表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その魔王の脅威を僕ら以外知らない
162/1818

AE(アナザーエピソード)・リエラたちの奮戦を僕は知らない

「ドルァッ!!」


「GAAAAAAッ」


 ゴブリンマザーの拳と辰真の拳が激突する。

 体格差をモノともしない辰真だが、力は拮抗しているらしい。

 間違いなく、強い。


 ゴブリンマザーは相手が手を抜けないと知ると、背中から棍棒を取りだした。

 振るわれた攻撃を、さすがに躱す辰真。

 剛腕から繰り出された一撃は、おそらく辰真でも喰らった瞬間瀕死になる威力だろう。


「ゴルァ!!」


 真・メンチ怪光線が光る。

 ゴブリンマザーはその巨体からは想像もつかない俊敏さでこれを躱すと、足払いのように棍棒を水平に薙いで来る。

 舌打ちしながら飛び上がる辰真。

 その前方から迫る巨大な拳に、さらに舌打ちしながらポンパドールを突き出す。

 放電するポンパドールが唸りを上げる。が、足場のない辰真は拳の威力を相殺しきれず吹っ飛ばされた。


 ゴブリンの群れに激突し、数匹を屠って威力を殺すと、頭部から流れて来た血が目に入る前に腕で拭き取り起き上がる。

 ぺっと口の中に溢れた血を吐きだす。

 どうやら口内を切ったらしい。


「メリエさん、援護を!」


「任せなさい! 私の活躍、後でカイン様に知らせてよ!!」


 辰真が戦線離脱した間にゴブリンマザーが他の人に危害を加えないよう、リエラとメリエがフォローに入る。


「ラ・グラ!」


 メリエの雷撃。ゴブリンマザーがいらだたしげに吼える。

 そこへリエラが走り込む。


「はぁぁっ!!」


 気合い一閃、ゴールドダガーの一撃が浅く胴を薙ぐ。

 許さんとばかりに反撃の拳がリエラの頭上から振り下ろされた。

 それに反応するのは葛餅。アルセソードでゴブリンマザーの拳をいなす。

 しかし、浅い傷を付けただけでそれ以上食いこまない。

 剣がヤバいと気付いたのか、葛餅は軟体化して剣を自分に取り込み武器破壊を逃れる。


「おるぁあああああああああああああああ!!」


 威嚇・激で相手のヘイトを自分に集める辰真。ゴブリンマザーが辰真に注目すると、辰真は即座に走り出す。

 邪魔をしようとするゴブリンが出て来たが、直ぐにフォローに入ったツッパリたちがこれらを撃退、漢の花道を開けて行く。


 総長、任せた。あんたがやってくれ。

 そんな期待を一身に受け、辰真は出来た道を一直線に駆け抜ける。

 拳を握り、ゴブリンマザーのみに集中する。


「ドルァッ!!」


「GAAAッ!!」


 棍棒を振り上げるゴブリンマザー。拳を引き絞る辰真。


「シェ・ズルガ!」


 メリエの魔法が一瞬早く決まった。

 体勢を崩されたゴブリンマザーに辰真が接敵。膨れた腹に、渾身の爆裂アッパーカット。

 あり得ない程の爆音が響いた。


 やった! その場の皆がそう思った。

 次の瞬間、ゴブリンマザーの棍棒が振り下ろされる。

 技後硬直の辰真の頭蓋に、剛腕の一撃が直撃した。


「辰真――――っ!?」


「いかん!? そこの四人、援軍、中央ギルドと別の門で闘っている皆に援軍を要請してくれ。ここがメインだ、急げ!!」


 騎士団長がいち早く我に返り兵士四人に指示を飛ばす。

 ゴブリンマザーは確かに大ダメージを受けたらしいが、それでもまだ闘えるようだ。

 総長の仇とばかりにツッパリたちがゴブリンマザーを引きうける。

 リエラは慌ててツッパリの一人に救出された辰真に駆け寄ると、回復魔弾を打ち込む。

 だが、さすがに意識まで回復させることは出来なかった。


「な、なんとか生還させたけど……このままじゃ……」


「オルァ!!」


 ツッパリは、辰真をリエラに任せると、自分もゴブリンマザーに対峙する。

 番長になっていた辰真ですら敵わない相手に、ツッパリたちだけで勝てるはずはない。

 でも、彼らは5人一組一丸となりゴブリンマザーに対応していた。

 残りのツッパリたちも援護したそうだったが、騎士団たちのフォローで手一杯だ。


「騎士団長さん、辰真を後方に!」


「君はどうする気だ!?」


「魔銃を使ってツッパリたちのフォローをします。誰も、死なせないッ!」


 ぱんっと自分の頬を張ってリエラは気合いを入れた。

 今は、誰も頼れる人が居ないのだ。

 カインもネッテもクーフも辰真もいない。そればかりかあの透明人間も。今、ここに居るのはリエラと葛餅だけなのだ。


「くずもち、私に力を貸して。皆を助けよう」


 リエラは再び戦場に向って行く。

 メリエを見付けて合流すると、メリエは辛そうな顔でゴブリンマザーに視線を向けていた。


「強いわねゴブリンマザー。もう死に体なのに……」


 剛腕の威力は明らかに落ちている。腹に痛みがあるのか、時折体勢が崩れることがある。

 でも、薙ぎ払う。

 五体のツッパリは皆血塗れになりながら必死に闘う。

 まさに奮戦。総長のためにと彼らは死力を尽くして闘っていた。


 このままいけば倒せる。

 きっと何とかなる。

 皆期待していた。

 奴が、来るまでは……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ