プロローグ
本作は、夜の街で人間と妖怪が交わる物語を描いた、一話完結型の現代あやかし譚です。
今宵、妖怪ネオン町の扉が開きます。
この世には、まだ人間に知られていないものが、たくさん存在している。
科学では説明のつかない出来事。
夜道で感じる、誰かの視線。
確かに見たはずなのに、朝になれば夢だったと思ってしまう、不思議な光景。
人々はそれらを見間違いや偶然と呼び、やがて忘れていく。
しかし、それらは決して幻ではない。
ここは、どこにでもある夜の街。
日が沈み、色とりどりのネオンが灯れば、昼間とは異なる顔が現れる。
酒に酔った者たちの笑い声。客を呼ぶ店員の声。誰にも言えない寂しさを抱えながら、行き交う人々。
この街には、欲望が渦巻いている。
金を求める者。
愛を求める者。
誰かを憎む者。
過去から逃げる者。
そして、たった一つの救いを求める者。
そんな人間たちを、ネオンの陰から見つめている存在がいる。
古びた店の軒先に。
酔客が通り過ぎる細い路地に。
誰もいないはずの店の片隅に。
人間の姿に紛れ、この街で暮らす妖怪たち。
彼らは人の欲望を嘲笑うこともあれば、利用することもある。
気まぐれに手を差し伸べ、ときには人間以上に深く傷つくこともある。
これは、人間の知らない夜に生きる者たちの物語。
光り輝くネオンの裏側で、今夜もまた、新たな出会いが生まれようとしている。
ようこそ――妖怪ネオン町へ。
プロローグをお読みいただき、ありがとうございます。
次回「第一夜」では、持ち主からこぼれ落ちた影を拾う小さな怪異――トボネラの物語をお届けします。
妖怪ネオン町の夜を、これから一緒に見届けていただければ幸いです。




