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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その愚連隊の真の隊長を、彼らは知らない
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その楽器の扱いを僕も知らない

「むぅ……よく考えたが我はこれを扱った記憶が無い」


「ならやんなよ……」


 耳を押さえたカインがクーフからバイオリンをひったくる。

 適当に弾いてみるが、クーフ同様力が強いので怪音波になっている。

 これはダメだ。カインも感じたらしく顔を顰めている。


「ネッテ、お前楽師に習ってたよな?」


「ええ。けどこんな楽器は扱かったことは無いわよ?」


「むぅ、じゃあコレ誰か使える奴いないのか?」


「タツマはどう?」


「オルァ?」


 俺が? みたいな感じで自分を指差す辰真。

 仕方なくバイオリンを受け取り弾こうとするが、首を捻る。

 うん、これダメなパターンだ。


 すると、その横から近づいてきたネフティアが貸して。とばかりに両手を出してくる。

 それに気付いた辰真はそらよ。とばかりにネフティアに押しつけた。

 そしてネフティアの本領発揮。


 旋律……ではなく戦慄が走った。

 どこから出るんだとばかりに怪音波が激しく鳴り響く。

 首、首が激しく揺れてる。怖い。怖いよネフティアさん!?

 それヘッドバンキング。曲もヘビメタ系ですよ!?


 ダメだ。絶対ダメなパターンだ。これ貴族連中に聞かせたらブーイング以前に気持ち悪いとか言われそうな奴だ。アメリスの信頼も一気に下降修正されかねない。

 貴族から避けられたら色々問題だぞ、特にネッテとか。


「ダメね。何かいろんな意味でネフティアに教えを請うのは危なそう」


「わ、私もさすがに今のを真似るのは……」


 と、ネフティアからバイオリンを奪ったクーフはそれを最後の一人へと託す。


「「「アルセ先生、お願いします!」」」


 すかさずカイン、ネッテ、リエラが同時に告げた。

 渡されたアルセは微笑み浮かべて両手を万歳。

 右手にバイオリン、左手に弾く奴……逆じゃなかったっけ?


 ってもねぇ。僕もコレ弾いたことは無いんだよ。

 なんとなくは理解してるけどこれだったらギターの方がまだ使える気はするんだよね。

 えーっと、こんな感じかな?


 ちょっとぎこちないけどとりあえず適当に弾いてみた。

 なんか微妙だけどそれなりに音が奏でられている気がしないでもない。

 ただ、それでもカインたちにはさっきまでよりいい音だったようで、さすがアルセ! と拍手喝さいでした。


 いや、でもね。この程度で貴族に聞かせるとか、無理だよ?

 あ、ラッパあるじゃん。こっちにしようぜリエラさん。

 僕がアルセを使ってバイオリンを置いた後、アルセと共に向ったラッパを手に取り、皆に見えないよう後ろを向いてアルセに隠れて吹いてみる。

 一応口元を軽く拭っておいたけど、数千年前のおっさんと間接キスとかないよね?


 やっぱり、ラッパの音楽と言えばあれしかないだろう。ラッパのマークだし。胃腸を整えたくなるよね。

 そしてその音に反応したカインたちはアルセがラッパを鳴らしたと思ったらしく。リエラにコレの方がいいんじゃないかと勧め出した。よし。さぁリエラさん。これを鳴らし給え。

 そして僕と間接キッスを……


 リエラが選んだのはバイオリンの方でした。と。

 何故だ!?

 泣き崩れる僕の近くで、リエラはなんとかバイオリンを弾こうと努力している。

 独学ながら力の強弱で音が変わったりするのに気付いて色々と試行錯誤をしている。


 悔しいからラッパをポシェットに入れた僕は、皆と共に宝物庫を後にする事にした。

 これからリエラは朝はカインと剣の練習。昼はバイオリン練習などいろいろ大変なことになっていたけど、わかってる? さらにゴブリン討伐とかエンリカの挨拶回りとかあるんだよ?

 練習時間ないよ? ラッパの方がまだいいよ?


 セルヴァティア王国跡を抜け出ると、カインたちはそのまま安全な道を伝って国に帰るようだった。

 なので、アルセを使って辰真の肩を叩くと、僕は彼と共に別行動を取らせて貰う。

 「オルァ?」と疑問符浮かべて付いてきた辰真と共に泉の方へと向った僕らは、幾つかミクロンから渡されていた羊皮紙を取り出しゴブリンの絵を描き辰真に見せる。


 少し首を捻っていた辰真だが、ようやく納得いったらしい。

 一応、念のためではあるものの、やっぱり奥の手はいつでも出せる状態にしておきたいのである。

 なので、僕とアルセは辰真と共にツッパリたちのもとへと向った。


「オルァ!」


「オルァ!?」


 よぉ、元気してるか番長。

 おお? なんだよ。何か用か?

 そんな感じで挨拶していた現番長と辰真。ゴブリンの似顔絵を見せてアルセが笑顔で手を振るのを見た現番長は納得いったように頷いた。


「オルァ!!」


「「「「「「ラァッ!!」」」」」


 一声かけた瞬間、憩いの場でゆっくりう○こ座りしていたツッパリたちが一斉に立ち上がる。

 さぁ、ツッパリ愚連隊初出動だ。

 アルセが総長だってんだし、ゴブリン討伐手伝ってね。


「オルァ」


 現番長もこっちに向うようで、一人のツッパリにこっちのことはしばらくお前に任す。みたいな言葉を告げていた。

 そいつは辰真に憧れの熱い視線を向けながらオルァ! と元気よく告げる。任せてください。と言っているようだったが、その視線はやはり現番長ではなく辰真に注がれていた。

 ……なんとなくなんだけど、恋する乙女の視線に酷似してる気がするのは気のせいだよね?

手に入れた楽器


 グランドピアノ

 ラッパ

 バイオリン

 トライアングル

 シンバル

 指揮棒

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