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決意
作屋守は震えた。武者震いではない。悪寒とは言い過ぎになる。薄気味悪さ、があえてなら近いだろう。辞書がある。本がある。イメージ画像がある。ネットがある。そこには鬼の情報が溢れている。ミシハセもある。けれど鬼本人、ミシハセ本人に作屋守が会ったわけではないのだ。体躯や雰囲気や匂いや、他には圧とか。あるいは物腰とか、そして言葉使い。紙の上のインク、色彩の集合体が鬼やミシハセなのだろうか。あるいはそうかもしれない。会ったことがないのだから。それでも信じてしまう。鬼とはこういうものだと、ミシハセとはこういうものだと。「作屋守」のタイトルで辞書に載り、本に描かれ、ウィキペディアにでもつづられる、
そんなことを想像してみたら、居ても立っても居られないくらいに小刻みに震えだしてしまったのだ。
宿屋の主人の話を思い出した。震えは止まった。漫才師でもアナウンサーでも声優でも講談師でもない主人の要領を得ない、そう不器用な話の方がミシハセの姿が顕著に感じられた。
「もう一度行こう」
作屋守は自分でも思いつかなかった気持ちをつぶやいた。それは小さな決意だった。




