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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その遺跡の秘宝が何だったのかを彼らは知らない
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その王国跡の記憶を彼以外知らない

 遺跡、見つけちゃった。

 北の森を探した僕らは、幾らもしない内に遺跡っぽいのを見付けていた。

 それだけじゃない。まるで王国跡のような広大な密林に紛れた城跡が存在していたのだ。森の一部と化したように緑化してたけど。


「すげぇな。これがコーカサスの森北西部にあるセルヴァティア王国跡って奴か」


「おお、覚えている。この門。知っている。あの道も、この建物も……」


 クーフが感動に打ち震えるように王国跡に入っていた。

 件の遺跡はこの王国跡の斜め横に存在するピラミッド型の場所なんだけど、そっちは完全無視です。

 おお、あのピラミッド、頭頂部に剣が突き刺さっとる。

 煌びやかというか、アレ水晶剣じゃないか?


 とりあえず、クーフを追って皆が王国跡を探索する。

 感動気味のクーフは皆の存在を忘れたように先に先にと歩いて行く。

 しかも早歩きなのでかなり速い。

 カインが小走りになる程の速度である。


 アルセを連れていくのは無理だと思えたので僕が抱えて飛行アルセバージョンで向うことにした。

 隣をあるくリエラがアルセの笑顔に気付いてよかったね。とか言っていたけど、なにがよかったんだろうか?

 というか、前を歩くバカップルがちょっと爆死して欲しいんですけど、どうにかなりませんか?


「ここに居た……」


 クーフがようやく立ち止まる。

 眼の前に聳え立つのは崩壊した王城だった。

 当時は煌びやかだったと思われるそこは、既に風化した遺跡と化している。


「なんという痛ましさ。ダガ、だが懐かしい。記憶が蘇る。おお。おおそうだっ。我はここに居た。あの方の願いを叶え、国を作った。思い出してくるぞ。ああ、なぜ今まで忘れていたのだ!?」


 忘れてたのはミイラ化したせいだと思います。というか、脳みそカッサカサのはずだけどよく記憶復活しましたね?

 涙を流す即身仏。ちょっと怖い。

 でも、はて、なんか昨日関連しそうな話を聞いた気がするのだけど、なんだっけか?


「ずっと、水晶剣を運んでいた。彼と出会ってから、死んだ後も、ずっと、ずっと運び続けた。それを集めることこそ我が人生というように。我が王国は水晶剣の国と呼ばれていた。その栄華も、いつの日かこうして風化したのだな……」


 感傷に浸るクーフの言葉で思い出した。

 もしかしてですが、クーフってあの絵本に出て来た剣持ちソウタとかいう奴なのでは?

 水晶剣の勇者の従者として水晶剣を持ち運んで最後まで生き残った少年だか青年。

 ソウタの名前からしてなんとなく予想してたけど、クーフの名前と関連付けしたらなんか別の事実も思い付いてしまった。


 多分どうでもいいことだろうけど、クーフは異世界人だ。

 異世界から転移か転生したのが剣持ちソウタ。きっと壮太とか颯太という名前だったに違いない。

 だからミイライコールクーフなんて名前がでてきたんだ。


「……すまん。時間を取らせたな」


「いや、それはいいんだがクーフ。もう良いのか?」


「ああ。我が国がここにあった。それが見つかっただけで十分だ。我が創りし国は確かにあり、我らが営みは過去に存在した。それが分かれば充分なのだ。今はお前達の時代。我は感傷に浸れるだけマシだ」


 少し憑きモノが落ちたような顔を向け、クーフが遺跡に向けて歩きだす。

 そのまま呪いが無くなって成仏したりするんだろうか?


「行くのだろう、あの遺跡に」


「あ、ああ。しかし、なんだろうな。水晶剣。どっかで聞いたような……」


「カインさんもですか、私もなんか聞き覚えがあるというか似たような話を読んだような……」


 いや、昨日読んだでしょうよリエラさん。

 あんたがアルセに読み聞かせた絵本だよっ!

 しかし、僕のツッコミは誰にも気付かれなかった。


 まぁ絵本を見せたところで納得されて終わりだろうから放置するけどさ。面倒だし。

 それにクーフも自分のことを知りたいとか思っている訳ではなさそうだ。

 多分自分のいた国の現状が見れただけで満足出来たのだろう。


 王国跡を出た僕らはようやくピラミッドへと向かう。

 スフィンクスはないらしい。

 代わりに入口の左右に水晶剣が突き刺さっている。


「これ、抜いて持って帰ったらどれくらいの金額になりますかね」


 水晶剣は入口だけではなく無数に装飾としてピラミッドに刺さっている。

 多分この剣引き抜いて売りに出すだけで物凄い金額になるだろう。


「止めておけ。ここは水晶勇者を祭る霊廟だ。この全ての剣は彼に捧げられしモノ。引き抜けば呪われるぞ」


「うえぇっ!?」


 剣の一本に手を掛けようとしていたバルスが慌てて手を引っ込めた。

 ああ、わかった。きっとあのクーフの呪い。水晶勇者の呪いとかそんな……あれ? でもクーフが勇者じゃないから違うか。でも似たようなものだろう。

 きっとこの辺りの剣は全てクーフの呪いが付加されているはずだ。

 まかり間違ってもクーフが許可したモノ以外の宝物には手を付けないようにしよう。


 アルセも何かを察したようで水晶剣には触れようとしない。

 一度無理に近づけたら慌てたように逃げようとしたし、本能で呪われるとか分かるのかな?

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