その矢の威力の理由を、僕らは知らない
「リエラぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
叫んだのは、果たして誰だっただろう?
僕だったか、エンリカだったか。とりあえず他の奴は喋らないのでどっちかか両方だと思う。
認識するなり即座に矢を射るエンリカ。
さらにバズ・オークが突撃する。
青いゴブリンはリエラの喉を掴みあげたまま、矢に気付くと空いた腕で掴み取る。
ベキリと圧し折った。
第二射。
わずらわしいとでもいうように払いのけられる。
矢ではダメージすら与えられない。
それに気付いたエンリカは精霊魔法を唱える。
ノームの一撃。土で出来た柱がゴブリンの真下から飛び出す。
が、ゴブリンは気にすることなくこれを踏み壊す。
まるで意に介していないゴブリンに、ついにバズ・オークが届いた。
ブゥア! とアルセソードで斬り上げリエラを持つ腕を……斬れない!?
まるで鋼に阻まれるように。バズ・オークの斬撃が止められていた。
あり得ない。
そんな思いが僕の胸に去来した。
ゴブリンはリエラを振り上げ、バズ・オークへと投げ捨てる。
咄嗟に受けるバズ・オーク。
その威力で彼ごと吹き飛んだ。
地面を滑走してバズ・オークはなんとかリエラを受け止める。
代わりに突出するのはネフティア。
起動したチェーンソウが唸りを上げる。
さすがにこの武器には脅威を覚えたのだろうか? 青いゴブリンは慌てて腰元の剣を引き抜く。
チュイィィィンと火花が迸る。
切れてない!? オリハルコン製の武器と対等!?
ゴブリンの強さに舌を巻きつつ、僕は魔物図鑑に登録する。
何か弱点でもあれば……
ゴブりん
種族:グリーンスキン クラス:魔王
装備:魔剣コルトワージュ、マイネフランアーマー、覇道の冠
種族スキル:威嚇・極
魔王闘気
咆哮・極致
ゴブの一撃
臭い息
絶倫
知能の芽生え
超回復Lv1
ゴブリンキング、キタ――――――――――――――――――ッ!!
っていうか名前がゴブりんって。ゴブリンのゴブりんさんですか!?
名前でいじる以外の弱点も見当たらない。
というか、総長並みに強過ぎる。こんなの今のメンツじゃ勝てないぞ!?
せめてクーフか総長を……
と、辺りを見回せば、壊滅している魔法師団と思しき場所に辰真が横たわっていた。
気絶しているらしい。
番長になってるけど、それじゃだめだ。あいつと戦うにはもう一段力が足りない。
何かないか? 何か、せめて少しでもダメージを与えてネフティアの助けになる……あ!
僕は思い出したその能力を確認するために、もう一度彼女のスキルを見る。
エンリカ・エル・ぱにゃぱ
種族:エルフ クラス:弓使い
状態:妊娠中
装備:ミスリルの弓、若草色のローブ、エルフの普段着、木の矢×21、矢筒
スキル:集中
乙女の咆哮
渾身の右ストレート
ドリアードヒーリング
ウンディーネヒール
ノームの一撃
チェイサーアロー
ストライクアロー
最後の一矢
常時スキル:豚・偽人語理解
魅了耐性・大
命中率補正・中
束縛する女の執念
討ち滅ぼす女の妄執
種族スキル:精霊魔法Lv3
精霊視
森の民
……ぎゃあああああああああああああああああ!!?
なんかまた増えてる。ヤバそうなスキルが増えてる!?
乙女の咆哮とストレートはセレディのせいだろう。
というかなんだ、討ち滅ぼす女の妄執って!? ヤバい匂いしか致しません。
偽人の言葉も理解出来るようになってるし。
というか、また妊娠しとる。
ま、まぁいい。僕が確認したかったのはそれじゃない。
そう、このスキルだ。間違いない。クリティカル率上昇、命中率上昇の効果がついてる。
僕はスキルを確認すると直ぐにエンリカの背後に向い、矢筒から20本の矢を取りだす。
それに気付かずエンリカは残された1本の矢を弓に番えた。
「あ、あれ?」
何かが変わった。それに気付いたエンリカだが、即座に意識を集中させてゴブりん向けて撃ち放つ。
速い。そしてブレが無い。
おそらく、今まででで一番良い一撃だったのだろう。
エンリカが珍しく「いっけぇぇぇ」とか吼えていた。
果たして矢は……
圧し折ろうとしたゴブりんの腕を掻い潜り、ゴブりんの目に突き立った。
まさに急所へのクリティカルヒット。
狙って行われたとしか思えない一撃に、エンリカ自身驚きを隠せないでいた。
背後を振りかえるエンリカ。そこには20本の矢を持ったアルセの姿。
「なんでアルセちゃんが矢を持って……そうか、私のスキル、最後の一矢!?」
気付いた後は楽だった。
一本撃つごとに矢筒に矢を入れて番え、放つ。
その一撃が必ずゴブりんへと突き立つ。
あり得ない軌道を描いて腕を掻い潜り、突き刺さった矢すらあった。
その合間を縫って、ネフティアがチェーンソウで薙ぎ払う。
浅く裂かれたゴブりんの胴。しかし、直ぐに塞がってしまう。
ダメだ。まだあいつを倒せる状況にならない。




