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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三部 第一話 その大発生の理由を彼らは知らない
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その中級鬼族の強さを僕は知らない

「辰真、あれ!」


「オルァ!」


 ネッテの叫びに辰真は即座に反応した。

 爆熱のアッパーカットでゴブリンを蹴散らし、回転蹴りで邪魔になるゴブリンソルジャーを蹴り飛ばし、一気にレッドキャップへと距離を詰めて行く。


「ギキャッ!」


 巨大な斧を振り上げ襲い掛かるレッドキャップ。それを、辰真は真正面から片手で受け止める。


「ギッ?」


 驚くレッドキャップ。斧は辰真の手に固定されて動かない。

 というか、ビクともしてない。

 腕力の差が違うようだ。


 他のゴブリンとは違うみたいなのだけど、その実力は全く分からない。

 対戦する相手が悪かったとしか言いようが無い。

 焦るレッドキャップは、しかし辰真の振った拳を顔面に受けて「ぴぎっ」と悲鳴を上げる。

 が、顔面爆砕!?


 レッドキャップが敗れたのに気付いたゴブリン達が逃走を始めた。

 やはりレッドキャップが指揮していたらしい。

 が、逃げ出すゴブリン・クレリックにネッテの魔法が襲いかかる。

 広域氷結魔法フロ・ストラ。


 殆どのゴブリンが背中を向けたまま氷漬けになり、範囲を逃れたゴブリンも、いつの間にか走り込んでいたネフティアにより細切れにされる。

 カインたちの活躍? そんなものよりアルセの応援の方が光ってたね!

 遠くのゴブリンはエンリカが狙撃して、今回の団体さんもほぼ殲滅した。

 数匹逃げたけどあの程度なら問題にはならないそうだ。


「本当に、何なのかしら? 普段古城とかに居るはずのレッドキャップがゴブリンの指揮に……まさかね」


「はは、これでゴブリンマザーとか出てきたら確実だな」


 ネッテとカインが青い顔で笑い合う。

 二人揃ってそれはない。と笑い、直ぐに押し黙る。


「キング……生まれたかな」


「しか、考えられないわよね」


 来た。ゴブリンキング! 異世界転生では初期段階でほぼ戦う事になる化け物だよね。


「と、とにかく急ごう。まずは村の安否だ」


 カインが急かすように動きだす。

 僕らはカインに付いて移動するが、なんとなく予感があった。

 ゴブリンキング。きっと闘うことになる。だって異世界転移のお約束だし。きっと僕がいる以上カインたちは巻き込まれるはずだ。


 でも、きっと大丈夫。何とかなるさ。クーフや辰真がいるんだ。

 そう、大丈夫。なんとなくそう思おうとしているのは、何とも形容しがたい不安感が沸き上がり始めたからでもある。

 アルセの踊りを見ながら、僕は漠然とした不安をなんとか沈み込めるのだった。


「はぁ、やっとついた……」


 結果を言えば、村は無事でした。

 村に辿りつくと、村の入り口には武装したオークが二人、門番のように立っている。


「ぶひ!?」


 彼らはバズ・オークに気付くと驚きながらも嬉しそうに駆け寄ってきた。


「ぶひ!」


「ぶひ」


 うん、まぁ訳すまでもないか。

 感動の再会で喜びあう豚軍団。

 どうやらオーク達は人の村の護衛を行っているようだ。

 最近ゴブリンが急増したらしいので村ごと引っ越し、人間たちと暮らしだしたとかトンデモ情報を話し合っていた。


 エンリカが直訳してくれるが、なんとまぁ村長も思いきったことしたな。

 オーク達としても自分たちの主食であるあの気味の悪い大根もどきを食べられるので喜んで村に移住し、村はオークが護衛に回ったのでゴブリンなどの魔物被害が格段に減って大助かり。双方Win-Winの関係であるらしい。


 ちょっと見なかった間に随分と変わったのだなとバズ・オークが感動していた。

 村の様子をぱっと見た感じだと、メスオーク達は村人と一緒に洗濯したり野菜を売ったりしている露店で売り子をしているのが見える。

 オスオークは鎧を着ているのが結構いるが他の奴らは畑作業を手伝っているようだ。

 子供オークは村の子供たちと鬼ごっこみたいなので遊んでいる。


 ……すげぇ、オークがいるのに全く違和感が無い。

 何この村。オークと人間が普通に共存してるんですけど?

 いや、僕らが提案したことだけど、なんか凄く親近感でてない? まるで長年一緒にいる村人のようですよ?


「あの、ネッテさん、これって……」


「さすがの私も予想外ね。こんな状況になるのはまだ数十年はかかると思ってたんだけど」


「おお、いつぞやの冒険者さん。お久しぶりじゃな」


 オーク達から話を聞いたのか、近くにいた村長さんがやって来る。

 どうやら丁度村の見回りをしていたようだ。


「あの、これは一体……」


「うむ。少し前にゴブリンが大軍で率いて来ての、蹂躙される未来かと嘆いたところにオーク達が救援に駆け付けてくれたのじゃ。凄まじい闘いじゃった。もう、彼らは儂らの家族じゃ。彼らに対する忌避感なぞあの戦いで皆吹き飛んだわい」


 しみじみ語る村長。なんか凄い闘いが村であったようだ。


「ぶひっ!」


 何か、鼻息が聞こえた。

 その音に、びくりとバズ・オークが直立不動になる。

 ゆっくりと背後を振りかえる。


 そこにはゴブリン狩りの一団。

 無数のオークや村の若者を掻きわけ。一人のメスオークが現れる。

 血塗れの姿に血の滴る斧を持ち、バズ・オークの幼馴染さんが現れた。

 ゴブリンクレリック

  種族:グリーンスキン クラス:下級鬼族ゴブリン

 ・信仰に目覚めたゴブリンたち。

  基本的に他のゴブリンのように性欲は無く、ほぼ毎日神に祈りを捧げている。

  暴力的な性格はなりを顰め、代わりに仲間を回復する魔法を扱えるようになっている。

 ドロップアイテム・筋張った肉、杖、臭いの少ない腰布、ゴブリンの鼻

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