表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1809/1818

後日談・その三人の絆を、彼らは知らない

「くまっぴょろんじゃないか!?」


「チッ、あいつ一人じゃ駄目そうだ。手伝うぞ!」


「了解だ」


 突然現れた熊が最初に居た熊と闘い始めたので、冒険者たちは驚いて攻撃を止めていた。


「全員、後から来た熊は味方だ! 協力して魔物を討伐するぞ!」


「え? 仲間!? いや、でも」


「た、確かに守ってくれたっぽいが……」


「どっちがどっちだよ!?」


 わからないのか!? くまっぴょろんと魔物は全然違うだろ!


「オルァ!」


 よし、カリオンが相手の体勢を崩した!


「くまっぴょろん。手伝うぞ」


「がうぁ!?」


 驚くくまっぴょろん、おそらく私達が認識してきたってことに驚いたようだ。

 当然だ、ずっと共に暮らしていたお前の容姿を間違える訳ないだろ。


「はは、なんでくまっぴょろんだけ識別できんだろうな? そら、合わせろノヴァッ」


「任せろカリオン!」


 剣術だけなら鍛えているからな、合わせる位は簡単だ。

 悲鳴を上げる熊の魔物に、くまっぴょろんのベアクローが襲いかかる。

 よし、行けるぞ!


「あーっと、そっちが仲間でいいんだな。傷負った奴が魔物だ、全員ぶっ倒せ!」


 雄叫びと共に闘いに参加し始める冒険者たち。

 これ以上闘い続けるとくまっぴょろんが巻き添えで攻撃されそうだったので、カリオンと一緒にくまっぴょろん引きつれて一度撤退する。


「くまっぴょろん、私のことは、その、分かるかい?」


「グルァ」


 こくり、頷くくまっぴょろん。

 どうやらカリオンと同様、しばらくしてから記憶が蘇ってきたようだ。


「しかしカリオン、君は人類至上主義者だろう? いいのかい、くまっぴょろんは……」


「ああ、それに関しては安心してくれ。人類至上主義はもう止めた。この世界の現状はモザイク棒人間になってる間に体験したからな。人類至上主義が如何に破綻していたか、良くよく理解はできてしまったさ」


 本当に、毒気が抜かれたような顔で告げるカリオン。

 モザイク棒人間として過ごしていた時間が記憶に戻ってきたことで自分の人類至上主義が如何に世間とずれていたかを認識してしまったんだろう。

 人類至上主義者はその辺りを認識しようとしないんだが、彼はしっかりと認識してくれたようだ。

 御蔭で三人揃って普通に会話することができた。


「グアァ」


 申し訳なさそうなのはくまっぴょろんだ。

 彼は生粋の魔物だ。

 本来なら私達とは殺し合う間柄なのだが、くまっぴょろんとしての記憶が蘇ったことで、人という種に対する知識が増え、守る行動を行うようになったようだ。

 今回も、出てくるつもりはなかったが、負傷した冒険者を庇おうとする行為を見てしまったことでつい熊に襲いかかってしまったようだ。


「もう、二度と、二人とは会えないと思ってたんだ。本当に、無事で居てくれて良かったよくまっぴょろん」


「グルルゥ」


 しかし、くまっぴょろんは困ったように唸る。

 それもそのはず。彼は魔物だ。生活圏も森だし、人間の国に行けばたちまち危険な魔物として討伐依頼が出てしまう。だから、近づくこともできなかったそうだ。

 けど、意識があるのだろう? だったら…… 


「良ければ、私とパーティーを組んでくれまいか?」


「は?」

「ぐるぁ?」


 自身を指して、二人が驚く。


「いや、元とはいえ人類至上主義者だぞ、俺の顔は結構知られてるし、一部国からは国外追放処分だ」


「ガルァ」


 そしてくまっぴょろんも、自分は魔物だから無理だ、そう告げているようだった。でも……


「ずっと、一人だったのだ。二人が居なくなってから、ずっと一人アーデの大樹、その麓で待っていた。二人が無事戻るのを待ってたんだ。ここでまたサヨナラなんて。いつ誰が居なくなってるか、後で知らされるなんて、私は嫌だ」


「それは……」


「できれば、皆一緒に冒険がしたい。君たち二人こそが私にとっての仲間なんだ。パーティーを組んでくれないか?」


 二人は無言で考える。

 しばし、静寂が訪れる。


「そう、だな。こんな俺で良いって言うんなら……」


「ぐるるぁ」


 魔物だけど、それでもよければ。

 そう告げる二人に、私は手を差し出す。


「我ら三人、産まれし時は違えども……」


 私の手に、二人の手が重なる。

 ふふ、なんだよ、二人も乗り気じゃないか。

 ならもう、問題は無いよね。


 私達は再び集った。

 今回の闘い、功労者はくまっぴょろんだろう。

 その報酬は、彼が冒険者となることで手に入る。

 だから、結成しよう。

 今、この時より、私達三人は、仲間だ。

 この絆は、三人が死ぬその時まで……


「健やかなる時も、病める時も、共に分かち、共に歩むことをここに誓う。願わくば、同じ日、同じ時、同じ瞬間に息絶え、共に永遠にある事を求む。我らが命、燃え尽きるまで」


「はは、なんか、いいなそれ」


「がうぁ」


 はて、どこで聞いた言葉だろうか?

 なぜか脳裏を掠めたんだよなぁ。

 バグの残りがあったんだろうか? アメミルドって言葉と共に思い浮かんだんだが……

 まぁいっか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ