表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その魔王の脅威を僕ら以外知らない
159/1818

その援軍の戦力を、彼らは知らない

「おー」


 アルセが感心の声を上げる。

 何に対する感心かって? ゴブリン達の援軍に対するまた来たよーとかいう感心だよたぶん。

 目の前には第三弾とでもいうべきゴブリンの群れが近づいていた。

 一弾二弾はアルセの活躍で楽に倒せたものの、そろそろそれも難しい。

 なにせ……


「レッドオーガ……」


 そう、第三弾である今回のゴブリン共を率いていたのは大鬼の中でも変わり種の赤い皮膚を持ったオーガである。

 その偉丈夫な姿にアルセが感心の声をだしたのだ。


 しっかし、アレはないわ。

 あれは無謀ですわ。

 アルセのマーブルアイヴィ引きちぎってるし。


 僕はアルセとその光景を呆然と見守っていた。

 第三弾であるゴブリン達もマーブルアイヴィの拘束で騎士団の経験値になる予定だったのに、レッドオーガの腕力はマーブルアイヴィを引きちぎる程に凶悪でした。

 騎士団に絶望の色が混じる。


 怯える者多数なのに一人も脱落せずに、へっぴり腰ながらも武器を構える騎士団。

 自分たちが王国を守る剣だと叱咤して、迫る絶望に対峙する。

 いや……これ無理ゲーじゃないですかね?


 マーブルアイヴィを振り切ったレッドオーガは巨大な口を大きく開き、咆哮。

 あまりの一撃に城門がびりびりと震える。

 番長バリの威嚇でした。

 騎士団はこれで殆ど機能不全に陥った。


 恐慌状態ながらも誰も逃げ出さない騎士団には脱帽ものだが、剣を支えになんとか立っていられているのは西門を守る総大将の騎士団長だけである。

 あ、これ全滅フラグ立ってる。


 何かしようにもアルセソードでも無理っぽいからクリスタルソードが一回使えるだけか……

 詰んでるな。

 そう、完全に詰んでいた。

 僕たち人間には、レッドオーガを倒すだけの戦力がここに居ない。

 結果は、コイツ一人を城門内に通すことになり、国が滅ぶ。

 それが今回の敗戦の結末だ。


 そう、人間たちは、レッドオーガに敗北した。

 ……人間たちだけ、だったなら。

 それは、僕の予想外の結果ともいえた。

 仲間と呼べる程の交友関係にもない存在。

 でも、知り合いの仲間は仲間だった。

 ゴボル平原の向こうから彼女等は突如やってきた。


「ウルァッ!!」


 突如、騎士団長に向けて拳を振り上げたレッドオーガの首へと巻きつくチェーン。

 大したダメージにはなっていないようだが、レッドオーガの注意を引きつけるには十分だった。

 身動きの取れないゴブリン達を駆逐しつつ、僕らの援軍が現れた。

 その援軍の正体に、騎士団長は目を見開いて驚く。


「どう、なっている? レディースが、助けに来たのか!?」


 そう、やってきたのはレディースの一団だった。

 レディースリーダーが巻きつけたチェーンをレッドオーガが引きちぎる。

 怒りの咆哮を叩きつけるが、レディース達は不敵に微笑みレッドオーガを挑発し始めた。

 さらにアルセに視線を向けてウインクする。


 まるで、ツッパリたちの援軍としてアタシらも手伝ってやるよ。とでも言われた気分だ。

 ありがたいことこの上ない。

 思わずアルセを使ってありがとうとジェスチャーしておいた程に感謝した。


「ウルァッ!!」


「GAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」


 レディースリーダーは左手を顔の前に持ってくると、掛かってきなとばかりにジェスチャーを行う。挑発されたことに気付いたレッドオーガが吼え猛り、走り出した。

 渾身の一撃が大地を叩き割る。

 風に髪を流しながら、レディースリーダーは華麗に躱してみせた。

 さらにヨーヨーみたいな物を投げつけレッドオーガの片目を潰す。

 ギャリギャリと不可解な音を響かせ回転するヨーヨーっぽい何か。


 レッドオーガが悲鳴を上げた。

 すっご。あの巨体相手に優位に闘ってるぞ。

 すごいぞレディースリーダー。頑張れレディースリーダー。

 って、メンチ怪光線レディースもできるのか!?


「GAAAAAAAAAAAAッ」


「ウラッ」


 再び振るわれた剛腕を飛び越え、むしろ足場にして走り寄ったレディースリーダーは右手で掬うようにレッドオーガの右目に手の甲を擦りつける。

 三筋の線が走った。


 カミソリのような刃が握られていた。

 これで切り裂かれたレッドオーガは両目を潰され絶叫を迸らせる。

 そこへレディース達の私刑が始まった。


 無数のレディースが集まってのタコ殴りである。

 女って怖い。そう思える程に容赦ないリンチでした。

 最後にはレッドオーガの腕だけが真上に伸びて、まるで助けてくれと言っているようにすら見えてしまったから不思議である。


「これは……レディースが、王国を守ったのか……我等を、救った? なぜ……」


 あのレッドオーガを哀れと思うとか、僕のレディースへの恐怖は鰻登りです。

 そんな僕とアルセのもとへ、レディースリーダーがやって来る。

 「ウラ」と言われた僕ら。どうもこっちは私らに任せな。と言ってくれたようだ。

 とりあえず西門の確保は出来たみたいだし、他の門の方が無事か見に行くか。


 ちなみに、騎士団は完全に放心していたけど、危険はなさそうだったので放置の方向で。

 助けてくれた上にレッドオーガを叩き潰したレディース達に敵対しようなど、騎士団たちも思うまい。

 レッドオーガ

  種族:グリーンスキン クラス:上級鬼族オーガ

 ・怪力自慢の鬼族。自分の力に酔いしれ凶暴化した個体が多い。

  魔物ではなく魔族と認識されており、一部地域では人間に混じって暮らしている者もいる。

  強さを求める傾向が強く、知識はあるが脳筋になっている。

  突然変異体で、通常の三倍の強さを持っている気がする。

  自動HP回復能力を持っているので下手な傷はすぐ直る。

 ドロップアイテム・固い筋肉、腰蓑、プロテイン、オーガの牙

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ