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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その演奏会で何が起こったかを彼女は知らない
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その初見の魔物を、僕は知りたくない

「うぅ……頭痛てぇ……」


「ああ、起きたのねカイン……」


 二日酔いらしいカインが起き上がると、底冷えするようなネッテの声が彼を迎えた。

 あん? っとカインがそちらを振り向くと、蟀谷こめかみに青筋浮かべたネッテ。

 今にも殺しに掛かって来そうな程の怒りに、カインの眼は一気に覚めた。


「ど、どうしたネッテ!?」


「どうした? 昨日のことを思い出してみなさい。自分の胸に手を当てて、ほら?」


 カインは自分の胸に言われるままに手を当てる。

 が、記憶が無いので思い当たる節もない。

 いや、そういえば、アルセの何かに腹を立てて辰真と表に向った事を思い出した。


 そして記憶を遡ったカイン。だんだんと昨日のことが思い出されていく。

 カインと辰真は殴り合った。

 その過程で辰真が番長になった。

 殴り合いではすまなくなり、酔っ払ったカインが剣を抜く。


 そして大乱闘。辰真が魔王化しなかったのは唯一の救いと言えた。

 周囲の飲み屋街に多大な被害を与え争う二人に気付いたネッテとクーフが止めに入った時には、既に向いの飲み屋が開放的にビフォーアフターされた後だった。

 ネッテは唖然とする飲み屋に平謝り。

 改修費は国が負担。ネッテは父に報告書だけを深夜に提出し、小言を言われる前に全員町から脱走したのだった。


 国王としてはリエラに交渉したかっただろうに、その交渉すらさせて貰えなくなったと嘆いただろう。

 全てはカインと辰真のせいである。

 次第、カインの顔が青くなっていく。


「そりゃあ、向こうの店主もタダで改修できるからもろ手を挙げて喜んでいたけど、国を救った英雄が町を破壊するって、あんたは何してんのよっ!」


「め、面目ねぇ……」


 それからネッテにより、カインと辰真は正座させられ小一時間怒られた。

 辰真の髪が赤から黒へと変化したので、十分反省しているのだろう。

 というか、テンションによって変化するのって凄く不便だよね。


「さて、他のクランやパーティーには途中で抜けさせて貰って悪い事をしたが、このままエンリカの故郷に向おうか」


 クーフが気持ちを入れ替えるように告げて、僕たちは歩きだす。

 でもだ。まだリエラとカインが二日酔い。葛餅は寝てるらしい。寝てる……のか? 鉱石が?

 まぁクーフとネフティアが動けるなら余程のことが無ければ問題は無いだろう。


 なんて思っていたのだけど……いきなりピンチです。

 目の前には鼻息を荒くした一匹の魔物。

 青いジーパン。女の子の顔柄プリントシャツ。肥満体形。額に赤い鉢巻、メガネを掛けた男でありました。

 こいつ、人間っぽい見た目ながらツッパリ同様魔物なんだって。


 ブッサイクな面して荒い息を吐きながら見つめる獲物は、アルセとネフティア。

 その舐めるような危ない視線に二人が珍しく怯えている。

 いや違う。コイツ、エンリカの娘、名前はまだ無いにまで同じ視線を向けてやがる!?


「しまった。こいつがいるの忘れてたわ」


「エンリカ? こいつはなんだ? 俺らもこっち方面何度か来たことあるけど初めて見たぞ?」


「こいつは幼女、幼い体躯の女の子がパーティーにいるとどこからともなく出現する最悪な魔物よ。幼女を見て興奮する程全能力が大幅にアップしていくの! その名は……ロリコーン」


 そのまんまかよっ!!?

 名前を呼ばれたからだろうか? ロリコーンは足を踏み鳴らし勢いを付けて行く。

 そして、アルセに向けて走り出した。意外と速い!?


「な、なんだな~っ」


「ウオルァッ!!」


 一直線にアルセに突撃して来たロリコーンに、辰真の拳が突き刺さる。

 まるでゴム毬のように跳ねるロリコーン。ごろごろ転がって体勢を立て直すと、ずれたメガネをかちゃりと直し、舌舐めずり。


 気色悪い。そう思ったのは僕だけじゃないはずだ。

 再び突撃して来るロリコーン。

 なんだな。とかうるさいよ!?


 当然迎撃する辰真。

 しかし、次の瞬間その腕を取り引き寄せ、辰真のバランスを崩すロリコーン。

 前のめりになった辰真の鳩尾に、ロリコーンの肘が突き刺さる。


「がはぁっ!?」


「いけないっ。ロリコーンが興奮しだしてる。早く倒さないと手に負えなくなるわ! あいつ障害が多いほど際限なく強くなるのッ!!」


 エンリカの言葉を聞いたバズ・オークとクーフが立ちふさがる。


「なんだなぁあああああッ!!」


 バズ・オークのナイトブローバ―を避け、打ち上げる。

 体勢を崩されたバズ・オークの顎に頭突き。

 一気に昏倒させたロリコーンは次なる強敵に挑みかかる。


 手に入れるべきロリ少女を守る最強の壁。

 巨大な柩を振り被るミイラに、ロリコーンは迷わず突撃した。


「その意気やよし!」


 振るわれる剛腕。

 ブチ当たる柩。だが……


「なんだなぁ――――っ!!」


 ロリコーンはクーフの一撃を耐えきった。

 全身の骨が折れただろうに、吹き飛ぶことなくその場で耐えきったのだ。

 そして血だらけになりながらクーフに飛び蹴りを見舞う。


「なんと!?」


 咄嗟に背後に倒れるクーフ。

 威力を殺しはしたものの、倒れた隙を突かれて突破されてしまう。


「カインッ!」


「クソが! 叫ばれると頭が痛ぇんだぞこのロリコン野郎ッ! 千進突牙斬」


「なんだなッ!」


 カインが特技を使った瞬間だった。

 ロリコーンは背中に手を回し何かを掴むと迷わず引き抜く。

 剣線が幾つも走った。


 カインがロリコーンの背後へと移動している。

 倒せたか。と誰もが息を呑む。

 だが、倒れたのはカインだった。


 ロリコーンは丸められたポスターを振り抜くと、つまらぬ者を切ったとばかりに背中に戻す。

 カインはいってぇとか呻いていたので致死性はないようだ。

 しかし、アルセへの防壁が無くなってしまった。

 アルセソードもクリスタルソードもない僕では太刀打ちできない、動けるのはネフティアとネッテ、そしてエンリカだけだ。リエラ? 二日酔いで眼を回している新人冒険者に期待することなんて一つもないよ。


 でもネフティアが参戦してしまうと襲われかねない。エンリカ、ネッテ、なんとかしてぇ!

 ロリコーン

  種族:偽人 クラス:ロリコーン

  装備:アニメ柄プリントTシャツ、強化ポスター、レトロたん人形

  種族スキル:幼女確認:自分の生息域に侵入した幼女のみを認識します。

      突進:幼女を見付けると一心不乱に突撃する。

      至高の興奮:幼女に至るまでに存在する艱難苦難が高い程全ステータスを継続上昇。

      幼女への執念:視線の先に幼女がいる場合、何度倒されても立ち上がる。連続くいしばり発動。

      パンツ、何色なんだな?:幼女にパンツの色を聞きます。魅了耐性が低い相手からはパンツの色を強制的に教えて貰えます。

      自分解放:衣服を脱ぎ去りありのままの姿を相手に見せる。

      鷹の眼:眼を鋭くして観察することで遠くの幼女も見逃しません。

      ロリータノータッチ:幼女には思わず抱きつきますがすぐ我に返ってそれ以上のことは恥ずかしくてできません。

 ドロップアイテム・レトロたん人形、光る棒、モエモエキュン

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