表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その演奏会で何が起こったかを彼女は知らない
173/1818

その表彰の最優秀パーティーを、民衆は知らなかった

ついにカインたちのパーティー名が明らかにw

「それでは、これより表彰式をはじめます。国王陛下のおなぁり!」


 司会者の言葉で護衛兵に囲まれた国王様が現れる。

 なんか人の良さそうなご老人だ。

 髭やら眉毛やらで顔が全て隠されているが、気の良さそうなお爺さんに見える。


 そんな国王様は片手を上げながら皆の声援に応えている。

 民衆への人気もかなりあるようだ。

 珍しいな。こういう王国で国王様がわざわざこんな場に姿を現すのもだけど、人気絶大っていうのも。


 暗殺の一つや二つ起こるんじゃ? とやきもきしてたのに。

 というか、こういう大会ってだいたいそういう横槍が来るのがセオリーだと思うんだけど、いないなぁ。

 なんか盗人といった感じの厳ついおっさんとかヤバい目をした男もいるにはいるんだけど、皆国王出現を拍手しながら見ている。

 どれだけ人気あるのこの国王は?


「まずはゴブリン討伐を指揮した王国軍の部隊長から表彰させていただきます。エリック・ガナディッシュ。ゴブリン討伐部隊隊長、前へ!」


 エリックさんは第一部隊としてゴブリン討伐に向った部隊の騎士団長らしい。

 カインたちと合流してからはゴブリンの巣を暴き、内部に巣くっていたメスゴブリンと子供を掃討、囚われていた女性たちを救いだしたのだとか。

 また、第一部隊に殆ど損害なく帰還させたという王国の平和に貢献した栄誉を表彰されていた。

 そして国王の口から最後に告げられたのは、臨時編成の騎士団長ではなく正式な騎士団長への昇格だった。


 僕らとしては、え? それだけ? みたいな感じなんだけど、エリックさんはむしろ栄光ここに極まれりといった顔で涙に濡れていた。

 それだけ栄誉なことなのだということは伝わったんだけど、正直拍子抜けだ。

 まぁ最初の表彰だしこのくらいでいいのかもしれない。


 それから第三部隊を指揮していた若い騎士団長も精鋭騎士団に入隊出来ることになって喜んでいた。どうも人数合わせの第三部隊でくじ引きして彼が騎士団長になったらしい。

 責任がどうこうの押し付け合いだったらしいのだが、むしろ栄光を勝ち取ったということで、第三部隊の騎士たちが凄く悔しがっていた。自分らで彼を押し上げた手前文句は言えないんだけどね。


 次に表彰されたのは第二部隊で生き残った副団長のおっさん。お兄さんと呼べる年ではないのでおっさんでいいだろう。

 この人の功績は殆どないんだけど、一応王国の危機に『天元の頂』と駆け付け南門で奮戦したということで多少なりとも褒賞を受けていた。


 そして、各門で奮戦した防衛部隊の団長たちが部隊代表として表彰されていく。

 ただ、東門の騎士団長は折角の褒賞を辞退してしまっていた。

 曰く、自分たちはただ呆然と戦女神を見つめていただけだからというよくわからない理由だった。

 逆にアルセやレディースの功績までちゃっかり自分の報酬に変えたのは西門を守っていた騎士団長。


 レッドオークを討伐したということで盛大な拍手を貰っていた。

 すぐばれるのに、そんなに目立っていいのかおっさん。

 レディースリーダーを見ると、呆れた顔をしていたので、報酬横どりで全面戦争にはならなそうだ。よかった。今ここでレディースが暴れ出したらこの国終わってただろうしね。


 騎士団の褒賞が終わると、次に受け取るのは冒険者たち。

 まずは小さな冒険者パーティーからパーティー名を告げられ、代表者が表彰台へと上がって行く。

 滅多に会う事のない国王の前に向い、しかも民衆に見られながら表彰を受けるため、殆どの冒険者ががっちがちに固まっていた。


 むしろ両手両足そろって前に歩く姿が普通に見えるくらいの緊張である。

 皆最初は笑っていたけど、最後の方ではむしろ普通に歩く堂々とした姿の冒険者に賞賛すら送り出していた。


 『天元の頂』クラン長、バズラックが壇上へと上がる。

 粗野ないでたちのバズラックだが、緊張した顔をしているのを見ると、町娘の方から可愛いと声が上がって来る。

 正気ですかお嬢さん?


 『天元の頂』は確かにベテラン一歩手前のクランだ。

 実力はそこそこだが上位陣には食い込めていない。

 別に燻ぶっているわけではなく、未だ発展途上のクランであった。

 そんなクランも、ついに日の目を見ることになったのだ。


 この『天元の頂』が中堅冒険者勢では一番最後の表彰ということもあり、皆からの注目度も自然高くなる。

 何せ南門の戦場に一番に駆け付けたのが彼らのパーティーで、敗走した第二部隊の副隊長を無事生還させた功績があるのだ。

 オーガも倒していた姿が目撃されており、褒賞金額や国王からの賛辞が先程までの表彰から一気に跳ね上がる華美があった。

 司会者の説明にも一層熱が込められていた。あの人話が上手いな。


 そして上位冒険者勢の表彰。

 といっても第一部隊を立て直して死者を極力ださなかったという表彰が数名続き、今のところ盛大に賛辞されたのが中堅のバズラックだけということもあり、民衆からは上位冒険者って意外と普通? みたいな意識を持たれ始めていた。


 そこへ、『赤き太陽の絆』の名が呼ばれる。アレン・ボルダートが壇上に上がる。

 今、一番勢いのあるクランだ。

 最大勢力はグラスホッパーズに譲るが名声の上がり具合は彼らに軍配が上がる。

 そのせいもあって民衆から盛大な声援が上がった。

 なんでもつい先日国の近くを巣にしていたらしいドラゴンを討伐したクランらしく、国民の間でも有名なのだそうだ。


 そして『戦乙女の花園』『グラスホッパーズ』の表彰が始まる。

 彼ら三つのクランはエリックと同じくゴブリンの巣穴を潰したという名誉ある表彰である。

 当然ながら民衆もその功績に声援を送る。


 本来ならここで終わりのはずだった。

 有名なクランが出尽くして、民衆たちもこれで終わりか。そんな空気になっていた。

 だが、司会者が告げる。


「最後に、今回の最優秀功労者パーティー『アルセ姫護衛騎士団』全員壇上へ!」


 アルセ姫護衛騎士団って、どこの騎士団!?

 民衆がざわめく。聞いたこともないパーティー名に戸惑いの声が上がった。

 派閥として創られたクラン所属のパーティーではなく個人のパーティーが最優秀功労者として名をあげたのだ驚かずには居られないのだろう。

 そして、誰だよこのパーティー名登録したの!? 普通にアルセ中心になってるよ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ