その見たことのある状況を、僕以外は知らない
調子に乗り過ぎでは? と戦々恐々しながら投稿。
ついに章題の意味が明らかに。
火花が散った。
真っ赤に染まるリーゼントが超重量のハンマーに押し潰されることなく拮抗している。
唸りを上げるリーゼント。もはや髪というには余りに堅く頼もし過ぎる。
アレは武器だ。
ハンマーにすら匹敵する鈍器だ。
「ドラアァァァァァッ!!」
「キュキュ――――ッ!!」
双方気合いと共に力を込める。
しかし、完全に拮抗していた。
番長の蟀谷に青筋が浮かぶ。
対するスマッシュクラッシャーリーダーは歯を食いしばっている。
決着がつくかどうかすら怪しい完全な停止状態だった。
双方一瞬でも気を抜けば相手に押し負け潰される。
だからこそ、動かない。そして動けない。
余りの白熱に、ツッパリたちもスマッシュクラッシャーたちもついつい大将戦に見入る。
手に汗握る攻防は全くの互角であり、先にどちらが潰されるか全く分からない状況だ。
僕もついついそちらに眼が行ってしまう。
だが、皆が注目する中で、ただ一人、そいつは別行動を行っていた。
僕の視界の隅に映る、スイングをし始めたスマッシュクラッシャー。
気付いた時には、既にハンマーが投げられた後だった。
「番長危ないッ!!」
咄嗟に叫ぶ。
でも、悲しいかな。僕は透明人間だった。
この世界で、僕の姿も声も認識されてない。
だから、どれだけ注意を促しても意味がない。
投げられたハンマーが番長向けて一直線に飛んでくる。
拮抗した状態の今では、彼に逃れるすべなどなかった。
気付いた時にはすでに遅く、思わず青い顔をする番長。
悪意の一撃が番長を捉えようとしたその刹那。
ハンマーの進行方向に割り入る赤い影。
番長と同じように髪を真っ赤に染めた現番長が、番長を庇うように躍り出ていた。
飛んできたハンマーを背中で受け止める現番長。
「ぐがぁっ。ダ、ラアァァァァッ!!」
ハンマーの一撃は予想以上に重く、現番長の骨という骨を砕いて空を滑空して行く。
錐揉み回転してもんどりうってさらに顔面から着地する。
ハンマーの威力は予想以上に強力で、現番長が全く動く気配がない。
番長はその光景を、眼を見開いて見続けていた。
自分が守られた。守るべき相手に守られ、その相手が……死んだ?
あ、いや、痙攣してるからまだ生きてるか? リエラ、急いで回復をッ!
僕が慌ててリエラの銃を叩いて知らせる。
はっとしたリエラが走り出す。
さすがにこの場所からリエラが銃を撃って当てられるような実力は持ってないし。
「キュキューキュ」
チッ。邪魔しやがって。今のでお前が死ねば楽だったのにな。庇って死ぬとは馬鹿な奴だ。
スマッシュクラッシャーリーダーが笑う。
どうやらアレは指示通りだったらしい。
「オルァ……」
テメェ、最初からタイマンする気はなかったのか……
「キュキュッ」
当然だ。愚直に闘う貴様等とは違うのだよここの作りがな。
と、頭に視線を向けるスマッシュクラッシャーリーダー。
こいつ、見た目と違って腹黒過ぎる。
タイマンを邪魔され、仲間に庇われ、何も出来ずに仲間が倒れ……
番長の怒りが頂点に達していた。
……あれ? このパターン知ってる。
力足りない主人公、敵は強く卑怯な存在。私はまだ2回の変身を残して……これは違う。
そして自分ではなく仲間が殺される。
クリ○ンのことかーっ。
「ごるぁああああああッ」
昔見た漫画を思い出していた時だ。
番長の怒りが頂点を越えていた。
光り輝く番長。アレ、マジっすか!?
その姿が変わって行く。それはツッパリから番長へと存在進化した時と同じだった。
「こ、これはっ!?」
「おお、あれはっ!?」
「クーフ? 何か知ってるのか!?」
リーゼントが唸りを上げてハンマーを打ち上げる。
その威力にたたらを踏むスマッシュクラッシャーリーダー。慌てて距離を取る。
「キュキュッ!?」
光が収まったその先に、先程までのガクラン姿の番長は存在しなかった。
より強面の顔になった漢が一人。
白く長い特攻服を身に纏い、漆黒のリーゼントが黒い輝きを放っている。
頭には日の丸を思わせる鉢巻。
そして特攻服の背中に刺繍されているのは、喧嘩上等の文字。いや、僕にはそう見えるだけでこっちの世界の文字だろうけど。
「あ、あの悪魔を……再び見ることになろうとハ……」
クーフが震えていた。
自分の記憶を思い出し、恐怖に震える。
「クーフ?」
「カインよ。アレは……あれこそが我が国を滅ぼした、魔王だ」
……マジで!?
「我々はあの日、増えすぎたツッパリの駆除を行っていた。腕力には自信ある種族であったし柩を駆使して一気に狩っていたのだ。そこに、奴がいた。赤いツッパリだ。そいつは必死に皆を守ろうとしていたが、我々は奴らを魔物としか見ていなかった。そして、それは起こった。奴の目の前で、我等はツッパリを殺し過ぎたのだ。今回と同じように存在進化した。そして、奴は無数のツッパリと赤いツッパリを指揮し、我が国を滅ぼした。抵抗など、無意味になる程の強さだった」
番長の存在進化。つまり番長達を束ねる連合の盟主。いうなれば総長だろうか。特服が似合ってますよ番長。いえ、総長。
総長
種族:偽人 クラス:魔王
・特攻服のような服をマントのように着こなす。実は皮の一部らしい。
鍛え上げられた肉体にサラシの様な物を巻いてダボついたズボンを穿いている漆黒リーゼント頭の魔物。
オラァとかドルァとか叫ぶが、これは魔物の鳴き声のようなものらしい。
無数の番長を率いることがあり、彼の率いる群れは世界災害級の実力がある。
スキルの咆哮を喰らうと状態異常・畏怖になるらしい。
敵対するなら勇者や英雄が引きいたレイドパーティーを組まなければ人間は勝てないとされている。
滅多に出現する事はなく過去一度のみ、セルヴァティア王国で出現し、かの国を滅ぼした。
スキル漢の背中は舎弟の数が少なくなるほど自身の強化、多い程舎弟の強化に補正が付く。
種族スキル:威嚇・極
魔王闘気
神・メンチ怪光線
爆殺アパカ
咆哮・極致
吼え猛ろ俺のリーゼント
指揮Lv50
漢の背中
屡終龠朧に夜露死苦




