1.目覚め
大阪上空200メートル
5機の機動兵器が隊列を組み、西へ飛行している。
「こちら第三部隊隊長アルファだ。第二部隊応答せよ」
アルファは少し待ったが、通信機から返答が来ることは無かった。
「隊長」
ブラボーの震えた呼び声にアルファは息を飲む。
「各隊員に告ぐ。奴らに決して背を見せるな。後退する時もだ」
「「「「はい」」」」
隊員達の声が震えている。
それも仕方のない事だとアルファは思った。
1週間前までは彼らは一般人だったのだから。
量産型人型機動兵器『グール』が実戦運用されてまだ2ヶ月も経っていない。
戦死率ほぼ100%の戦場に放り出されて怯えない者は居るはずがなかった。
防衛隊に出来ることは侵攻の時間稼ぎのみ
滅亡までの時間をいたずらに伸ばすだけ
それでも、ほとんどの主要国家、都市がたった1ヶ月で滅ぼされた中、まだ時間稼ぎが出来ていた事は奇跡に近かった。
ビーッ!!
レーダーに敵機が映り、アラームが鳴る。
アルファは反射的に敵機の位置を確認する。
上空を舞う黒い影の大群、それはカラスの群れに見えた。
アルファは敵機に気付かれない距離でグールを空中に停止して、周囲を観察する。
ビルの上ではコックピットが黒く焼け焦げた第二部隊のデカールが貼ってあるグールが墜落しており、黒い三角形の戦闘機の様なモノが道路で炎上している。
人は何処にも居ない、ただ、地表には焼け焦げた様な跡が夥しい数残っていた。
(ここももう終わりか)
アルファは深呼吸をした。
三十年は帰ってなかったが、地元の終焉を目にしてしまったアルファには、心を落ち着ける必要があったからだ。
同じ様な風景は東京からここに来るまでに何度も見た、小さな都市、町、村は守るという行為をする事すら出来ない。
「撤退だ。我々に出来る事はもう無い」
アルファは自身に言い聞かせる様に指示を出す。
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
アラームが鳴り響く、それは敵機が何機も接近していることを示していた。
「う、うああああ!」
叫び声を上げたのはチャーリーだった。
敵機に見つかり、恐怖で錯乱していた。
「チャーリー、落ち着け! デルタ、エコーはチャーリーの援護を、ブラボーは退路を確認しろ」
アルファも敵機との戦闘は初めてだった。
長い間、海上で指揮をとっていたが、壊滅し、生き残ってしまったアルファは防衛部隊への入隊を志願するしか無かった。
「了解!」
返事はブラボーの1人だけ
デルタもエコーもチャーリーの恐怖が感染し錯乱状態に陥っている。
誰だって恐怖しない訳が無い、コックピットのパイロットだけを的確にレーザーで狙ってくる無機質な殺意、装甲により数秒機体が耐えてしまう事により、逃げ場のない死に追い詰められる
そんな恐怖にどれだけの人間が耐えられるだろうか
チャーリー機に急接近しながら黒い敵機は銃口にレーザーを溜めている。
「う、うああ、ああああ!」
チャーリーは銃を乱射する。
一発が敵機の装甲に直撃するが、致命症にはならず、ふらつきながら、チャーリーに迫る。
そして、全機がチャーリーに向けてレーザーを撃った。
奴らは知っている、どの程度の威力で撃てば前面の装甲を破れるかを、何秒撃てば中にいるパイロットを消しされるかを
チャーリー機は小さな爆発を起こし、墜落していく。
奴らは破壊すらしない、パイロットさえ殺せば良いという事を知っているのだから。
「チャーリー!!」
アルファは叫んだ。
それが無駄だと分かっていても。
「た、助けて!」
その言葉を最後にブラボーとの通信が切れた。
アルファの視界の端で、ブラボー機が落ちていく。
デルタ、エコーも落ちた。
アルファは錯乱した彼らを盾にして、敵機に銃を撃った。
5機落とせた。
グールと敵機の性能に差は無かった。
ただ、圧倒的な数の差だけがあった。
ただ1人残ったアルファ機を敵機が取り囲んでいた。
レーザーを溜めているのは5機、取り囲んでいるのは10機以上、遠くで空を旋回しているのは100機以上
逃げ場は無い
グールが銃を下ろすと同時にレーザーが発射した。
「そうか、これが、人類の終わりか……」
アルファはその呟きと共に、消えた。
黒く焼け焦げたコックピットのグールだけが人類が居なくなった地上に落ちていった。
暗く長い廊下を1人の少女が松葉杖をつきながら急いでいる。
彼女の身体は限界を超えていた。
細い手足は包帯が巻かれていて、顔にはガーゼと絆創膏が所々に貼られている。
髪も手入れ出来てない。
ボブのウルフカットの黒髪で赤いメッシュにしてもらっていたのに。
全身が痛い。
まともに眠れていないのでクマが出来ている。
それでも彼女は歩き続ける。
「今は……私しか……戦えないから」
彼女、小鳥遊そーだは、息も絶え絶えに、挫けそうな心を奮い立たせる様に自分に言い聞かせる。
廊下に取り付けられたスピーカーからノイズが聞こえてくる。
「おい、カタパルトに急げ。エリザベートは最低限戦えるまでの整備は出来ている。あとはお前が乗るだけだ」
スピーカーから聞こえてきた女性のいつもの冷徹な声にそーだは下唇を噛む。
「今向かってるところ!」
そーだが吠えた瞬間、爆発音と同時に地面が揺れ壁に叩きつけられた。
そーだは頭を抱え、床にうずくまる。
するとガシャンと何かが割れる大きな音が聞こえてきた。
そーだは音のした方を向くと、ある部屋のドアが開いている。
「博士の研究室……」
そーだは何かに呼ばれた気がして足をひきずりながら研究室に歩く。
そーだは力無く壁にもたれかかりながら中を覗く。
分厚いガラスの破片が散らばり、透明の液体が床に広がっている。
そして、液体の中心には人が入れるサイズの楕円形のカプセルが落ちていた。
男は息苦しさに目を覚ました。
体が重い、何か大きな物が覆い被さっていて、体を動かす事が出来なかった。
床は謎の液体で水浸しになっていて、覆い被さっている何かと床の隙間から光が差し込んでいる。
ペタっ
足音と共にカランっと軽い物が倒れる音が聞こえてくる。
「はぁ、やっぱり……」
ため息と諦めの混じった誰か呟きが聞こえた。
(誰か居るのか?)
男は助けてもらおうと口を開くが声が出ない。
まだ体内にかなりの量の液体が残っていたらしく、声の代わりに液体が吐き出される。
男は隙間からなんとか手を外に出し、
親指を上げた。
十秒くらい経ったが外には何の反応も無い。
仕方なく男は液体と床を叩いて音を出す。
「ひぇぇ!? 腕の幽霊!!」
間抜けな叫び声に男は液体を全て吐き出して、
「生きてますけど!!」
「大丈夫?」
そーだは困惑の表情で男に手を差し出す。
男はそーだの手を取るとカプセルの下から引っ張られ這い出る。
「幽霊じゃない……つもりだけど、死んでたんだよね、たぶん」
男は記憶を全て失っていたが、辛うじて多少の知識だけは残っていた。
「うん。心拍数はずっと0だったし」
そーだは困った顔で笑う。
「小鳥遊そーだです。苗字が小鳥遊で、名前がそーだ。みんなもそーだって呼んでますから、そーだって呼んでくださいね。絶対に……ね」
そーだは笑顔だったが何故か目だけは笑っていなかった。
「そーだ、うん、分かった……」
男はそーだの眼力に気圧され、何度も頷く。
「……その」
男は口を開いたものの口籠る。
そーだは首を傾げて言葉の続きを待つ。
「何も覚えて無いんだけど、その……僕の名前を知らないか?」
男は困惑の顔で言った。
「おい! 失敗作、早く来い!」
そーだが口を開いた瞬間、ノイズ混じりの怒声が響いてきた。
そして、そーだの顔は青ざめ、男の手を取る。
「と、とにかく、来てください!」
そーだは男の手を引き、廊下に出た。
そして、一目散に何処かに向かって走っている。
男はそーだ引っ張られながら何とか走る。
10センチくらいそーだの方が背が低く腕も細いが速く力強く、目覚めたばかりの男には着いていくだけで必死だった。
「は、博士が怒ってるんです!!」
そーだは叫びながら加速していく。
2分近く豪華客席の廊下の様な場所を走り、ある部屋の前にたどり着いた。
「そもそも、ここは一体……?」
男の呟きにそーだは振り返って答える。
「ブリッジですよ」
男は言葉が出ず、口を閉じる。
「偽装空母ハーロット。知らないと思いますけど」
そーだは、顔を伏して静かにドアを開けた。
「博士、ごめんねっ」
ブリッジに入るとすぐにそーだは全く反省していない顔で言い切った。
そーだは舌をペロっと出している。
ブリッジの中は静寂に包まれている。
二桁を超えるモニターと椅子、大きな窓からは曇った空が見える。
曇は果てしなく空を埋め尽くし、暗い灰色が支配している。
部屋の中央の作戦会議用と思われる大きなデスクの側の椅子に1人の女性が座っている。
長い黒髪で白衣を着た凛とした博士と思われる女性がタブレットの画面を睨みつけている。
「早く行け」
博士はそーだに見向きもせず吐き捨てる様に言い放ち、そーだは芸人みたいにコケた。
「博士が色々改造してたゾンビさんが蘇ったのに? 良いの?」
イジってたという不穏な言葉に男は怪訝な顔をするが誰も気にしていない。
「君は状況を聞いているか?」
博士は相変わらずタブレットしか見ていないが、そーだと話す時に比べて男への言葉に棘は無かった。
「聞いてません」
男の返事に博士はタブレットをデスクに置き、視線を合わせる。
「異星人の侵略により、現状生存を確認出来る人類は君を除き6人となった」
博士の言葉と同時に窓の外を戦闘機くらいの大きさの何かが通り過ぎ、近くの外壁で爆発が起こった。
「人類は確実に滅ぶ」
博士はしっかりと男を見ている。
「しかし、人類の滅亡が敗北により迎えるべきでは無いと私は思っている」
博士の声は冷静で落ち着いていて、淡々としている。
「そして、6人、君以外に生きている」
男はそーだを無意識に見る。
そーだは唇を噛み俯いていた。
「戦う気はあるか?」
博士はただ男を見ていた。
無表情で何を考えているか分からない。
博士の問いに男は口を開いた。
「ある」
男は博士と真っ直ぐ視線を交わしはっきりと答える。
男は一度目を閉じて、そして、開ける。
「この空母にも逃げ場は無いし。そんな大した理由じゃなくても別に問題無いよね?」
男は自分の手のひらを見る。
(戦う力があるから、僕はここに居て、あなたは甦らせる研究をしていた……そうでしょ?)
男は心配そうなそーだを見て、微笑む。
目が合ったそーだは少し恥ずかしそうにしている。
「それなら早く行け。言葉だけで終わる事になる前に」
博士は再びタブレットに視線を戻した。
「行きましょう! ゾンビさん!」
そーだは男の手を取って走り出した。
ブリッジから走って少しの所にカタパルトはあった。
そーだは少し躊躇ってドアを開ける。
その手は震え、汗をかいていた。
ドアの先はかなり巨大な格納庫になっていて、18メートル近くある3体のロボットがハンガーに格納されている。
真紅の機体、漆黒の機体、純白の機体、全ての機体は、女性的なシルエットをしていた。
真紅の機体は胸部のコックピットが開いていたが、他の2機は胸部の装甲に焦げ跡があり、少し溶けて歪んでいる。
「どうですか? 私達のレヴナント・カーミラは」
そーだは真紅の機体のハンガーに歩きながら誇らしげに言った。
「左腕と右脚は?」
男はそーだを見る。
「海の底……ですね」
そーだは何故か虚な目で屋根を見つめている。
「そ、そう。それで僕が乗る機体はどっちなんだ?」
男は困惑して眉を顰める。
「カーミラですよ?」
そーだは笑顔で答えた。
「え? 複座式なのか?」
男はさらに困惑して聞き返す。
「違いますよ。ダーリンがパイロットで、私がOS担当です。私はカーミラと繋がってるので」
そーだは首を傾げる。
男は思考停止して真顔で固まった。
「博士がスピーカーで文句言ってくる前に乗りましょう!」
そーだは男を引っ張り、カーミラの胸部にあるコックピットに乗せ、男の膝の上に座った。
「重くないですか? 頭が邪魔だったら頑張って小さくなりますから言ってください」
そーだは慣れた手つきでシートベルトを手に取り止まった。
「あの、シートベルトをつけてもらっても良いですか?」
「あ、ああ」
我に帰った男はシートベルトを受け取り、そーだが手に取った小型タブレットを眺めながら付ける。
このタブレットでOSの操作をしている様だ。
数秒後、壁全面のモニターにハンガーの景色が映し出される。
「いつでも出られます。ダーリンも準備が出来たら、アームレスト、肘掛けに手を置いてください」
そーだに言われた通りに男が手を置くと、アームレストから出てきた枷に手首が拘束された。
男は慌ててそーだの方を見ると同じ枷がそーだの手首にあった。
枷には謎の透明な細いチューブと鎖が繋がっており、操縦桿を動かす自由は与えられている。
「操縦桿に手は届きますか?」
男は操縦桿に手を伸ばす、不自由無く操縦桿は動かせた。
「ところでこれは何?」
男はそーだに枷を見せながら半分諦めた様な声で聞いてみる。
「っ……大丈夫そうですね。もう行けます?」
そーだは一瞬何かを言おうとしたが、とぼけた。
「分かった。行けるよ」
男は覚悟を決めて操縦桿を握った。
「博士、行けます」
そーだが通信を開く。
「分かった。今、ゲートを開く。武装は確認したか?」
ゲートが開き、外の仄暗い光が差し込んでくる。
そーだはタブレットで機体の最終チェックをしている。
「……パイロット、しっかりと確認しておけ」
男をどう呼ぶべきか困ったのか妙な間が空いた。
男はモニターを見るが何処にも武装欄が無い。
「……やっておいた方が良い」
博士の声は少し呆れていた。
「行けそう? そーだちゃん、敵がゲートに気付いたみたい」
通信から博士とは違う優しさを感じる女性の声が聞こえてくる。
「大丈夫です。天音さん」
そーだは真面目な声で応えている。
「必ず生きて帰ってね、そーだちゃん」
天音の声は祈る様な泣いている様な小さな声だった。
「行けます?」
そーだはタブレットを置いて、手を操縦桿を握っている男の手に重ねる。
そーだの手は小さく震えていた。
「行こう」
ハンガーが格納庫のゲートの前まで移動する。
「あの、博士? そーだちゃんと乗ってる人は?」
通信からボソッと天音の声が聞こえてくる。
「少し通信を切る。行け」
博士は通信を切った。
「レヴナント・カーミラ、発進します!」
そーだの声に合わせて男はカーミラを発進させる。
曇天の空の中、正三角形の黒色のソレらは隊列を作り、機械的な動きで小さな島に偽装している空母ハーロットにレーザーを雨の様に浴びせている。
ゲートから飛び立ったカーミラは空を踊る様に翔ける。
「敵機の数はドローン型が50くらいです」
そーだはレーダーや周囲を確認している。
「50機……」
男もカーミラの動きを確かめながら、敵機を目で追う。
5×5の隊が2隊、隊列が一度も崩れず寸分違わぬ動きで攻撃と飛行を続けている。
「あ、あー、通信大丈夫ですか?」
通信から天音の声が聞こえてくる。
「大丈夫です」
そーだが返事をする。
「はい、オペレーターと医療班を担当してます、当麻天音です。パイロットさんも大丈夫ですか?」
天音は先程とは変わって、引き締まった丁寧な言葉でしっかりと話す。
「僕も大丈夫です」
男はカーミラに気付いた25機の隊がこちらを向いた事を確認し、ハーロットから距離を取り引きつける。
それに気付いたもう1つの隊もハーロットへの攻撃を止めて、カーミラを追いかけ始める。
「では、敵機についてですが、通称ドローンと呼ばれています。武装はレーザーのみで攻撃力はそこまで高くないので、何度も攻撃を受けなければ大丈夫です」
男は天音の説明を聞きながら、大きく動いてレーザーを避ける。
そーだも一言も発さずにタブレットに何かを入力している。
「囲まれない様に注意してください。コックピットの位置を集中攻撃をしてきます」
天音は落ち着いた声で冷静に話している。
「だから、あの2機の胸部が焦げてたのか」
男は格納庫のカーミラ以外の2機を思い出した。
「了解」
男は通信に答えながら、レーザーを回避する。
カーミラの動きに慣れてきた男は、少しずつ動きは小さくしながらレーザーを避ける。
レーザーがカーミラの横を通る距離は3メートル、2メートル、1メートルと縮んでいく。
そして、ドローンとレーザーの中を掻い潜り、無傷でドローンの背後まで切り抜ける。
「ふむ。これは……想定以上か……」
通信から博士の驚きが隠せない声が聞こえてくる。
「やっぱり……」
天音の声は何故か悲しそうに少し震えていた。
カーミラはハーロットからかなり離れて、通信限界地点まで来ていた。
その間もドローンの追跡とレーザーの掃射は止まる事は無かった。
(当たらない……50機から撃たれ続けているのに……全部回避しきってる)
そーだはモニターをただただ見ていた。
絶望したくなる様な光景だ。
レーザーが雨の様に降り注ぐ、逃げ場は無い。
しかし、その中を少女が踊っているかの様な動きでカーミラは避け続ける。
(これが……本当のカーミラの力……この人なら)
そーだはタブレットのとあるファイルにタッチする。
するとモニターに武装が表示される。
「ゾンビさん」
そーだは祈る様な声で男に声をかける。
男はモニターに表示された武装を見て、操縦を止めた。
カーミラが動きを止め、空中で停止する。
「ゾンビさん!?」
そーだが叫ぶが、カーミラはドローンに包囲された。
ドローンは逃げ場を無くしたカーミラを仕留めるべく、レーザーをチャージする。
「パ……ロットさ……!」
途切れ途切れの天音の叫び声が通信機から聞こえてくる。
そーだは一瞬だけ男の顔を見る。
「お願い! 逃げて!」
ドローンのレーザーのチャージが完了する直前、通信機から鮮明な天音の悲痛な叫びが聞こえた。
ドローンから最大火力のレーザーの集中砲火が放たれる。
その刹那だった。
赤い線
円を描いた赤い線状のビームの残滓の軌跡
カーミラが放ったその一撃は、7機のドローンの砲門を切り裂いていた。
「クリムゾンウィップ」
そーだが呟く。
カーミラが握っていたのはウィップブレードと呼ばれる剣と鞭を合わせた様な近接武装だった。
切り裂かれた7機のドローンはチャージされた最大出力のレーザーのエネルギーに耐え切れず大爆発を起こす。
大爆発は近くのドローンを巻き込み、レーザーの照準をずらしていく。
ずらされた照準は、あらぬ方向や本来仲間のはずの他のドローンに向けられ、レーザーが放たれる。
仲間のドローンの爆発の巻き込みと仲間からのレーザーの同士討ちにより次々とドローン達は爆発していく。
大爆発の中、カーミラ1機だけが佇んでいた。
「敵機の反応0です! もうダメだと思いました」
天音の安堵の声が聞こえてくる。
そーだは力を抜き男に寄りかかる。
「私、力になれたかな……みんなを……」
そーだは男と目が合うと顔を赤くして俯いて、黙ってしまった。
「計算づくか? 随分な演出家だな」
通信からは博士の呆れているが安堵した声が聞こえてくる。
男は操縦桿から手を離し、目を閉じた。
そして、手汗で濡れた手のひらを見て、笑う。
「偶然かな。避ける気だったし」
「そうか。もう少ししたら帰投の準備が出来る。それまで待機するか。機体を慣らしても良い」
博士が通信を切ると、そーだは深呼吸をし、タブレットを操作し始めた。
カーミラは勝利をゆっくりと味わうかの様に静かに空中に佇んでいる。
ただ、空は暗雲が立ち込め雷鳴が鳴っていた。




