表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その魔王の脅威を僕ら以外知らない
157/1818

AE(アナザーエピソード)・フレッシュゾンビの大暴れを僕は知らない

 ネフティアは東門にやってきた。

 手にはいつものように愛用のオリハルコンのチェーンソウ。

 決して壊れることのない記憶合金のようなそのチェーンソウは、見るからに不気味な音を立てて回転している。

 ゴブリン相手に激戦をしていた騎士団は、その少女を見て思わず叫んでいた。


「嬢ちゃん、ここは危険だッ! 家に戻って鍵をしっかりかけろ!!」


 彼は必死にゴブリンと死闘を繰り広げており、少女が歩いてくる姿を確認しただけだったからこそ出た言葉だった。

 しかし、次の瞬間手にしたチェーンソウという物騒な工具を見付け、一瞬我を忘れる。


「ビリー、ぼさっとすんなっ。死にてぇのか!!」


 同僚の声に思わず我に返ったビリーは襲いかかってきたゴブリンの剣をなんとかいなす。

 ゴブリンを屠り、ようやく視線を上げた時には、少女は既に戦場に駆けていたところだった。

 危ない。そう叫んだのは誰だっただろう?


 騎士団とゴブリンの群れに紛れ込んだ少女は直ぐにビリーの視界から消えてしまたった。

 なんてことだ。とビリーは青くなる。

 年端もいかない少女がこんな戦場に紛れこんだのだ。

 まず確実に死ぬ。殺されてしまう。

 民間人を守れない。それは騎士団の名折れであった。


 畜生っ。と下唇を噛み、近づいてきたゴブリンの首を刎ねる。その刹那。

 血飛沫が舞った。

 ゴブリン達の密集する場所で。突然ゴブリン達が血飛沫を上げ始めたのである。

 皆は自分のことに必死で気付いていない。

 でも、ビリーだけは気付いてしまった。

 ゴブリン達の隙間から、一対の髪が風に舞う。


 武骨な工具が唸りを上げ、ゴブリンたちを血祭りに上げている。

 その姿は見えずとも、とぎれとぎれに彼女の生存がいや、彼女の蹂躙が確認できた。

 ゴブリン達もそこに気付いて慌て始めるが、気付いた時には遅かった。


 獅子身中へと食い込んだ一匹の虫が身体を蝕むように、ネフティアは周囲のゴブリンを自慢のチェーンソウで両断していく。

 剣も斧も弓矢すらも関係ない。等しく諸共に引き裂いて行く。

 防具を着たホブゴブリンも、真っ赤な帽子のレッドキャップも、どんな個体のゴブリンも関係なく次々に肉塊へと変えていた。


 圧倒的。ビリーが抱いた感想はそれに尽きる。

 自分たちが束になってようやく押し留めていたゴブリン達がまたたく間に消えて行く。

 青白い透き通る綺麗な肌。流れるツーテールの藍色。

 まるで幻想的な天使か何かのように、少女は無表情のまま流れるような動作で次々にゴブリンを消して行く。

 その姿に、何時しかビリーは立ちつくしたまま魅了されていた。


 綺麗だ。そんな言葉が自分の口から洩れる。

 だが、直ぐに我に返った。

 少女に近づく巨大な緑色に気付いたからだ。

 バカな!? そんな思いがビリーを正気に戻した。


「逃げろッ! そいつはゴブリンじゃないっ。オーガだ!!」


 グリーンスキン種の上位とされている巨大な緑色の魔物。

 筋肉質で凶悪な顔を持つ悪夢のような存在。それがオーガだ。

 腕力だけなら番長すら超えるとされる、レイドパーティーでようやく闘えるかどうかの凶悪な敵である。


 ビリーは戦慄した。

 あんなものが出て来るなど予想外だ。

 この国はもう、終わるのか?

 絶望に似た感情を抱いた。それでも、少女を見てその感情が塗りつぶされる驚きを覚える。


 少女は対峙していた。

 まるでこれからお前を倒すとでもいうように、オーガを相手に一歩も引くことなくチェーンソウを両手で構える。


「GAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」


 オーガが吼えた。

 その声で、騎士団もゴブリンも完全に委縮してしまう。

 オーガの突撃。拳を振り上げ小さな少女に振り下ろす。


 ソレを見た誰もが、少女がひき肉に変わることに目を瞑った。

 だが、恐る恐る目を開いた彼らが見たモノは、少女を避けるように、真っ二つに裂かれたオーガの拳だった。

 肘元まで切り裂かれたオーガの腕は、少女を中心に、否、少女の持ったチェーンソウを中心に二つに裂かれていた。


 それに気付いたオーガが悲鳴を上げる。

 仰け反るオーガが視線を外した次の瞬間、ネフティアは走り出す。

 唸る工具を振いオーガの右腕を切り落とすと、側面に回って右足にチェーンソウを叩きつける。

 物凄い音が響いた。


 それはチェーンソウの音だったのか、オーガの悲鳴だったのか。少なくとも双方同時に同量の音が響いていた。

 血塗れの少女は工具を振り切る。

 オーガの右足が面白いくらい簡単に地面に落ちた。

 支えを失くしたオーガが右に倒れる。


 直ぐに移動するネフティア。

 倒れたオーガの首に工具を押し当てる。

 その圧倒的な闘い、いや、解体劇に、ビリーたち騎士団はただただ呆けたように魅入るしか出来なかった。


 巨大なオーガが指令塔だったのだろう。

 角切りサイズに分けられた姿を見たゴブリンたちは我先にと逃走を開始した。

 その殆どがさらに勢いを増すネフティアにより屠られていく。


 騎士団は、ただただ颯爽と現れ血だまりで踊る少女を見つめるしか出来なかった。

 蹂躙を終えた少女はようやく工具の電源を切り佇む。

 その絵になる程に美しくも残酷な姿に騎士団は羨望と畏怖を感じたのだった。

 後に、騎士団内で生まれる戦と勝利の戦女神ネフティアという現人神の誕生であった。

 オーガ

  種族:グリーンスキン クラス:上級鬼族オーガ

 ・怪力自慢の鬼族。自分の力に酔いしれ凶暴化した個体が多い。

  魔物ではなく魔族と認識されており、一部地域では人間に混じって暮らしている者もいる。

  強さを求める傾向が強く、知識はあるが脳筋になっている。

  自動HP回復能力を持っているので下手な傷はすぐ直る。

 ドロップアイテム・固い筋肉、腰蓑、プロテイン、オーガの牙

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ