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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第五話 その逆鱗の理由を奴は知らない
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その次の目的地を彼らがどうするのか、僕は知らない

 まさに魔王を思わせる凶悪な闘気を放つ総長。

 対するは笑顔のアルセ。

 その頭上の六つ葉は負けじと発光を始めていた。


 周囲を恐怖に陥れてのプライドの闘い。

 総長はとにかくアルセを怖がらせたい。

 なのにアルセが怖がらない。

 半ば意地だった。


 バルス君が泡吹いて倒れているが、これは気付いたバズ・オークが人知れず叢に連れ込んで他人の目から隠していた。

 バズ・オークさん、こんな時でもいい仕事してます。下の世話までしてやるとはなんと律儀な。

 エンリカも一応気付いてはいたみたいだけど、バルスがどうなったかなど気にする余裕はなかった。

 必死に総長の威圧をレジストするのに必死である。


 僕もバルス君みたいに気絶してしまえばいいのかもしれないけど、アルセが耐えてるんだ。僕が気絶する訳にも行くまい。

 負けるなアルセ。僕は君の勝利を信じてる。

 肉薄する総長のガンつけに、アルセの笑顔が立ち向う。


 まさに世紀の一戦。

 果たしてこれに終わりはあるのか?

 ああ、下っ端達が気絶し始めた!?


 それから数分。総長は持てる全ての力を出し切ってアルセにガンつけを行った。

 そして、みごとに散った……

 後に残ったのは、プライドを完全粉砕されて元のツッパリへと舞い戻った元総長がいるだけだった。


 悲嘆にくれるツッパリたち。

 やはり敵わなかったか。と男たちは英雄の死に涙する。

 いや、まだ死んでないけどね。


 地面に尻餅付いて胡坐をかいた総長は、まるで老衰するかのように番長に、そしてそのままツッパリへとクラスダウンしてしまっていた。

 どうにも彼らはモチベーションで進化退化を行う種族らしい。

 今までは番長になった個体が負ければ新たな番長が生まれ、今までの番長はツッパリに戻るを繰り返していたのだろう。


 番長は、多分頑張ったと思う。物凄い勇気を持ってアルセに挑んだはずだ。

 結果は惨敗だが、プライド粉砕された彼は改めてアルセに土下座を行っていた。

 なんて言うんだろう。忠誠騎士が二人に増えたと言うべきか?


 バズ・オークにツッパリ。惜しむらくはツッパリが総長からツッパリにクラスダウンしてしまったことだろう。

 こればかりは彼がアルセには勝てない、自分は弱いと決めつけているのでもう一度総長になる。なんてのは難しいはずだ。


 戦力アップかと期待していただけにちょっとがっかりだけど、カインたちとしてはツッパリに戻ってくれてむしろほっとしているようだ。

 さすがに魔王級の魔物をネッテのテイムモンスターにするのは精神的にキツいらしい。


 でも、クーフ曰く、一度至った以上、また総長に存在進化する可能性は否定できないとか。

 あとは本人の気力次第なので、僕としては、あのマンガみたいに後々気軽に総長化することを願っている。

 期待してるよツッパリ君。


「さて、とりあえずクーフの居場所探しとツッパリたちの縄張り争いが片付いたわけだが、どうする?」


「そうねぇ。とりあえず。町に戻って寝たいかな。さすがに数日しか経ってないけど疲れたわ」


 今までの冒険の中でもかなり密度の濃い冒険だったとネッテは語る。

 冒険者とは言っても、いつもはもっと緩い闘いを行いながら日数を掛けてゆっくり移動するらしい。

 それからいえばカインたちの行程は余りに密度が濃い決死行だった。


 たった一日でコーカサスの森に辿りつき、次の日には遺跡を攻略して……って待てよ、なんやかやで今、昼前だよな。もしかして遺跡の中で一日過ぎてる?

 ってことは三日目になるのか。

 まぁそれでもだ。抗争に巻き込まれて直接的な戦闘は無くともこの緊張感ある戦場にやってきたのだ。彼らの疲れもピークに達していることだろう。


 幸い、この森の縄張りを持っているのはツッパリとレディースであり、スマッシュクラッシャーは今の闘いで大きく領地を失うことだろう。

 つまり、実質レディースとツッパリの森になるわけだ。


「そうだなぁ。これからすることっつったらギルドで依頼受ける日々に戻るか?」


「私と夫は挨拶回りですね。結婚報告を両親に告げて挙式をあげたいです」


 皆が思った。エルフの村でオークの妻になるとか言ったらバズ・オークが血祭りにされる気がする。と。


「そ、それなら私達も一緒に行ってみましょうか、ねぇカイン?」


「そ、そうだな。エルフの村とか一度見てみたいし……な」


 瞬時に交わされたアイコンタクト。

 ネッテとカインがバズ・オークの絶体絶命に助け船を寄越していた。


「あの、クーフさんは良かったんですか? 普通に遺跡から出てきちゃってますけど?」


「うむ。折角起きることができたのだしもう少し世界を見て回るのもありかと思ってな。すまないがもうしばらく付き合わせてくれまいか?」


 どうやらクーフもパーティー残留のようだ。元ミイラ少女? まぁ聞く必要はないかな。アルセと変な踊り踊ってるし。喋らないけどパーティー残留は確定だろう。


「他には何か予定ある奴いるか?」


「あ、それでしたら私とバルスなんですけど、一度故郷の方に向おうかと思います。エンリカが抜けちゃってますし。いい機会なので」


「ユイアさん。その、すいません。折角お誘いくださったのに」


「いいのよ。幸せになりなさい。応援……してるわよ」


 一瞬バズ・オークに気の毒そうな視線を送りつつ、ユイアはエンリカに賛辞を贈った。


「まぁ、何にせよ次の目的地は町に戻ってから考えようぜ」


 と、言いつつ、疲れたのでツッパリたちの憩いの泉でもう一泊するカインたちがいたりしたのだが、次の目的地、結局どこに向うのカインさん?

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