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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その魔王の脅威を僕ら以外知らない
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その魔王たちの激闘を、彼らは知らない

 まさか、総長を持ってしてもゴブリンキングには敵わないのか!?

 突き出された拳は確かに辰真の頬を捉えていた。

 しかし、吹き飛ばない。


 ニヤリと笑むゴブりんに、辰真はただギロリと視線を向ける。

 何かおかしい。ゴブりんが気付いた時には、その顔面に辰真の拳が突き刺さっていた。

 「ゴブゥ」と呻きを洩らし後ろに二歩、三歩とよろけるゴブりん。


 血が滴る鼻を確認しながら辰真を睨みつける。

 辰真は、ペッと血混じりの唾を吐きだす。さすがに威力を殺しきれなかったのかもしれない。

 再び互いに睨み合うと、すぐさま激闘を再開した。


 拳と拳が、蹴りと蹴りが交差する。かち合う度に周囲に衝撃波が飛んで行き、地面が抉れていく。

 もはや、皆が闘いを忘れて見入っていた。

 彼らの闘いこそが戦局を、否。この戦争の勝敗を決定するのだと、誰もが信じて疑わない。

 事実それは確定していた。

 ゴブリン達にとっても王が敗北すれば烏合の衆と化すのだ。ここまで増えたのはゴブリンキングの御蔭であるとも言える。


 つまり、僕らはゴブリンキングを倒せば勝ち。ゴブリン達は辰真を倒せば勝ち。

 そして彼らを倒せるのもまた、辰真かゴブリンキングしかいないのだ。

 ……本当に?


 二人の闘いはほぼ拮抗している。

 おそらくダメージが積み重なり、明らかな失態を犯した方が負ける。

 つまり、今しばらくはこうして闘い続けるのだ。

 ならば、その横合いから、同じように闘える誰かが横やりを入れれば?

 そっちの陣営こそが勝利する。


 ゴブリン達からすれば、次に強いのはゴブリンマザー。

 しかしそいつは少し遠くで死亡しているようだ。

 ツッパリやリエラが頑張ったのだろう。彼らの御蔭で横槍の心配はない。

 ならこちらは? おそらくネフティアがそれに類するだろう。

 けど、彼女は気絶中だ。

 武器はあるけど僕じゃ持てない。そう、ネフティアじゃなければ、僕なら参戦はできるのに、武器を振れない。倒せる武器があるのに、これ程口惜しいことはない。


「ゴブァ!!」


「オルァ!!」


 クロスカウンターの如く互いの拳が相手の頬を穿つ。

 その瞬間、僕は見た。

 辰真がワザと首を捻って拳が当る瞬間威力を殺しているのを。

 パンチ殺し。ボクサーが使う技術の一つらしいけど、タイミング良く首を捻る事で相手の拳の威力を殺す技だそうだ。


 先程のも、これを使ったのだろう。

 結果、辰真の拳は完全にゴブりんを捉え、ゴブりんの攻撃は当ったのに威力を殺されていた。

 吹き飛ぶゴブりん。総長と化した辰真の拳の威力を証明するかのようにゴブリンの集団を巻き込み地面を転がって行く。

 ゴブりんが激突したオーガはその衝撃で死んでいた。


 だが、そのおかげでゴブりんへの追加ダメージは相殺されたようだ。

 血を拭いながら立ち上がったゴブりんは、ゆっくりと歩いて元の位置へと戻る。

 第三ラウンドは、直ぐに始まった。


 連撃の合間にゴブりんの拳が辰真の頬を捉える。

 またもパンチ殺し。のはずが、タイミングを合わされたように拳が直撃した。

 今度は辰真が吹き飛んで行く。


「「「「「オルァッ!!」」」」」


 飛ばされた場所には五人のツッパリ。

 起き上がった彼らは満身創痍の身体を引きずり集まると、飛んできた辰真を自分たちの身体で受け止め支え切る。


「ドルァ!?」


 お、おまえら!?


「「「「「オルァ!!」」」」」


 総長、後ろは任せてくださいっ。


 そんな声が聞こえた気がした。

 辰真は感動にむせび泣きそうになりながら、コクリと頷くに留め、ゴブりんの待つ戦場へと舞い戻る。

 一進一退の攻防だ。誰も眼が離せない。

 そう、誰も、彼らに注目している。


 その間に、僕はソレ・・を手にしながらネフティアの場所へとやってくる。

 確かに、ネフティアは強い。それは重量のある武器のせいでもある。

 それさえ使えれば、僕らは勝てるんだ。使えさえすれば。

 これは一種の賭けだ。でも、僕は信じる。きっと、やってくれると、彼ならばやれると!


 準備を整え、僕もまた、戦場へと向う。

 誰も彼もが注目する中、辰真とゴブりんの闘いもまた、佳境へと入っていた。

 互いに殴り合い過ぎたのか、肩で息をしながら相手を睨んでいる。

 何度も吹き飛んでいた。

 ゴブりんは仲間を犠牲に辰真は仲間に支えられ、何度も何度も拳を、蹴りを放ちあう。


 種を守るために侵略する。仲間を守るために迎撃する。

 立場は違えど譲れぬ何かのために二人の漢が闘っている。

 その闘いは、神聖なモノのようだった。

 誰かが壊して良いモノじゃない。


 でも、僕にだって、譲れないモノがある。

 守りたい物があるんだ。

 たとえ卑怯だと言われても!!


 僕は二人に近づきポシェットに手を入れる。

 ゴブりんの攻撃を受けた辰真が吹き飛ぶその刹那、僕はポシェットから取り出した。

 ギュイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!


 武骨な工具が唸りを上げる。

 突如現れたそれに驚くゴブりん。咄嗟に避ける。

 出現した工具は僕の腕では持ち上げられない。取り出された瞬間、真上から真下に落下するだけだ。もしも、これで引き裂くことが出来れば儲けもの。結局躱されたけど。


 しかし、工具と一緒に出現し、僕の手に装備された・・・・・・・・・葛餅が逃がさない。

 チェーンソウを装備した葛餅が僕の腕から身体を伸ばし追撃を開始する。

 距離を一気に詰め、慌てるゴブりんの首へとチェーンソウが襲いかかった。


 さすがは王だったのだろう。

 両腕で受け止めようと努力して、でも葛餅は容赦しなかった。

 突き出された両腕ごとゴブリンキングを伐採する。


 そこへ、ようやく到着したゴブリン討伐組。

 カインとネッテ、クーフが慌てた顔でやってきたのは、丁度ゴブりんが葛餅により討たれたところだった。

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