただいて結構です。
どんなスキルを覚えたかは教えてくださいね。
こちらでは内包するスキルを確認もできないので鑑定もついでにお願いします。
……
…………
………………
「っと、こんな感じでいいですか?」
「うんうん、上出来。いやー、でも驚いたよー。オイラの世界にピピロ君居たなんてねー。ポモになったときはどうなる事かと思ったけど、うんうん、これはこれで怪我の功名って奴かな」
「どうでもいいですけど、そのキグルミはどうなのです?」
「ふふん、いいでしょ。ハムスターのキグルミだぞ。ポモになるよりは可愛いでしょ?」
「そのポモっていうのが何か分かりませんのでコメントできませんけど、この手紙を送るメリットはなんなのです?」
「ふふん、普通の人であればそこまで気にすることは無いんだけどね。グーレイさんたちと仲良く成れるきっかけ作りに丁度いいんだ。彼らと仲良くしておくと裁判とかでいろいろ有利になるしねー。ポモにした奴見付けだしてさ復讐するのに丁度いいんだよ」
真っ黒いです神様……
「けど、わざわざ現界して冒険者パーティーに入るって、どうなんです?」
「あはは、ソレはただの趣味だよー。よくいろんなパーティーに混じって一緒に冒険するんだ。ポモにされたのもその内の一環なんだよね」
それでも冒険者として現界しちゃうんだ。
よっぽど好きなんだなぁ冒険。
「とにかく、出来た手紙は責任を持ってグーレイさんたちに送るから。あと、そっちのスキルオーブは異世界用のお土産にしちゃおう。ふっふっふ、これは驚くぞー。何しろ特殊スキルだからねー」
滅多に手に入らない激レア系スキルが内包されたスキルオーブだ。これが土産だというのなら確かに印象は良くなるかもしれない。
グーレイさん達に取り入る切っ掛けとしては最高の手札になりそうだ。
でも、果たして上手く行くかなぁ?
なんだか途中でバグってえらいことになりそうな気がするぞ?