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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1803/1818

後日談・その異世界に戻る人物を、僕らは知らなかった

「そんじゃま、何度目かになるけど会議を始めよう」


 駄女神さんは不平を言いながら昨日、温泉に入ることなく去って行った。

 可哀想とは思わない、むしろ彼女の場合は自業自得ばっかだし。

 まぁ、とりあえず、悔しがりながら帰って行ったので、僕らはざまぁと言わせていただいた。


「さて、今回の会議についてはこの世界に残る組と元の世界に帰る組だ」


「あのー、別世界に着いて行きたい場合はどーするにゃ」


「帰る組だね。とりあえず座席もそう言った感じに別れてほしい。私側が帰る組、ガーランドさん側が残る組だ」


「あの、パッキー居ないんだけど?」


「あれ? 杙家さん気付いてなかったの? あのちっこいのならアーデの大樹に残ってたわよ」


 ちなみに、魔物組は皆残るらしくって、ゴールデンオカブもアーデの大樹近くに根を張るそうだ。


「信は、どうするの? やっぱりゴールドとこっちに残るの?」


「いや、帰るよ。どうしようもない僕だけど、やっぱりアニメやゲームのある世界の方が好きなんだ。美樹香たんは?」


「帰るに決まってんでしょ、受験生なのよ私は。あー、でも折角だから携帯のアドは交換してあげるわよ? 持ってんでしょ?」


「まぁ、持ってるけど……」


 と、出された携帯電話、というかスマートフォンに、朝臣さんが硬直する。


「え? 何ソレ? え? え? 携帯電話?」


 そっと自分の分を出してみる。

 あー、まさに携帯電話だ。

 古いタイプだね、いや、待って。折り畳み式でも、ない!?


「あ、あの、朝臣さん、バグさんが、その、最新式か聞いて来てますけど……」


「そりゃ、日本の最新式、でしょ? そうよね?」


「……」


 灼上さんと僕は、見えないけれど見つめ合った。

 えも言えない残念な気持が通じ合う。


「あー、美樹香たん。非常に言いにくいんだけど、僕と美樹香さんがいる日本、多分違う世界だ」


「それか年代が違うとバグさんが言ってますよ。朝臣さんの方が20年くらい前だって」


「……う、嘘でしょ?」


 そして灼上さんと朝臣さんの日本紹介合戦が始まる。

 大体は同じなんだけど……中国とかアメリカとかロシアとか国の名前が朝臣さんの所は微妙に違うようだ。忠国とかアミリカとかロソアとからしい。うん、異世界でした。


「な、何ソレ、じゃあ、私の世界戻っても、信とは会えないってこと?」


「そう、みたいだね」


「ん。安心して、信には私が付いて行く」


 そしてここで油を注ぐゴールドさん。

 勝ち誇った女の顔がそこにあった。


「じゅ、受験、いや、でも……あああぁぁっ」


 頭を抱えてフリーズしてしまった朝臣さん。

 可哀想だけど運命の選択は自分でしなきゃいけないから誰も何も言えなかった。


「陸斗、どうする?」


「まぁ、俺としてはこっちでの世界でも良いんだけど、一応消えたままってのもアレだし、あっちの世界に戻ろうと思うんだけど、どうかな檸檬」


「うん、お姉ちゃんに付き合う報告しなきゃだしね」


 こっちはこっちで修羅場の予感だ。小玉君大丈夫なのか? 最悪こっちに戻れるように神様に伝えとく? 駄女神とおっちょこちょいの新人が担当になると思うけど。


「異世界に残るべきか、元の世界に帰るべきか……帰ったところで……」


「私は帰ります、この世界に来た時はいろいろと大変でしたが、今の私なら、ブラック企業に尽くす意味などないとわかりましたから、元の世界で、人生を変えに行くつもりです」


 リックマンさんはまだ迷っているようだし、尾道さんは人生変える気満々だ。

 そして、ふてくされた顔ながら、光来君も帰るらしい、本人曰く、こんな面白くない世界になんて居られるかってことらしい。

 世界の場所は既に特定済みらしいから多分すぐに元の世界戻るみたいだ。


「僕も、帰るよ」


「英雄さん……帰ってしまわれるのですか?」


「ああ、やっぱり、僕の居場所はここじゃ無く、現代世界だって思うから。それで……ギオちゃん、よかったら、一緒に来ない?」


「え? で、でも、私、魔王ですし、その、元男、ですよ?」


「いろいろ、考えたんだけど、君と一緒に現代世界に戻れたら、いろんな場所に連れてってあげたいなって、思うんだ。良ければ、なんだけど……僕と一緒に、異世界に来てくれませんか?」


 それ、告白の言葉なの?

 バグ取れたらガチムチ魔王になると思うんだけど……


 ―― 面白そうだからギオちゃんの女体化バグは取ったあとスキルで入れておくね ――


 アルセがそう思うならいっか。好きにしてくれ斬星君。


「ピピロさんは、どーすんの? 私はまだ迷ってるんだけど、どっちの世界も微妙だから」


「僕は、戻るよシシリリアさん。僕の居る世界はもともと向こうですから」


 律儀だねぇ。別にこの世界残っても良いと思うよ、確か行き倒れてたんだよね。来る前。

 そんな世界に戻って大丈夫?


「あんたはどーすんの?」


「あン? ンなもん帰るに決まってんだろ。こっちの世界に居てどーすんだ。リーダーも帰るのに残ったってしゃーねーだろ。女を襲うにしたって衛兵共は殺しかかってくるしな。日本の方がまだ安全に遊べるぜ」


「相変わらずクズいわね」


「俺は俺のやりたいように生きてるだけだ。まだ迷ってるテメーに言われたくねぇぞシシリリア」


「ふん。あんたは平和な世界でいいわね。私の世界は殺伐としてんのよ。あー、そう考えたらこっちのがまだマシな気が……」


「あの、でしたら、日本に来られては?」


「へ?」


「折角帰れる世界が選べる状況なのですから、別の世界を選択に入れるのも一つの手ではないでしょうか?」


 まさかの尾道さんからのフォローでシシリリアさんが真剣に悩みだす。

 なるほど、そう言う考えもあるのか、じゃあこっちの世界もどーっすか。

 基本この世界と似てるけど平和ですぜ。

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