その女性が怒る理由を彼女は知らない
まぁ、分かりやすく状況を説明するならば、どうも貴族の娘さんである女性に対し、奴隷の小間使いが接触してしまったそうなのだ。
ただそれだけ。っていうか奴隷なんて居たんだね。
女性の方は流れるようなひざ裏まで伸びた金髪。もみあげがドリルヘアでいらっしゃいます。
ピンクのドレスに身を包み、白い手袋でいいのかな? ちょっと腕の部分が長いけど。
両手に白い手袋を付けてふんぞり返っていらっしゃる。
足に履いてるのはハイヒールだろうか? この世界にもあるんだな。
その横には付き人と思われる丸顔の女性が一人。
うーん。なんかに似てる。動物だ。なんか笹とか食べそうなイメージだ。
お嬢様に危険が及ばないよう周囲に気を配っているが、奴隷を見る目は主人同様冷めた視線だ。
対する奴隷は痩せこけた男性だった。
どうも御主人様からも似たような仕打ちを受けているようで身体中に傷がある。
年の頃は15とかそれくらいだな。まだ若いのに可哀想に。
「奴隷……か。透明人間さんが見るのは多分初めてですよね?」
こくりと頷いておく。リエラの頭で。
「えぇと、私の身体を動かすのは今はちょっと。あ、そうだ。だったら肩を叩くので知らせてください。肯定なら一回。否定なら二回叩くのはどうですか?」
肯定なのでリエラの肩に一度手を置く。
「初めからこうすればよかったですね。にしても……」
酷い。某トイレCMのように酷い貴族だと呟いてやりたいくらいに酷い。
お嬢様はふんぞり返りながら困った顔の奴隷を蹴る。
奴隷身分のため反撃できない奴隷は地面に倒れ、それをお嬢様が再びハイヒールで蹴りつける。
アレは痛い。
そしてバランスを崩して倒れるお嬢様。自業自得である。
「よ、よくもわたくしをこかせましたわね奴隷風情がッ!!」
うん、とばっちりです。本当に酷い貴族だ。
「止めに入りたいですけど、私は貴族ではないですし、下手に逆らうと家に迷惑がかかるんです」
本当に酷い現実だ。
……でも、貴族だろうと何だろうと、僕には関係ないんだけどね。ちょっとだけ、悪戯したれ。
ぽんっとリエラの肩を叩いて僕は騒動のもとへと近づいて行く。
僕が何故叩いたのか理解できずに僕を探して左右を見回すリエラは放置です。
僕が近づく間も蹴りつけるお嬢さま。その姿はまさに悪女で、奴隷の男は頭から血を流している。
それでも抗わないところをみるに、完全に自分を奴隷だと受け入れてしまっているのだろう。
同じ人間なのに嘆かわしい。
さて、どんな悪戯してやろう? 公衆の面前でスカートが勝手にまくれ上がるのがいいか、さっきみたいに無様にこかせるか? それともブラホックを……そう言えばこの世界、ブラジャーって見てないよな。
スポーツブラっぽいのはあったけど防具の一種だったし。
そして目の前のお嬢様……ゆっさゆさです。ヤバい、これは巨大じゃぁ!?
目に映ってしまった魅惑の果実が僕を誘惑してきます。
……ふんぞり返るお嬢様め。我が魔手を喰らうがいい!!
これぞホントのばるんばるんってヤツなんだ。やらねばならん、男として!!
僕はお嬢様の背後に向うと、思い切り、胸を鷲掴んでいた。
物凄い大きかったんだ。
こんな果実はまず見つからない。それくらいに大きかったんやぁ!
「ふはぁっ!?」
突如ありえない感覚が押し寄せ驚くお嬢様。カシャッ。
よし、CGゲット! そしてこれが奴隷君へのサービスだ!!
胸から即座に手を離すと掬いあげるような見事な一撃。
お嬢様を隠していたスカートがひらりと翻りドロワーズが露わになる。
ちっくしょうっ。なんかひらひらしたのが大量に存在しててパンツすら見えなかった。
ごめん奴隷の男よ。僕では力不足だった。君に幸福を与えることはできなかったよ。
ただ、効果はあったようで、お嬢様は羞恥に歪んだ顔をしてスカートを押さえる。
そして従者の女性はおろおろし始める。
それは当然か、貴族の娘たる者が往来でスカートの下を覗かせるというはしたない行為を行ったのだ。
慌てて周囲を見回し、青い顔をしているリエラを発見した。
あ~、あれはマズい。
「そこの女! 今何をした! このお方をフィオリエーラ・ガルレオンと知っての狼藉か!!」
「え? ええっ!?」
なぜか僕がやったことをリエラがやったと誤解されました。このままではリエラに無実の罪がっ!?
「あら、冒険者さん、何の騒ぎ?」
と、運がいいことに助け舟たる少女が現れた。
高飛車な顔立ちだけど見るからに金持ちを体現した金髪少女。フィオリエーラを小さくしたような姿ながら我らが女神様と言っても過言じゃない。
そんな彼女、アメリス=フィラデルフィラルはボンレスハムみたいに抱きしめられたにっちゃう・つう゛ぁいを大事そうに抱え、お付きのメイドさんと共に現れた。
「あ、アメリスちゃん?」
「あら、あらあらあら、フィオリエーラお姉様、随分と酷い事をなさっているのね。そちらの奴隷さんはダンデライオン家の方でしょうに、随分な仕打ちですのね。事を構えるつもりですの?」
見ただけで状況を把握したらしいアメリスはにやにやと笑いながらフィオリエーラに近づいて行く。
彼女が怖いというよりにっちゃう・つう゛ぁいが怖いという表情で後ずさるフィオリエーラ。
まぁ、バズーカ砲構えたまま近づかれたら誰でも逃げるよね。
「ぱ、パンダリーネ、行きますわよ!」
「はい」
分が悪いとばかりに踵を返すフィオリエーラとパンダリーネ。
そうだ。パンダだよ。あの顔、レッサーパンダに似てたんだ!
胸のつかえが取れたような爽快感を覚え、僕はようやく理解した。
追伸。ゴッドハンドへと昇華したこの腕は、しばらく洗わないぞ!




