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異世界チート魔術師(マジシャン) 作者:内田健

第二章:元高校生は冒険者として生活してます。

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再会

あの人たちが登場します。
関係は泥沼……なんですかねえ。
設定上はかなり良好なんですが(笑)

ていうか2000000PVですか……
何が起きてるんでしょうねえ……
 結局予定より二日オーバーの四日間をレミーアの家で過ごした。
 もちろん、無為な時間を過ごした訳ではない。むしろ充実した時間だった。
 まず、太一がミューラから剣術を習った。武器と言うより、見た目と体裁のために剣を持っていた太一に、ちょっと稽古に付き合って、と言い出したのはミューラの方である。ミューラとしては、太一がまともに剣を扱えるとは思っていなかった。
 強化無しで打ち合ってみた最初の掛かり稽古。ミューラの一の太刀すら受けられなかった。オークを切り伏せたのを見て、ミューラの剣が凄まじい事は分かっていた。だが実際に見てみると、切っ先の動き出しすら捉えられなかったのだ。目の前でピタリと止まる剣先を認識して冷や汗をかく太一。この世界でここまで生きた心地がしなかったのは、あの日黒曜馬に襲われて以来だった。

「剣だけならあたしの勝ちね。いいわ、少し教えてあげる」

 切っ先を太一に突き付けたまま、不敵に微笑むミューラに見とれたのは内緒である。
 その一方、奏は自らが開発した音波ソナーの魔術をレミーアに教えた。
 半径二〇〇メートルにいる存在を、何となくだが知ることが出来るこの魔術。
 音とは空気の波である。現代の知識を披露したときのレミーアの食いつきようは半端ではなかった。人が何故音を認識出来るのか。音の波を鼓膜が受け取り、それを脳が認識して……等、高校一年生で知り得た知識の範囲内でレミーアの質問に答えていく奏。この世界での常識からは数百年の単位で先に進んでいる奏の知識にレミーアが疑問を投げ掛けたが、奏は「そういうもの」と断言した。
 レミーアの魔術における理解力はやはり半端ではなく、教えてその日のうちに使えるようになっていた。
 訓練を兼ねた休暇はとてもいいリフレッシュタイムとなり、三人は気持ちも新たにアズパイアへ戻ったのだった。
 出発間際、レミーアが「しばらくしたら私も街へ行こう」と言っていた。久々にジェラードに話すことがあるらしい。
 今はギルドの掲示板で手頃な依頼を物色中だ。前回は行けなかったユーラフに行こうかとミューラは頭の端で考えながら言う。ユーラフ炭坑探索の依頼書はどこだろうか。こう貼り紙が多いと見付けるのも一苦労だ。

「レミーアさん言ってたわ。音波ソナー魔術は、偵察とか斥候の常識を打ち砕く魔術だって」
「そうなのかな」

 奏としては、電磁波を使ったレーダーが再現出来なかったため、その場しのぎのつもりで作った魔術だったので、そこまで高い自己評価をしていなかった。

「自分を中心に半径二〇〇メートルの生物を捉えるって。そんな事されたら奇襲も不意打ちも出来ない。凄いことよ?」

 その為に作った魔術である。では何故カシムを追跡するときに使わなかったのか。そう問われたら、切羽詰まっていた、としか答えようがない。自分でもどうして使わなかったのか分からないのだから。

「ミューラの剣術も凄かった。やっぱ俺の紛い物とは違うや」
「流石に剣でも負けたらあたしの立つ瀬が無いわ」

 ミューラが教えたのは、構えと剣での切り方、そして受けの型をいくつか。太一に防御が必要とは思えないが、それでも対人相手の威圧には十分だろう。軽々と余裕綽々に受けられ、悠然と構えてくる敵を想像したら、背筋がぞっとしない。
 切り方については、攻撃の型というよりは刃物の扱い方だ。力任せに叩きつけるようなやり方だったため、刃が潰れてすぐナマクラになってしまう。
 因みに、教えたらメキメキと上達していく太一の筋の良さに、少なからず嫉妬したのは内緒である。

「あ、見付けた」

 ユーラフ炭坑探索の依頼書を見付けた。そうそう受ける者はいないだろうが、確保しておくに越したことはない。取ろうとして、斜め下からにゅっと可愛らしい手が伸びてきた。
 脇目も振らずに伸びるその手の先には、ユーラフ炭坑探索の依頼書。このタイミングでは間に合わない。慌ててミューラも手を伸ばそうとして、ライバルの手が、依頼書の手前で止まった。

「え?」

 冒険者がどの依頼を受けるかは、早い者勝ちである。気に入ったら確保してしまえばいいのだ。取られた方が悪い。だから、遠慮をする必要などないのだが……。

「……とどかない」

 依頼の奪い合いというバトルには似つかわしくないのんびりとした声が、三人に届く。
 とりあえず、依頼ゲットは早い者勝ちの法則に則り、ミューラはユーラフ炭坑探索の依頼を確保した。

「……むう」

 黒いローブを頭からすっぽり被った小さな影が、膨れっ面をしてこちらを見上げてくる。
 この顔に、太一と奏は、見覚えがあった。

「「あ」」
「……」

 こちらを見たローブの人物が目を丸くする。
 見間違えるはずもない。この世界で太一たちの命を救った恩人。アズパイアギルドのナンバーワンチームの魔術師、メヒリャだった。





◇◇◇◇◇





「はっはっは! しばらく見ねえうちに男前の顔になったじゃねえか!」
「いて! いててて!」

 バシバシと太一の背中を叩くバラダーが豪快に笑っている。

「まさか本当に冒険者になっているとは……その様子だと、順調のようだね。カナデちゃん」
「ええ、お陰様で」
「金の剣士と……チーム組んでる。びっくり……」
「ちょっと縁があって、組むことになったの」

 ここはギルドのホール。メヒリャに呼ばれてやって来たバラダー、ラケルタとも再会した。誰ともなく昼を共に食べようと言い出し、今に至る。
 事実はまだ明かされていないため、当人たち以外の冒険者はバラダーたちがアズパイア最高の冒険者チームだと思っている。更に、破竹の勢いで頭角を表した上、ミューラをメンバーに迎えた事で一気に時の人となった太一たち。彼らが一堂に介するテーブルは、他の冒険者たちの注目の的となっていた。

「どうだ冒険者は。楽な生き方じゃあねえだろ?」
「そうですね。厳しいです」

 ついこの間厳しい現実を味わった奏の言葉には、妙な実感がこもっていた。
 それを、依頼をこなすのが大変なんだな、と解釈したラケルタは、嬉しそうに笑った。
 あの時命を救った二人が、仲間を増やし、厳しい現実と向き合いながら生きている。その姿はラケルタたちにとって、助ける事が出来て本当に良かった、と思わせ、また明日の知れない冒険者稼業をしながら、再会を果たせたのは奇跡、と実感させるものだったから。

「金の剣士と組んでるってことは……Eランクに上がれたの……?」

 Eランク冒険者になるのに、たった一ヶ月は相当早い。実力そのものは最低でもBランク冒険者と言われるミューラに教わったとしても、早すぎる。そもそも上がれなくたって不思議ではないのだ。戦いのたの字も知らなかった若い二人が、一体どうやったのか。メヒリャは単純な疑問として聞いた。
 その質問に、深い意図は無かった。駆け出し冒険者の苦労話を肴にしようと思っただけなのだ。太一たちは顔を見合せ、やがて口をゆっくり開いた。

「実は俺たち、こないだCランクになったんだ」

 ラケルタが、食べようとしていたフライを口から落とす。メヒリャが目を丸くした。バラダーがコップを傾ける。中身の酒がだばだばとこぼれた。
 ギルドが、静寂に包まれた。

「……Cランクぅ? はっは、冗談きついな」
「そうだねえ、ドッキリだとしても、もう少し信憑性あるものがいいよ」
「……いくらなんでも……それは無理がある」

 バラダーたちは、それを三人の冗談として片付けるつもりらしい。こちらの話を聞いていた他の冒険者たちも乾いた笑みを浮かべていた。
 ミューラはおもむろにギルドカードを取り出し、魔力を込めて三人に提示した。

「……Cって、なってる……」
「「……」」

 これが嘘なら、ギルドぐるみのたちの悪い冗談ということになる。だが、そんなことは万が一にも起こり得ない。ギルドにとって冒険者ランクの評価はギルドの顔と同等。例え国家予算に匹敵する金を積んでも、捏造など出来はしない。
 チームのランクは、メンバー個々の実力が厳正に審査された上で決められるので、これは正式なランクだ。因みにCランク冒険者のチームにEランク冒険者が加入したりすると、ほぼ確実にチームランクはDに格下げされる。Eランク冒険者の実力がつかないと、Cランクに戻ることは出来ないのだ。
 冒険者を始めて一ヶ月強でCランクに到達。これはジェラードから聞いたが、文句なしの世界最速記録である。

「そんな馬鹿なああああ!?」

 外野冒険者たちの、魂の叫びがギルドにこだました。

「マジかよ……本当にCランクかよ……俺たちは苦労したよな……?」
「二年は掛かったかな」
「そもそも……Dランクに上がるまで……三年掛かった……」

 チートとレミーアという優れた師匠のおかげである。もっといえば、特に苦労した実感はない。DランクからCランクに上がったのも、指名依頼を無事達成、と評価され、副次的な報酬としてジェラードからもらったからだ。貰ったというよりは、依頼達成処理でギルドカードを預け、返ってきたらCランクになっていた、というのが正しい。想定外と思っているのは太一たちも一緒である。
 とはいえ、これまでの苦労を思い出して遠い目をしているバラダーたちに、掛ける言葉がない三人。
 バラダーたちはとても優秀な冒険者チームである。比較対象が悪かったとしか言いようがなかった。

「はあーあ。ちっと先輩面してやろうかと思ってたんだが、これじゃあ何も言えねえなあ」

 いち早く事実を事実として受け止めたらしいバラダーが笑う。彼の器は、ガタイと同様やはり大きい。

「そうだね。Cランクといえばもう一人前だからね」
「うん……見事……天晴れ……」

 褒められると恐縮してしまう。

「でも、足りないところがたくさんあるのよ」

 その流れを断ち、ミューラが切り出した。何を言おうとしているのか分からない太一と奏は、黙ってエルフの少女を見詰めている。

「足りないところ?」
「ええ。あたしたち、Cランクになるのに一ヶ月ちょっとしか経ってない。Cランクともなれば、大体なんでも経験していると思われるものよね」
「なるほど」
「……そういうこと……」

 ミューラが何を言いたいか察するラケルタとメヒリャ。

「おいおい、二人だけで納得すんなよ」
「全く。本当に脳筋だ」
「ああん!?」
「彼女は受けたことのない依頼がたくさんある、って言ってるんだよ」
「んなもん、俺たちだってそうだろうよ」
「……そうじゃない。ミューラは、経験の無い……依頼のジャンルがある……そう、言ってる」
「……つまり、どういうこった?」
「例えばだよ? 討伐依頼はやったことあるけど、護衛依頼は受けた事が無い。採取依頼は経験してても、探索依頼は未経験。多分、そういう事を言ってるんだよ」
「何だ。護衛依頼受けたこと無いのか」
「例えだよ、例え」

 ラケルタの言っている事は当たっている。護衛は一度だけだし、探索は未経験だ。それ以外にも野営の仕方や、武器防具の手入れを自分でやらねばならない事もありうるし、簡単な怪我の応急措置や一般的な病の治療に解毒法も必要、トラップの解除だって必要な技術だ。覚えなければいけない事はたくさんある。
 一般的には失敗したときに足りないものに気付き、一つずつ補完していくもの。無論バラダーたちもそうやって力を付けてきた。
 しかし太一と奏は、ここまで一度も依頼をしくじっていない。順調に来すぎてしまったがゆえの、不足ポイントだった。

「だから……炭坑探索の依頼を……?」
「ええ。いい経験になると思って」

 Dランクとしては難易度が高い依頼だが、一ヶ月でCランクに上がれる腕があるのなら、少し物足りないかもしれない。
 と、何かを思い付いたのか、バラダーが楽しげに笑った。

「よおミューラちゃん。それ、俺たちにも一枚噛ませろよ」
「え?」
「俺にいい案があんだよ。お前らもいいよな?」

 確認しているようで、バラダーが一人で既に決めている。
 ラケルタとメヒリャが、また始まったよ、という顔をしていた。
 ミューラがこちらに小さくサムズアップを向けてきた。この展開を狙ったようだった。
次回以降の簡単なあらすじです。



太一がみた夢。

思い知る未熟さ。

異世界に来て圧倒的な力を得、苦労をしてこなかった太一と奏が知る現実。

そんな中、一人の行動が二人を揺るがす。
彼等は、どのような答えを出すのか。


それを見ていたミューラもまた、経験したことのない複雑な感情が揺れる。


そして訪れる脅威。


味わう恐怖に、抗えるのか。





アニメ予告のナレーター風にしてみました。
二章の今後の流れです(笑)
楽しみに思って頂けたら幸いです。自分に適度なプレッシャーをかけて頑張ります!
+注意+
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