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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その遺跡の秘宝が何だったのかを彼らは知らない
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そのツッパリが何をしていたのか、僕は知らない

 階段を下りる。

 先頭はクーフ。次にカインと元番長が降り、ネッテ、バルス、ユイア、バズ・オーク、エンリカと付いて行く。

 彼らが下に向い少しすると、リエラがアルセを抱えた僕のもとへとやってきた。

 アルセは放置すると何するか分からないからこのピラミッド内ではこれ以上好き勝手やらせないぞ。

 という意味で彼女を抱き上げたらやっぱり元ミイラ少女もやって来て僕に抱えられることを望んできた。


 で、困っているところにリエラさんである。

 リエラは困っている僕を見て苦笑いを浮かべると、目の前までやって来てお辞儀をする。

 僕が戸惑っていると、リエラが凄く嬉しそうに言ってきた。


「きっと、あなたが倒してくれたんですよね。アルセが剣を扱えるわけがありませんし。あの、本当にありがとうございました。あなたがいなければ、私達きっとずっとあのままだったと思います」


 リエラ……いや、僕がいなければリエラは最初の森で魔物の餌になってたよ。そもそもここに来ること自体なかったって。

 というのは言っても意味はないし野暮なのだろう。


 何かまだ言いたそうなリエラ。その言葉を待とうとしたのだけど、アルセと元ミイラ少女が服を引っ張ってきたので我に返る。

 その態度にリエラも気付いたようだ。

 じゃあ急いで合流しちゃいましょう。

 そう告げて階段を先に進んで行った。


 残された僕はアルセと元ミイラ少女を抱えて階段を下りる。

 状況としてはパンを沢山買い込んで両手に袋を抱えてるおばさんみたいな状況か。

 腕力が無い僕としては腕がプルプルしているのですが、誰か代わってくれませんか?


 一番最後にぜぇぜぇ言いながら辿り着いた僕が見たのは、黄金色に輝く広間だった。

 無数の財宝がこれでもかと犇めく黄金郷。その中央に一つの柩。

 もう、誰が眠っているかはわかったようなものでしょう。


「これは……」


「水晶勇者の眠る地ダ。ちなみに、この黄金には呪いが掛けられているので持ちだすとダンジョンが崩壊する」


「冒険者殺しの最後の罠ね。でも、クーフの柩が置かれていた場所が見当たらなかったわね。やっぱり一番最初の部屋かしら?」


「ああ、でもこの黄金の山は目の毒だわ。手を出せないと分かってるから特に……」


 ユイアの眼がドルマークになってる気がします。

 っと、元ミイラ少女が降りたそうにしているので喜んで降ろしておく。

 ふらふらと歩く元ミイラ少女。その姿が青白い美少女になっていることに今更ながら気付いたカインたちがあれ? あんな娘いたっけか? みたいな顔をしている。


 少女は無言のまま金貨が積まれた山を踏み越え、柩に辿りつくと、いとおしそうに柩をなぞり、床に腰掛け柩にもたれかかる。そのまま眠るように寝そべり瞳を閉じた。

 水晶勇者の関係者かな?


「思い出した。彼女は娘だ。水晶勇者が昔作ったらしい娘。埋葬後にやってきたのだが数ヵ月後に後追い自殺をしようとしてな。仕方が無いので同じ墓に埋葬してやることにしたのだ。そう……だ。そうだった。我は一番最後に、そう、最後に勇者の身許へ向いたいと願ったのだ。おお、思い出す。思い出すぞこの記憶……」


 クーフはゆっくりと金貨の山を踏み出した。

 少女同様柩の前へと辿り着くと膝をついて柩に触れる。


「ああ、懐かしい。あの日々の記憶。そうだ。そうだった。我は……」


 その姿を見て、カインは静かに踵を返した。

 気付いたネッテとバズ・オークが同じように音を立てずに階段を上がる。おお、リエラも察していたらしい、ちゃんと一緒に階段を上がっている。

 困ったのはバルスたちだ。

 彼らがなぜ帰って行くのか理解できずにあたふたしている。


 ああ、でもエンリカはバズ・オークが上がって行くので後を追って行ってしまった。

 うん、まぁ僕らも行こうかアルセ?

 分かっていないアルセが水晶勇者の柩を開けてしまい彼らの記憶を台無しにしてしまわない内に退散することにした。


 しばらく、そっとしておこう。クーフたちが思い出に浸れるように。

 アルセが階段に向うと、バルスとユイアも仕方なしに階段に向って歩き出す。

 二人の視線がしきりに背後、クーフ達ではなく黄金に向いていたのはきっと気のせいだろう。


 階段を上り切ると、皆が待っていた。

 ただし座り込んで。

 さすがに皆疲れているらしい。

 ……あれ? そういえば元番長はどうした?


「はぁ。しっかし凄かったなここは」


「国の近くに別の国や未発見の遺跡があるとはね。この辺りは冒険者に入らないようギルドに報告した方がよさそうね。下手に侵入した冒険者のせいでミイラパニックが起きても問題だし」


「水晶勇者の墓……かぁ……あの絵本読んだからかな、本当に昔あった話なんだと思うと、勇者って凄いなぁって改めて思えますね」


「そういえば。水晶剣だけで魔王の軍勢と戦ったんでしたっけ」


「だな。それを思えば今は平和だよな。水晶勇者が魔王を討伐してくれたから俺ら人間はこうやって冒険出来てるんだぜ」


 カインたちがしばらく無駄話をして休んでいると、ようやくクーフ達がやってきた。

 ああ、やっぱり元番長はクーフと一緒だったのか。待ってたのかな?

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