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異世界チート魔術師(マジシャン) 作者:内田健

第一章:普通だと思ってたら異世界ではチートでした。

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太一の邪気はもっと凄い事に……?

連続更新!

このペースは、あまり守れないと思います。。。

今回は時間的な運が良かったです。
基本、不定期な更新になると思います。
「後ろ盾のほうは任せておけ。その者につけば大抵の問題が解決する人物を紹介しよう」
「……そんな都合よく行くのか?」

 人生は常に準備不足の連続である。手持ちのカードで切り抜ける癖をつけておくべきだ。
 何を媒体にこの言葉を知ったかは覚えていない。誰かが言ったのか、何かの本に書いてあったのか、洋画で出たセリフか、はたまた漫画の一コマか。
 だが太一の中で「なるほど」と感銘を覚えさせるに足りた。好きな言葉の一つである。
 この言葉を考えのメインに持ってくるのなら、「話が上手く行き過ぎている」だ。
 異世界で運良く腕利きの冒険者に助けられ。
 運良く奏の魔術の才能が発覚し。
 運良く後ろ盾に最適な人物が存在する。
 まるで台本どおりに物事が進んでいるかのような順調ぶり。誰かが、運命をいじっているんではないかと益体の無い事を考えてしまうのも当然と言える。
 だが、ギルドマスターは笑みを浮かべるのみだ。

「肩書き上、ワシの言葉は数多の冒険者に影響を及ぼすのでな」
「マジかよ……」

 適当な事はいえない、と。
 上手く行き過ぎて不安になってくる。こんな事もあるのかと、太一はこめかみを揉み解した。

「さて。くだんについては任せておけ。もう一つの用件もさっさと済ませてしまおうか」
「もう一つ?」

 太一が疑問符を浮かべると、ギルドマスターは呆れた顔を隠そうともしない。

「登録に来たのだろう? お前さんは魔力を測定したのかね?」
「あ」

 奏の事で頭が一杯で、すっかり抜け落ちていた。このまま言われなければ、そのまま立ち去っていた。お姉さんも奏もどうやら忘れていた様子。仲間がいてホッとした太一だった。

「お前さんは普通である事を祈っているよ」
「ああ。それについては激しく同意」

 奏はこれから色々と面倒くさい事になるだろう。もちろん出来る限り力になるし、こんな世界に放り込まれた以上は一蓮托生だと思っている。だが、どうにか守るにも奏だけで精一杯だ。その上自分までそんな訳の分からない事になってしまったら。
 これを、「ありえない」と断言する要素が一切無いのが悲しい。何せ目の前で「ありえない」はずの出来事が起きてしまったのだから。
 まあ唯一の救いは、自分にも魔力がある可能性が出てきたという事か。最も、これで太一に魔力の適正が無かったら、冒険者は辞退するつもりでいる。奏だけにやらせるつもりは毛頭無い。
 どうかババを引きませんように―――
 そんな事を最後に願って、太一は思い切って水晶に触れた。
 相変わらず穏やかな光を湛える水晶。この場にいる全員がそれに注目する中、数瞬の沈黙が落ちる。
 ややあって、水晶が輝きを強くする。
 だが、太一も奏も。お姉さんもギルドマスターも一言も声を出さなかった。
 いや出せなかった。
 水晶が放っているのは、無色透明の光だから。
 表現がおかしいとは太一も思う。普通光といえば、黄色だったりオレンジだったり白だったりするだろう。人によって千差万別だろうから、ある人が白と言ったものを別の人は黄色と言うかもしれない。だが、所詮はその程度の差。そして両方に共通するのは、二つとも光に色を感じている、という事だ。
 だから、おかしい。
 無色透明の、光なんて。

「えー……っと。これはどういう事?」

 やっとの思いで声を出す太一。
 何を問いかければいいか少し考えて、出てきたのは何の変哲も無い質問だった。
 最も、それしか言える事が無かったのだが。

「何故だ……何故色が出ん……」

 それに答えたのはギルドマスター。二〇〇万人に一人の確率でしか存在し得ない奏の時よりも、更に驚いているように太一には見えた。
 どうやらこれもまたおかしな事をしでかしてしまったらしい。しかもそのリアクションから予測するに、奏の時よりも更にとんでもない事を。
 とはいえ、どうしようもない。
 自分の制御下に無いところで起きてしまったのだから。

「……色って出るのが普通なんですか?」

 やっと再起動が済んだらしい奏が、ギルドマスターとお姉さんに問う。お姉さんは再び機能停止していたが、辛うじて動けるらしいギルドマスターが頷いた。予想外の事には弱いらしいお姉さんと違い、流石はギルドマスター。動揺していてもやるべき事は分かっているようだ。

「うむ。この水晶はな、手を触れた者が魔力を持っているかどうか。それと、どの属性に適正があるかを判定するものだ」

 あまり近くは無い過去、とある高名な魔術師が、この水晶を作成したらしい。
 対象者の魔力の有無。そして、どの属性に適正があるか。
 機能はそういう事らしい。
 そしてその中で最も大切なのは属性の判定。魔力を持つ者はすべからく何かしらの属性に適正があるという。
 赤なら火。
 緑なら風。
 黄色なら土。
 青なら水。
 それぞれの輝きが発現して、その者は魔力を持つ、つまり魔術を使える可能性がある、という判定が下される。
 属性への適正が無い=魔力を持たない、という方程式が成り立つのが基本だと、ギルドマスターは言った。
 先ほどの四つは四大属性といい、全ての属性の基本だと言う。
 中には雷や毒、冷気等の属性を操る者も確かにいるが、それらの属性も大元を紐解けば四大属性のいずれかから派生・或いは改良して生まれた事が判明するらしい。
 魔力があるのに、属性への適正が無いという事は。

「……えっと、ちょっと待って。俺はこれを、どう解釈したらいいんだ?」

 どういう事かは分からないが、どうやら引きたくも無いババが回ってきたらしい。

「うむ……。実はな……」

 この重々しい雰囲気は非常に嫌な感じだ。どのような言葉が返ってくるのか。太一は無意識に喉を鳴らした。

「これは……」
「こ、これは?」

 ギルドマスターは真顔で太一を見据えた。

「分からぬ」

 思わずコケてしまったのは許して欲しい。

「あれだけ引っ張ってそれかよっ!?」

 とんだ肩透かしだ。
 見れば奏もお姉さんも呆れている。
 太一からの文句と、奏とお姉さんの冷たい視線を受けて……しかしギルドマスターは、顔色一つ変えずに真面目なままだった。そこにただならぬ空気を感じ、太一は追撃の矛を引っ込める。

「すまぬ。本当に分からぬのだ。ワシとて伊達にギルドマスターをやっているわけではないが……こんな事は初めてだ。どういう、事なんだ……」

 搾り出すような声を出し、水晶を見据えるギルドマスター。
 その言葉からは出会い頭の軽い調子は一切窺えず、太一も二の句が継げなくなってしまう。
 これは、どうやら尋常ではない。
 奏も奏で大概だが、彼女のときのギルドマスターの対応は全く淀みが無かった。まるでこうするのが最善、という着地点をあらかじめ理解していたかのような様子で、筋道立てて太一と奏に道を示してきた。
 冒険者を登録しに来ただけの者に対する措置としては破格だが、二〇〇万人に一人の逸材ともなれば、普通の対応で済ませていいはずが無い。まして相手は右も左も知らないようなヒヨッコ。それだけで本当にいいのか、もっと手を打てないかとギルドマスター自身は考えていた位だ。冒険者として是非ギルドに身を置いて欲しい、という思いもある。純粋にこれから未来を紡いでいく若者が、下衆の飯の糧になるのはあまりにも不憫だ、という年長者の老婆心もあった。
 一方、太一に対してはどうしたらいいのかがさっぱり分からない。
 複数属性への適正や、膨大な魔力の持ち主である、というのなら、奏と同じような対応を取ればまあ、当面は大丈夫だと言える。ギルドマスターが頼ろうとしている先は、下手をすればその辺の貴族よりも権限を持っているからだ。当人は権力に興味が無さそうだが、それもこちらが折れて貸しを作れば動いてはくれるだろうと考えている。利害一致を持ちかければよいのだから。
 しかし太一の場合は想定を遥かに超えてしまっている。
 水晶のこんな反応は見たことも無いし、彼が生きてきた中で他のギルドマスターから聞いた話でも、これに該当するような人物はいなかったと記憶している。
 普通なら、魔術は使えないと考えるべきなのだろう。
 しかしそれでは、魔力はある、という事実を覆せない。
 色を一切含まない、純粋で透明な水晶の輝き。

「バカな……まさか……」

 思い当たる節が、無いわけではない。
 しかしそれでは、彼らが背負う運命は余りにも過酷過ぎる。
 奏でさえ既にキャパシティオーバーなのだ。その上太一までその枠に入っているとあっては、十五歳で背負える荷物とは到底思えない。ギルドマスターがそうだったとして、背負っていけるか断言する自信が無い位だ。
 だが、一度浮かんでしまった仮説を覆せる要素を持ち合わせていないことに、ギルドマスターは舌打ちを隠そうともしなかった。
 先ほどから一連の彼の様子を見て、胸中穏やかではないのは太一と奏である。
 ただならぬ気配を、彼から感じる。
 それも、思いつく限り、碌なことではない、という予想が立てられる位には。

「タイチ、と言ったな」
「あ、ああ……」

 彼から発せられるプレッシャーに、太一はこめかみから汗が流れるのを感じる。
 普通なら冒険者になりたての弱輩者を相手にするときは気を使う彼だが、今はそこに気が回らないほど、困惑していた。

「お前さんは、下手をすればカナデよりも拙いかもしれん」
「えーっと……そういうのはいらねーかなって思うんだ、俺」
「茶化すな。ワシとて確信がある訳ではない。だが、ワシが持つ知識では、すまんがこの仮説以外に思い当たらなかったのだ」

 軽い調子を即座に諌められ、太一は首を竦めた。
 最早逃れる事は敵わないだろう。覚悟を決めて、太一は頷きを返した。

「お前さんは、ユニーク・マジシャンの可能性がある」
「な、なんですって!?」

 間髪いれずに声を返したのはお姉さんだ。

「ユニーク・マジシャン?」

 一方言葉の意味が分からずに疑問符を浮かべたのは奏。二人に温度差があるのは仕方が無いことだろうとは思う。
 奏の記憶と解釈が正しければ、ユニーク、UNIQUE……唯一、とか特有の、とか、そういった意味のある英単語だったように思う。異世界にきて英語の事を考えるとは思わなかったが、これは、あまりよろしくないかもしれない。
 ギルドマスターは頷いて、答えた。

「そうだ。火、水、風、土。その全てに当てはまらない属性。この世界では、『固有魔法』と呼ばれている。それに適する者が存在する確率は、フォースマジシャンよりも圧倒的に少ない」
「え”っ」

 濁点つきの汚い言葉で答える太一。
 規格外だったのは、奏だけではなかった。
 そちらに気を取られた事で、太一と奏は疑問に思わなかった。
 余りにも自然で、疑問に思う暇すらなかったのだ。バラダー達を含め、今までずっと彼らは「魔術」と形容していた。それが初めて「魔法」と呼ばれたことに。そしてその言葉の違いに、大きな意味があった事に。

「すまぬな、タイチ。ワシも今すぐに、お前さんをどうするのが最善なのかが浮かばん。当面は、カナデと共に行動すると良かろう。彼の者は魔術には明るい。ワシのようなにわか知識ではなく、きちんとした理論でもってお前さんたちに応えてくれるだろうて」

 見れば彼の横で、受付のお姉さんも神妙な顔をしている。
 どうやら現時点では、彼らに出来る事はそれだけらしい。
 それ以前に懇切丁寧な謝罪をされているのだ、彼らに何ぞ文句があるはずもない。むしろ親身な対応をしてくれたほうだろう。

「ワシは書簡を書いてくる。お前さんたちに紹介する者の名はレミーアという女だ。ちいとばかり偏屈だが、まあ、魔術に関してはそこらの学者よりも詳しい。本人も超がつく一流の魔術師だしな」

 偏屈、という言葉が引っかかるが、どうやら優秀な人物のようだ。
 その言葉を聴いた瞬間に、受付のお姉さんが少し眉をひそめたのを見逃したのは、太一と奏にとって幸か不幸か。

「冒険者の登録は問題ない。二人とも魔力があるのを確認した。後はマリエから手続きを受けるとよかろう」

 受付のお姉さんはマリエと言うらしい。そういえば、今まで名前も知らなかった。手続きだけだと思っていたから、二人とも名前を聞くつもりが無かったのだ。

「手続きが終わる頃には書簡も出来上がるだろう。では、ワシはこれで失礼する」

 最後にとてもギルドマスターらしい姿を見せて、小さいオッサンは退室した。
 彼らの後姿を見つめながら、二人は自分の身に降りかかった夢みたいな出来事を、未だどう受け取っていいのか分からずにいた。
次回、女性キャラが二人登場します。
ヒロインと、なるかな……? そして、奏の対抗馬となるかな……?

太一君の規格外さは、次回以降で。異世界基準ではかなり規格外な奏ちゃんとの間にある、超えられない壁も明らかになります。

あ、マリエさんはMOBです。
太一、奏と今後仲良くなっていきますが。

戦闘シーン……もとい、太一君の無双が書けるのは、いつかなぁ。。。
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