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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その演奏会で何が起こったかを彼女は知らない
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その旅立ちの日を、国は知らない

本日午後六時頃に現時点での人物紹介載せます。

なんか気が付いたら1万文字越えてた。たぶんスマホとかで見ると12~4ページくらいになるはず。

「おつかれー」


 『妖精の酒屋』亭にやってきた僕らは、貸切状態で乾杯をしていた。

 なんか見知らぬ人たちも一緒だけど、アレは天元の頂とか別パーティーの人だ。

 別のクランの人も混じっている。

 ドワーフも何人か混じっているけど、そこはまぁ貸切なので黙認されていた。


 普段来たことのないエルフ専門店なので、カインたち以外は物珍しそうにエルフ特産のお酒を飲んでいた。

 ドワーフ曰く上品すぎて合わないらしいけど、その点は女将さんがアルコールを樽で持ってきて飲ませていた。

 って、それワインとか以前の火が付く奴ですよ!? アルコール度数100ぐらいの危険物!? 悪意が見える。ドワーフに対する悪意が見えます。


 ドワーフたちはこぞって飲んで美味いとか言ってたけど。

 あれは種族特性だ。酒豪恐るべし。

 そんなドワーフ共は店の隅で飲んだくれていたので皆放置している。

 彼らは酒さえ飲めればどうでもいいらしいし。


 今回のメインはリエラだ。なにせ貴族の演奏会で最優秀賞を取ったのだから。

 いろいろとどこで覚えたとかあのピアノは何? とか聞かれていたが、聖女状態の彼女は既に記憶の彼方に消えているようなので、彼女には説明ができないようだ。


 エンリカは女将さんと会話中。既に二足歩行を始めた娘を抱きかかえながら……って、早いよエンリカさん!? 娘さん、なんで普通に歩いてるの?

 まだ一週間も経ってないよね?

 もう、ブヒブヒ言ってるんですけど!?


「凄いわねエンリカ。娘さん、もう立てるの?」


「オークだからでしょうね、直ぐ立ち上がっちゃって。授乳する時期なんて殆どなかったのよ。御蔭で張っちゃって。仕方ないから夫に……」


 エルフ同士だからだろうか、女将さんとエンリカが普通に友人みたいな会話をしている。

 というかバズ・オーク何してんの? 殺すよ?

 そんなバズ・オークはバズラックたちと飲んでいる。

 横にはエルフの騎士が私服でバズ・オークの翻訳をしてる。


 ゴブリン討伐の際になんか知り合った騎士団の人も何人か一緒に参加して来たのだ。

 一番ビックリなのはあのエリックさんだろう。

 騎士団長なのに普通に参加してるし。仕事大丈夫?


 そんな騎士団長様はアルセが興味深そうに飲もうとしているお酒から彼女を遠ざけようと無駄な努力をしている。

 幼い娘に飲ませられるか。と阻止しているその背後で、ネフティアが自然に歩み寄ってビールジョッキを掴む。


「コラそこっ! いくら無礼講でも未成年は飲むなっ」


 こてんと不思議そうに首を傾げるネフティア。

 次の瞬間、片手を腰に当ててビールジョッキを一気に飲み干す。

 ごくごくごくとあまりに速いその動きに、手を伸ばしたエリックさんが「あああああああ」と声にならない悲鳴を上げていた。


 そして、その隙をついてジョッキを掴むアルセ。

 気付いたエリックはこちらだけでも阻止しよう。とばかりに動くが、遅い。

 アルセがジョッキに口付け……はいそこまで。


 僕はジョッキとアルセの間に手を置いて防いだ。

 アルセがジョッキがそれ以上近づいて来なくなったことに気付いて僕にむっとした顔を向ける。

 ダメだよアルセ。幾ら魔物で年齢制限なんかないっていっても。お父さんが赦しません。


 アルセからジョッキを奪い取って机に置こうとしたその刹那。僕に気付いてないエリックさんがジョッキを奪い取る。

 バランスが崩れてジョッキが傾く。


「あ――――っ!?」


 そんなジョッキの中身はカインを直撃。


「おー?」


 しゅわしゅわと音を立てて濡れるカインを見てなんか楽しそうに声を上げるアルセ。

 対するカインはジョッキを傾け飲みかけの状態のまま固まりふるふると震えだす。

 エリックさんが不味い事をしたとばかりに焦っていたが、カインの怒りはアルセに向いた。


「アルセッ! テメェやりやがったな!」


 きゃっきゃと笑うアルセ。

 カインが何も出来ないと分かっているのだろう。

 だが、酒に酔ったカインは一味違った。


「尻だせアルセ。尻叩きでお前が我がままになる前に教育してやる!!」


「オルァ!」


 アルセに掴みかかろうとするカインに辰真が止めに入る。

 さすが護衛拳闘士。

 おお、乱闘だ。

 理性はあったようで表でろとか、カインと辰真、あと周囲の取り巻きがおおやれーとばかりに外に出て行った。


 こんだけ人が集まるとなんというか、凄いな。

 アルセと二人、僕らは酒に呑まれていく人々を見守り続けた。

 酒は飲んでも呑まれるな。

 その教訓はこちらでも有効のようだ。




 何が起こったのかは僕の口からはとても言えない。

 ただ、誰に知られることもなく、その日の深夜、僕らは急いで国を出発する事になった。

 酔っていなかったネッテとクーフ、エンリカ、そして葛餅の活躍で、僕らはその日、仲間全員を国の外へ連れ去り、森の深い場所で野宿を行ったのだった。

 ……お尋ねモノになってないことを切に願うよ。

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