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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その遺跡の秘宝が何だったのかを彼らは知らない
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その勝利をどうやって手に入れたのか、彼らは知らない

 ふぅ。と息を吐く。

 目の前には首が落とされたミイラ。

 思わず動いていたし僕がやらなきゃどうにもならなかった訳だけど、人型の首を切るのはさすがにちょっと嫌な気分だ。


 ん? 何か落下したぞ。

 首元から千切れるように地面に落ちたのは、ペンダントだった。

 どうやら紐で首にぶら下げていたようだけど、僕がミイラの首を切ったせいで落ちたらしい。

 思わず拾い上げる。


 それは三つの剣が交差する紋様が象られた丸いペンダントだった。

 全体的に円盤状で前面には三つの剣が交差する紋様が象られ、裏側には何か文字が書かれている。

 多分古代文字とかなんだろうけど……僕には日本語にしか見えません。


 ――我等アメス、ミルクラトス、ルドト。アメミルドの三名は生まれ落ちし場所も育てし場所も違えども、健やかなる時も、病める時も、共に分かち、共に歩むことをここに誓う。願わくば、同じ日、同じ時、同じ瞬間に息絶え、共に永遠にある事を求む。全ては我らが英雄、水晶勇者に捧ぐ。我らが命、燃え尽きるまで――


 結婚の誓いかよ!? 桃園の誓いかよっ!?

 どっちにツッコミ入れればいいのか迷うよっ。

 どうやらこの三体のミイラの名前がアメス、ミルクラトス、ルドトという名前の人たちだったようだ。

 三人合わせた化け物状態はアメミルドと呼べばいいのかな?

 仲良し三人組だという事はわかった。

 まぁとにかく、これはさすがに持って行く気にはなれないね。この誓いのペンダントは彼らのモノだ。返しておこう。


 そっと、首のない遺体にペンダントを返しておく。

 ふと顔をあげれば、ミイラ少女がこちらを見つめていた。

 どうやら復活できたようだ。

 という事は、即死ブレスとかではなかったということかな。


 ミイラ少女の無事を確認した僕の周囲でカインたちが動きだした。

 あれ、皆ついさっき攻撃受けたのにミイラ少女より復帰が早い?

 もしかして……この三体のミイラを倒したら動けるようになる呪いとかが掛かってたのかな?


 後から変な症状がでないようなら問題はなさそうだ。

 一先ず安心かも知れない。最悪、一人ずつ背負って教会まで行くべきかと悩んでたけどそんな事にならなくてよかった。

 カインがかぶりを振って起き上がり、現状の確認を始める。

 さすが勇者というべきか、他の皆より動きが早い。


「皆は……無事だな。どうやら敵も倒せたみたいだし、バズ・オークか。良くやってくれた……って訳じゃないか。倒れてる感じからして同じ攻撃喰らったみたいだな」


「ぶひ」


「あなた……良かった無事で」


 互いの無事を確認し合う豚とエルフ。リア充爆死してしまえ。

 仲間の無事が素直に喜べない僕は心の狭い人間なのでしょうか? 後で神父さんに懺悔しよう。聞こえないだろうけど。

 ……そういえば、あの教会懺悔室見当たらなかったけど、あるのだろうか? 今度探してみよう。


「結局、どうなったのユイア。私がやられた後は?」


「えっと、私もネッテさんの後にブレスで……エンリカは?」


「その次に夫を庇って、あなたが倒してくれたんですか?」


「ぶひ……」


 エンリカの言葉に被りを振るバズ・オーク。そこは嘘でも自分がやったでいいじゃん。

 が、バズ・オークが視線を向けたのは、自分が何故倒れたのか分からず首を捻っているらしいアルセだった。

 僕の功績がアルセに掻っ攫われたようです。


 女性陣が集まってアルセを撫でまくっている。

 そして代わりに化け物のもとへ、いや、僕が倒したルドトの切断面を見ながらアルセがどうやって倒したのか検証を始めている。

 ついでにクーフがペンダントに気付いて古代文字を読んでいる。


 でも首捻ったぞ今。古代文字なのに読めてないのか!?

 しばらく見入るように読んでいたクーフはそっとルドトの背中にペンダントを置いてアメスとミルクラトスのペンダントを探して裏面を読みふける。

 気分は遺跡発掘調査隊とでも言うべきだろうか?


 クーフの奇行に気付いたネッテ達も近づいて来て古代文字解析を始めていた。

 エンリカ頑張れ。君ならきっと古代文字も喋れるようになるはずさ!


「なんか、この台詞はいいですね。あなた、誓いの言葉、これでどうかしら?」


「ぶひ……」


 バズ・オークが悟ったように疲れた顔をしている!?

 結婚式を開く時は確実に誓いの言葉を再度告げることになりそうだった。


「しかし、すげぇのが居たな。ここがボス部屋ってヤツか?」


「一本道でしたし、アルセが来た方へ抜ければいいんですよね?」


「あら、それは止めとくべきよ。アルセがこっちに来たってことは実りが無かったからじゃない?」


「そういえば、この辺りに隠し扉があったような……」


 クーフが古い記憶を頼りに歩き、地面にしゃがみ込む。

 そして、ガコン。と隠し階段を見付けたのだった。

 下へと続く怪しげな階段。

 ようやく最奥部へと辿り着く道が現れたようだ。

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