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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その愚連隊の真の隊長を、彼らは知らない
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その女性たちに何があったのかを彼は知らない

 オーク村長の家に運ばれた二人の女性に、バズ・オークはおろおろとしていた。

 一体何が起こって二人が気絶したのか分からず、エンリカを見ておろおろ、セレディを見ておろおろと落ち着きが無い。

 特に二人が争いそうな切っ掛けが自分にある事がわかっているので気が気でないようだ。


 そんなバズ・オークの姿を見たカインたちは、理由を尋ねられても全員が口を閉ざしていた。

 こいつには幸せなままでいてほしい、あの光景を教えるべきじゃない。

 そんな意志で彼らは統一されていた。

 村人も、仲間達も絶対に口を割らず、何も知らないバズ・オークが一人おろおろしているだけである。


 そんな落ちつきの無いバズ・オークをアルセが楽しそうに笑って見ていた。

 村長曰く、気持ち良さそうに眠っているので二人が起きるのなら明日になるだろうとのこと。

 カインたちは相談した結果、バズ・オークに二人の様子を見守らせることにして今日は眠ることにしたようだ。


 宴は本人たち不在ということで、延期になりました。

 また今度来た時にやろうという事です。

 宴、出来る時っていつになるんだろう。この村来たらいつでも血の雨が降りそうで怖い。


 バズ・オークにも眠っとくように告げたカインは、二人が起きていきなり争い合わないように一応エンリカも連れて別室で休むことにしてもらった。

 バズ・オークに連れて行くように告げて、セレディはオークの村長夫妻に任せてその日は眠ることにした。




 さて、挨拶も終えた以上この村に留まる理由はどこにもなくなった。

 むしろ一刻も早く出る理由も出来た。

 柔らかな日差しと共に起きた僕はうーんと背伸びをしながら起き上がる。

 横を見れば僕を揺り動かすアルセと、なぜか最近一緒に身体を揺らしてくるネフティア。

 相変わらず仲がいいですね。むしろ似た者同士?


 でも、よかった。個室というか何箇所かに分かれて休むことになったんだけど、リエラがアルセとネフティアを引きうけてくれたので僕も遠慮なくベッドの上で眠れたのである。

 御蔭でいつも以上に快調ですよ。ベッド堅かったけどね。


 いつもは殆ど床で寝てたからね。リエラが個室だったりする時は一緒の部屋で寝させてくれたけどさすがにリエラのベッドに上がり込む勇気は無かったし。

 とりあえず、起きて最初にする事はリエラを起こす事かな。放っておくと昼過ぎというか夕方くらいまで爆睡してるし。

 リエラの本来の活動時間はネコと同じらしい。


 そういえば、この世界に来てネコとか見てないな? いないのか、この国に居ないだけなのか、魔物としては出てきそうだよね。ネコ娘とかネコ娘とかネコ娘とか。少女の姿で飼い主に構ってくるネコ娘……ゴクリ。


 見つけたらテイムしよう。アルセ、絶対テイムしようね! できれば巨乳様を希望します!! ちっぱい系でも幼女じゃなければおっけーだ。

 幼女枠はもう二人もいるしお腹いっぱいですよ!


 そんなことを思わず叫ぶ。アルセは僕が何をしているのか理解できずにこてんと首を傾げていた。

 リエラを起こし、寝ぼけ眼の彼女と共に洗面所へ。

 と言っても外にある井戸から水汲んで顔を洗うだけだけど。


 村長の家には専用の井戸があったのでそこで井戸から水を汲む。

 滑車は普通に普及しているようだ。

 何があって何が無いのかがよくわからないから異世界内政チートするのも難しいね。


 下手なことすると俺の事業をパクリやがったとか難癖付けられそうだし。

 というか、王国の方は水道とかもあるんだよね。シャワー使えたりするし。お風呂もあるし。

 国と村だと普及具合が違うらしい。もしかしたらもっと現代的な国もあるのかも。


「お、リエラ、珍しく早いな。よく自分で起きれたな」


 クーフ、辰真と寝ていたらしいカインの一団がやってきた。

 ちなみに、ネッテはエンリカ達と眠ってました。

 あの二人は放置でいいと思うんだけど、ネッテ曰く、こんなとこで発情されても困るからとか。


 で、そんなネッテたちもカインに遅れて登場。

 リエラが汲んだ水を使って人間の全員が顔を洗う。

 エンリカが最後に顔を洗って、ふぅと一息。


「皆さん、昨夜は家に連れ帰っていただいたそうで。ありがとうございました」


「ああ、いや、気にすんな。それより身体に異変はないか?」


「はい。すごいですね回復魔弾。あんなことになってたはずなのに元通りみたいですし」


 エンリカが笑う。昨日の血塗れのままだったら今日のエンリカの顔は見れたモノじゃなかっただろう。

 青あざ作って顔面腫れあがって凄いことになっていたはずだ。

 その事を知らないバズ・オークが首を捻っていたが、誰も説明しようとはしなかった。


 全員揃って村長の家に戻ると、装備の点検を行い準備を整える。

 この村での用事は済んだので、このまま王国へ帰るのだ。

 村の安全はオーク達が何とかしているみたいなのでゴブリンの大発生をギルドに伝えるという理由もある。

 殴り合ったエンリカとセレディを一緒にしておくのが怖いという理由も多大にある。

 なので、村長に別れを告げて僕らは早々に退散することにしたのだ。


「ぶひ」


 が、結局セレディが見送りに来ているの図。

 セレディはエンリカの前にやって来ると、握手とばかりに手を差し出す。

 エンリカも何の疑いもなくソレを握った。


「ブヒ」


 それじゃあエンリカ、お・し・あ・わ・せ・に。


「ええ。ありがとうございます。バズさんと幸せにな・っ・て・み・せ・ま・す」


 言葉の最後の方で、互いにぎりぎりと握手の力を強めて行く二人の女。

 笑顔なのに闘気が見えるようでした。

 蟀谷こめかみに青筋浮かべ、互いに握手を終えるとにこやかな笑みを浮かべて踵を返す。

 この二人、顔合わせる度にまたやらかしそうだ。バズ・オーク以外の皆の共通認識となった。

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