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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第五話 その逆鱗の理由を奴は知らない
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その魔物避けの効力がどうなっているのか、僕は知らない

 結局、水晶勇者の墓にある宝物は一つも持ち帰ることなく帰ることになった。

 水晶勇者の柩を開いて一波乱なんていうお約束も無く、アルセの暴走により遺跡崩壊脱出不可能人生オワタなお約束も無く、平穏無事に帰れるのはいいことだ。

 悪い事しか起こらないお約束はもうお腹いっぱいです。


 でも、クーフが言うには何かもっといい宝物があったはずだとか。

 なんでも死者を蘇生させられる秘薬があった気がするとか言っていた。

 ……うん、知らない。僕は何も知らないぞ。そんな秘宝持ってるとか知らないから。

 死甦水しそすいとか言うらしい。肉体的致命傷には効かないらしいけどミイラくらいなら蘇生出来るんだって。


 そんな話を道すがら聞いた僕らはついつい元ミイラ少女を見る。

 見るからにミイラ少女から艶々素肌の青白美少女に転身した少女。

 蘇生。うん、御免なさい。その秘宝僕知ってる。


 アルセがかなりの量吸い上げてました。

 ミイラ少女が全身浸かって蘇生してました。

 というか、多分蘇生というよりは不死者みたいな扱いになるんじゃないかな?


 肉体は復活するけど生命活動は始まらないみたいな。

 僕もそんな水に浸かってたんだけど、一応変化はないっぽい。大丈夫だよね?

 変な能力付いてないよね?

 後でコリータさんに聞いてみよう。


 何度か大蛇やら蠍犬に遭遇したけど、全メンバー勢揃いの僕らの敵じゃなかった。

 概要を説明すれば出会い頭、クーフの柩による頭部陥没死六名。元番長による撲殺3名。元ミイラ少女による解体ショー2名。エンリカの矢がクリティカルヒット死1名。

 他の面々出番なし。


 優秀な仲間は時に他の仲間のやる気を削ぐらしい。

 最後の方などネッテとユイア、バルスなどは戦闘中も世間話に華を咲かせていた程である。

 もはや味方の勝利を疑いすらしてなかった。


 そして僕らは大した傷を負う事もなく水晶勇者の墓を脱出した。

 そういえば、レディースだっけ、アレがこの付近来ると頭痛いとか言ってたけど、ウチの魔物たちは普通に付いて来てたよね。この違いは何だろうか?


 バズ・オークやアルセだけならネッテの所有魔物だからと理解出来るしクーフは元々ここにいたからで分かるんだけど、元番長やミミック・ジュエリーはレディースと同じ状況になりそうなものだけど……そういえば、この近辺に来ると二人はアルセに近づいてるな。

 ミミック・ジュエリーもリエラからアルセに居場所を変えてるし。


 つまり、アルセからなんか変な電波みたいなのが発生してて魔物を寄せ付けない何かを無効化してるとか?

 ……あり得そうで怖い。

 どうしよう。僕もアルセがただのアルセイデスなのか分からなくなってきた。

 変な風に進化しまくってるから彼女の能力を正確に把握できないんだよね。

 まぁ、楽しそうにしてるお子様だから手を焼くのが楽しくもあるんだけど。


「あれ? あの、皆さん、あちらの方……」


 最初に気付いたのはリエラだった。

 いや、バズ・オークも気付いたかもだけどリエラが注意を促すのが早かった。

 一つの木の木陰で休むように座り込む一人のレディース。

 その姿は痛々しい。

 右腕など圧し折れている。


「オルァッ!?」


 どうした!? とばかりに元番長が彼女に駆け寄った。


「ウラァ……」


 よぉあんた。ちょいとしくじっちまった。みたいな視線を向けるレディース。

 なんとなく三文芝居が始まりそうな予感です。

 ちょっと僕なりに訳をしてみよう。


「ウラァ」


 あんたらが居なくなった後に襲撃があってね。


「オルァ!?」


「ブヒっ」


「どうやら襲撃? があったみたいです。あの、誰にやられたんです? まさか冒険者?」


 ああ、ちょっとバズ・オークにエンリカさん話に水を差さないで。


「ウラァ」


 話を総合するとどうやらスマッシュクラッシャーが番長交代の噂を知って番長の領地に侵攻して来たらしい。

 レディースも一緒に抵抗したのだが、あのハンマー投げで壊滅の憂き目にあったのだとか。

 なんとか撃退はできたものの、数はスマッシュクラッシャーの方が圧倒的に多く、このままではツッパリもレディースも全滅しかねないという。


 スマッシュクラッシャー、耐久力はないけど腕力は凄いからなぁ。

 話じゃスマッシュクラッシャー側にも何かリーダー格みたいのがいるらしく、ツッパリたちの憩いの泉で今レディース、ツッパリ連合が顔を突き合わせているそうだ。

 レディースリーダーの彼女がここにいるのは自分も腕を使用不可能にする大けがを負ったせいで足手まといになったからだろう。もしかすると元番長を待っていたのかもしれない。

 悔しげに呻いていた。


 元番長が走る。お前一人でどうする気だよ。と思うんだけど、さすがに彼を止める訳にも行かなかった。

 なので、僕はリエラの魔銃を叩いて気付かせる。

 気付いたリエラが回復の魔弾をレディースに打ち込み、僕らは元番長を追って走り出すのだった。

ご指摘にあった撲殺が僕殺になっていた件。その武器をどうやって手に入れたのかを彼女らは知らないの武器説明と合わせて直しました。

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