第八話 ~能力者~
第八話投稿です。指摘がありましたので書き方など修正してみました。少しでも良い作品をお届けできるようになりたいので指摘などありましたら是非。投稿済み作品も余裕を見て修正していこうと思います。
それでは第八話お楽しみください。
社会的に能力者は二種類に分けられる。戦闘適応能力者と社会適応能力者の二種類だ。
戦闘適応能力者は文字通り戦闘を行う能力者であり、能力者傭兵もこのカテゴリーに分類される。
他にもSP(security police)や軍隊に所属する能力者もまた同様である。
そしてもう一つ、綜合警備会社社員である能力者もまたこの戦闘適応能力者だ。
能力者が現れだしてからというもの、その能力を悪用して犯罪を働く者が急激に増加した。
能力者を制するのは能力者。そのために、世界中の資本家がパトロンとなって能力者を主力とする警備会社を立ち上げるに至った。現在では世界中の能力者の約30%が警備会社に就職している。
社会適応能力者についてはその範囲は広いが、戦闘適応能力者以外の能力者だと思ってもらって構わない。
一般企業に就職している者もいればNGO、NPO団体に所属し、その能力を社会のために役立てている者もいる。
戦闘適応能力者はアーミー、社会適応能力者はソーシャルとも呼称されておりこちらの方が呼び方としてはメジャーである。
つまり学校のカリキュラムも二つに分かれるわけで、
「よし! てめぇら、基礎訓練はこれで終了だ!」
新学期が開始しておよそ一週間がたった。土曜のお昼にさしかかるころ、3年生はグラウンドに集結していた。土曜の午前中は基礎訓練と呼ばれる体力と、一定レベル以上の戦闘力を身につける授業が組まれている。
能力者という特性上いつ何時狙われるかわからないのだ。自衛の手段は持っていなければならない。
「飯食ったらアーミー(戦闘適応能力者)とソーシャル(社会適応能力者)に分かれて訓練すっぞ。うちのクラスは~、……第2グラウンドだ。それじゃ解散!! さっさと飯食ってこいよ」
授業が終わり、肉体労働から解放された生徒たちがけだるそうに更衣室へと向かう。
そんな中で一人、疲労の見えないシンクの後ろから二人の少女が声をかけた。
「お疲れ~、……って、あんたもしかしてまったく疲れてない?」
「おう、お疲れ。なんで?」
「だって、あんだけきつかったのに息ひとつ切らしてないじゃない。」
「それはリセも同じだろ?」
「さっきまでは切れてたわよ。しかも全然汗かいてないじゃないの。こっちはそのままプールに飛び込んでもいいってくらい汗でべとべとなのに……」
「ま、昔から身体だけは鍛えてたからな。……ところでそれはどうした?」
そう言ってシンクが指差したものはリセの肩にぶら下がった金色の何かだ。
「それとは、ハァ、ハァ……なん……ですか、ハァ……それとは。ハァ、ハァ……ちゃ、ちゃんと、ハァ、ハァ……名前で呼んで……ください……」
「す、すまん……セリーはどうしたんだ?」
「いつものことよ。このこったら人より体力ないもんだから。
トレーニングとかめんどくさがるくせに負けず嫌いだからいつもこうなるのよ。呆れるわよねぇ?」
「ほっといてくださいな!」
「今日ごはんどうするの?」
「俺? 今日はラーメンでも食おうかなって」
「神龍飯店? 私も行く! あんたの方が着替え早いでしょうから先行って待ってて」
「分かった、席とったら連絡する」
「よろしくね~」
「……お、おねがいしますわ……」
そうして二人と一つは更衣室の前で別れた。
あの食事会以来、シンクと二人の仲はとてもいい形で続いている。シンクに他の知り合いがいないわけではないが、この二人とが一番馬が合うため一緒に行動することが多いようだ。
昼食の時間も終わり場所は第二グラウンド。野球場ほどの広さがあり、観客席までついている。
「よ~し、それじゃあ出席とるぞ。一から最後までいないもの挙手……いないな。じゃ授業始めんぞ~」
「(((適当すぎるだろ……)))」
あいも変わらずな担任の号令で午後の授業が開始された。午後は能力の授業だ。
「んじゃいつも通りアーミーはグラウンド中央に、俺が担当する。ソーシャルは端っこでいじけてやがれ、万年ジャージ野郎(山本教諭)が担当だ」
号令を受けて移動し始める生徒たち。シンクはというと、
「ちょっと待てい!! 世渡てめぇなんでソーシャルの方に行ってやがんだよ!?」
「グエッ!?」
ナツキに体操服の襟をつかまれ、首を絞められた。そのせいでシンクの喉からヒキガエルの鳴き声のような音が発せられた。
「何すんですか!」
「テメェが何してんだよ。お前はこっちだ!」
「いや、だって俺の能力は戦闘向きじゃないし……」
「実践経験豊富な奴が何言ってやがんだ!? テメェはただ見て模擬戦の相手でもしてりゃいいんだよ!」
そう言ってナツキはシンクをグラウンド中央まで引きずっていく。
「首絞まってます、首絞まっでまずっっでばぁぁぁぁ!!」
「ねえリセ?」
「ん? 何セリー?」
「シンク君こっちじゃなくて残念だったわね」
「え、なんで?」
「ほら、だからさぁ、ねぇ?」
「?」
「もういいわよ……(この娘思ったより手強いかも……)」
「でも私てっきり戦闘向きの能力者だと思ってたわよ」
「確かにそうね、私もそう思っていたわ」
「おい!! そこなに喋ってる!! 授業はじめるぞ!!」
「山本め、叫ばなくても聞こえてるっての・・・セリー、行くわよ」
「ええ」
グラウンド中央に引きずられるシンクを視界の端でとらえたまま山本のもとへと二人は向かった。
「お、俺は、げほっ……何すればいいんですか?」
締められていた首をさすりながらシンクはナツキにジト目で問う。
「的だ」
「的?」
「おう、的だ。お前には模擬戦をやってもらうが、お前はよけ続けろ。攻撃は禁止だ」
そういうと他の生徒たちへと視線を向ける。
「そうだな……」
そう言いながら一人の生徒へと顔を向ける。’ニヤリ’と音が聞こえそうなほど口元をゆがめる。
「ロベルト・パーカー、お前が相手しろ。好きに殺っていいぞ」
獣のような獰猛の笑みを浮かべながら、黒人の大男ロベルトをシンクの相手に指名する。
身長は二メートルほどであろうか、その異様なまでの肩幅から受ける威圧感は半端なものではない。
「でかっ!? ……なんですか先生、転入生いじめ?」
「神波学園の洗礼ってやつだ。ありがたくもらっておけ!」
「うわー、いらね~」
そんな会話をしているうちにロベルトがシンクの真正面に立つ。
「ヨロシク頼むゾ。オマエとは一度戦ってミタカッタ。オマエのマニア、見せてモラウゾ」
かなり高い位置からかけられるその言葉はもはや脅迫にしか聞こえない。
「(おっかねぇ~)」
無表情なロベルトに対してまたポーカーフェイスで相対するシンクの心情は消して穏やかなものではない。
ただ単に怖いのだ・・・その容姿が。
「さっさと距離開けろ!!」
そう急かすナツキにシンクは一瞥をくれるとすたすたとロベルトとの距離をとり再び相対する。
普段ならば他の生徒たちも同様に相対し模擬戦の準備に入るのだが、今回はこの戦いを見るためにすでに観客席へと移動している。
ナツキもまた黙認するつもりのようでその生徒たちの間で座り込んでいる。
「さて、見せてもらおうか。鬼児と呼ばれた貴様の力を……」
口元にはいまだに獣臭いニヤリとした笑みを浮かべているが、サングラスの奥底にある瞳は全く笑っていない。
その表情から彼が何を考え、何を意図してこのような模擬戦を仕掛けたのか、誰も知ることはできない。
「リセ、ちょっとあれ見て!」
「え? って、シンク!? しかも相手はロベルト……先生えぐいわね……」
「あれ大丈夫かしら?」
こちらの生徒たちもやはり転入生に興味津々のようで、まったく授業にならないことから、
「お前ら!! ……はぁ、もういい。今からは見学だ。静かにしてろよ」
と、山本もさじを投げて観戦に加わった。実際のところ本人が一番乗り気だったようではあるが……。
「よ~し、それじゃあさっさとはじめろ!!」
ナツキが投げやりな声を出す。
「悪いがテカゲン出来んゾ」
「そんなもんいらんよ……」
そう言ってシンクは自分の左目に手を添える。
「コーーーーーーーー……」
長く息を吐き、頭のてっぺんに力が集まるイメージをする。そして息を思いっきり吸い込み、
「フッ!!」
一気にはくと、同時にイメージした力を左目に流し込む。
瞳にに手を添えたままロベルトを向き直る。
世界が広がっていく。
見える……
見える……
物質で見えないものなど何もない
見えるもので知らないものは何もない
恐れるものは何もない
ゆっくりと添えた手を離す。その瞳には文字のような、図形のようなものが描かれている。
それは少しずつだが、まるで調整でもするように位置を変えている。
「来いよ。俺は的なんだ、一発でもあてられるよう頑張るんだな」
第八話、いかがだったでしょうか。楽しんでいただけたなら幸いです。ようやくシンクもやる気出して来たんで作者もまたがんばっていこうと思います。まだまだ暗中模索で文章をどうやったらうまく書けるのかわかりませんが、頑張って書いていこうと思います。
最後まで読んでくださった読者の皆様にはいつも感謝してます。感想などいただけると励みになるのでよろしければお願いします。
それでは次話でまたお会いしましょう。