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ミシハセ  作者: 金子よしふみ
第四章

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検証

 担当者からの資料のおかげで、失念していたことに気づかされた。『佐州拾遺記聞』には当然ミシハセについての他の章があるかどうか、気にも留めていなかった。研究論文は多くはない。一地方の物語とあってそれは当然だろう。ただ研究者の氏名が分かったので、執筆した他の論文や著作をたどることで、『佐州拾遺記聞』中の物語内容や人物に迫ることができる。外堀から攻めるというやつだ。

 確かに遠島された中に七右衛門のモデルらしき人物はいた。が、彼には歌の才能がなかった。そのうえ、若干年代がずれている。また、史実は時として知りたくはなかったうさん臭さを暴露する。暗殺するために身分を隠して来島した者がいる。絵師や薬師、白拍子などなど。暗殺対象は貴族や武将などなど。遠島された上に抹殺されるとは。いや、建前上遠島で情状酌量と見せながら、やはり邪魔として命を狙った、と言ったところか。それらの職業がかりそめであるのは容易に想像できる。想像できるし資料が明確にしてくれている。すなわち、忍者である。それならば。作屋守は推測する。暗殺ばかりではない。忍びの者、特有の業務とくれば諜報活動だ。収集したのは情報ばかりではなかろう。資料が指し示す。何か、を奪取するために来島した忍者もいる、らしい、と。何か、としか言えないのは他に資料がないのだ。ただ、こういう記述もある。とあるやんごとなき御身分の病状を根本的に改善するためには、異形の者の生肝が必要。そんな中に、和歌が上手い者もいた。などなど。

 仮説が浮かぶ。プラモデルと同じだ。いくつかのプラモデルを作ろうと開いた。部品が混在してしまった。似ていると思って組み合わせる。出来上がったのは、完成図とは程遠い不格好な姿だ。それはそれである意味、味わいがあるかもしれない。仮説はミステリーにしかならない、それはそれで面白いかもしれない。恣意が仲立ちをしたら、本当の姿ではない。七右衛門がラストでいなくなった理由が、作屋守に合理的に解釈できるとしても。説話集に論理だとか実証とかを求めるのは野暮というもの。本当に素性がやばい人が派遣され来島していたらそもそも文学作品として成立していたかどうかも怪しい。

 ところで、自分の経験、出張訪問からここまでの一連がゲームだとしら、どこまでクリアしていることになるだろう。ミシハセの正体を明らかにする、と言うのが最終攻略とすると……自分としては四方八方まで尽力した、はずだが、もうにっちもさっちもいかなくなって、とっちらかった現状は、名プレイヤーからは程遠いかもしれない、なんて格好をつけて黄昏てみる。と、ここまでをゲーム中のキャラとして作屋守が動いていた、動かされていたとしたら、はてさてそれこそプレイヤーは果たして何者だろうか、神様か、はたまたミシハセか。いやいや、誰か分からないのであれば、もうその時点でミシハセと大差ないのではないか、再び作屋守は格好をつけて黄昏てみた。


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