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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その愚連隊の真の隊長を、彼らは知らない
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その演奏会の過酷さを彼女は知らない

「いらっしゃい。さっそく依頼を受けていただいたのね」


 フィラデルフィラル邸に向った僕らは、この前案内された客間に通された。

 ソファにはアメリス。本日もお気に入りのぬいぐるみのようににっちゃう・つう゛ぁいをぎゅぎゅっと抱きしめている。なんか本絞りレモンみたいに果汁でもでてきそうな抱きしめ具合だ。元の形状ってどんなだったかな?

 その背後にメイドさんが佇んでいる。


 折角なので魔物図鑑ににっちゃう・つう゛ぁい登録しとこう。

 対面のソファに座るのは、今回指名依頼を受けたリエラ。

 ソレを挟むようにカインとネッテが座っている。


 右からクーフ、ネフティア、辰真、アルセの順でソファの背後に佇んでいるのだが、アルセが暴走するのを防ぐので僕は手一杯です。

 お願いだから変なことしないでねアルセ、ここの花瓶とか落としただけで1億ゴスくらい軽く吹っ飛ぶからっ。


 ネフティアまでは手が回らないので、クーフに面倒を見て貰っている。

 頼むよクーフ、君が頼りだ。

 辰真? なんか居心地悪そうにしてます。こういう場所は初めてらしいので落ちつかないようだ。

 暴れないでね?


「それで、リエラに指名依頼だそうですけど、結局この演奏会への出席というのは?」


「ええ。二週間後、いえ、今からだともう少し時間は無いわね。演奏会があるのだけど、私はその時間にっちゃんとのお散歩時間ですの。なので代理を立てようかと思っていたの。本当はこのメイド、マルセイユに頼もうかと思ったのだけど、彼女は私の護衛ですのよ。だったら冒険者に頼んでしまった方が速いわ。そうしている人も多いらしいですし」


「演奏会ってのは、何処でやるんだ?」


「王城近くの音楽堂がございますでしょう。各自楽器を持ちこみ思い思いの曲を演奏致しますの。貴族間どうしで子供たちの実力を見せ合うのが本来の目的だったらしいのだけど、最近は面倒臭がる子供が多いので代理制度が出来たのですわ」


 傍迷惑な話である。


「つまり、楽器は自分で決められる訳か」


「ええ。皆自慢の楽器を持ち寄って演奏なさいますの。中でも注目はフィオリエーラ・ガルレオン。ここ最近ではよく最優秀賞一歩手前を取っておりますの。まぁ、ダンデライオン家には勝てませんけれど。向こうは宮廷楽師が出てきますから一位総なめですわ」


 ようするに、ダンデライオン家というのが金にモノ言わせて王宮の楽師を呼び寄せている訳だ。子供の学芸会に音楽のプロがでるとか、そりゃ一位は決まったようなものだろうよ。

 他の人がやる気無くなるのも仕方ないってもんだ。


「代理を頼めばその冒険者の腕のせいにできますし、自分が下手でも問題が無いのですわよ。ですので代役は誰でもいいのですわ」


「それ、私が恥かくだけのような……」


「あら。貴族の演奏会にでられますのよ? むしろ光栄ではなくて?」


 多少音楽が出来ればそうだろうけど、これでカスタネット叩くだけとかになったら目も当てられないよね。

 取りつく島のないアメリスは、用件を告げ終えると、ではと部屋を出て行く。これからにっちゃんの散歩ですとか言ってらした。ほんと、溺愛ぶりが半端ないな。

 そして入れ替わるようにやって来るアメリスのお父さん。

 例にもれず彼らの目の前に座ると、ウチの娘に恥かかせたらどうなるか。分かっているよねカイン・クライエン君、リエラ・アルトバイエ君。第三王女の庇護下にあろうとも貴族は敵に回すべきじゃないよ。と御忠告を受け取りました。ほんと、溺愛ぶりが半端ない。


 フィラデルフィラルさん、僕らのこと調べてやがる!?

 だが、彼は分かっていないね。リエラに害を及ぼすならアルセ様が、アルセ愚連隊が黙っちゃいないぜ!

 あ、そうだ。ソレ使えるな。ゴブリン討伐のために連絡してみようかな?




「でも、どうしましょう?」


 フィラデルフィラル邸を後にした僕らは、屋敷前でリエラは不安そうに告げる。


「私、楽器とか触ったこともないんですけど」


「だろうな。俺もねぇや。王女だしネッテは?」


「ウチの楽師から少し習ったけど、もう忘れたわ。あの楽師がでるなら優勝なんて無理だし、適当に曲を奏でていればいいのでしょ。エンリカあたりができないかしら?」


「クーフや辰真はどうだ?」


「オルァ?」


 辰真さんが楽器ってなんだ? みたいな声を発しました。うん、彼には期待すべきじゃない。


「我の記憶が確かなら、我が王宮にいくつか楽器があったキがするのだが……はて?」


「んじゃぁ、セルヴァティア王国跡に一度行ってみるか。あそこなら二日で帰れるだろ」


「そうね。連絡が来るのが今日か明日だと思うし、ゴブリンの大量発生討伐までには帰れるでしょ。さっさと行ってリエラ用の楽器を手に入れたら演奏会まで練習ねリエラ」


「やれるだけはやりますけど……はぁ」


 気の乗らないリエラ。しかし、大丈夫だろうか。

 貴族の演奏会。下手したら、噂が広まるぞ、貴族の演奏会に出て来たイモ娘だとかリエラが不名誉な名声を得て潰れないか心配になってくるな。


 貴族って結構プライド高いから散々な結果の冒険者を見付けたら総攻撃してきそうだし。

 あのデカパ……フィオリエーラが出て来るとすれば下手すりゃ嫌がらせもあるかも。

 これは楽には終わりそうにないぞ演奏会。

 リエラ大丈夫か。気付いてないようだけど、この演奏会、やりようによってはかなり後引くことになりかねないぞ。

 ギリアム=フィラデルフィラル

  クラス:フィラデルフィラル伯爵

 ・父から引き継いだ伯爵位でぼろ儲け中の伯爵。

  自分の娘にはとことん甘く。アレをペットにしたいですわ。というアメリスの誕生日ににっちゃう・つう゛ぁいをペットとしてプレゼントしたツワモノ。


 マルセイユ=フランボワーズ

  クラス:フィラデルフィラル伯爵令嬢付き専属メイド

 ・藍色のストレートヘアの冷静沈着メイド。戦闘能力は高いが、彼女曰くメイドの嗜み程度の実力らしい。


 にっちゃん

 ・アメリスが飼っているにっちゃう・つう゛ぁいのペット。

  触り心地抜群らしく、お気に入りのぬいぐるみの様に良く抱きしめられている。

  最近はメイド、マルセイユの計らいで散歩することを許され、森によく向うようになったが帰巣本能ができたのかアメリスの元に戻るようになった。

  種族:にっちゃう クラス:にっちゃう・つう゛ぁい

  スキル:体当たり

      飛び跳ねる

  常時スキル:帰巣本能

        アメリスの忠誠兎達磨

  種族スキル:霊素吸収

        ぷにぽよん

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