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異世界で闇落ちした俺は大好きだった彼女の宿敵(ラスボス)となりました。  作者: ドットオー
第4章 来たる魔王軍とはみだしモノたちのパーティー

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第44話「亜人の戦士」

「ヘタレのおじさんこんなところで何をやってるの?」

「ナユタ少年は相変わらずだな。あどけない顔で刺さることをいう」

「おじさん、あのときよりいい顔しているね。月野木さんたちと一緒にいるから?」

「さぁな」

さっそく2人だけの世界に入っちゃっているけど、ディルクさんと那由他君はどういう関係なの⁉︎

と、私が戸惑っているうちに那由他君が動き出した。

那由他君の姿が瞬時に消えると、ワイバーンの全身をほとばしる閃光が駆け巡る。

鋼のような肉体に幾重にも切り傷が走りたまらなくなりワイバーンは悲鳴をあげる。

那由他君の紋章の能力は”光“

剣道道場を開いている家で育ち、最年少で全国大会を優勝するほどの腕前を持つ那由他君は天才剣士の異名でメディアを騒がせた。

紋章が与えた光の如きその速さはこの異世界で那由他君の才能をより輝かせる。

那由他君の神速の剣には誰も追いつけない。

ワイバーンは身動きが取れず、防ぐことすらできない。

すると那由他君の戦闘に気をとられている私に、エルフの女性が剣を抜いて飛びかかってくる。

エルフの女性が勢いよく横に払ってきた剣撃を、私は正面に構えた剣で凌ぐ。

舌うち混じりに「隙のない構えだ」と、こぼすエルフの女性はすぐさま二太刀目を繰り出してくる。

今度は私の頭上、右斜め上から。

「さきほどから見ていれば師範の教えを忠実にこなしているような動きだ」

私は上段に剣を構え直して備える。

「それだけでも充分すごいことだ。だが⋯⋯」

エルフの女性が急に視線を逸らした。

ハッとした瞬間、腹部に鈍痛が襲いかかる。

「⁉︎」

気づけばエルフの女性の膝が私の腹部にめり込んでいた。


”フェイント⁉︎“


「故に一番対処しやすい」

私は睡液を吐き散らしながら蹴り飛ばされた勢いで床に倒れ込む。

痛みに悶えている私に、エルフの女性は攻撃の手を緩めることなく剣を振り上げて迫ってくる。

「何やっているの!」

突然ミレネラさんが私を庇うようにしてエルフの女性との間に割って入ってくる。

「このエルフは私がなんとかする。あんたはパーティーのリーダーでしょ!周りをよく見て指示を出しなさいよ」

ミレネラさんの叱咤に私の頭はガツンとやられた。

いつまでも守られている側でいるのは嫌だと、ルメリアさんの剣を覚えて、みんなと一緒に戦えるようになることばかり考えていた。

だけどそうじゃないんだ。

危うくパーティーを全滅させるところだった。

「ありがとうミレネラさん! ディルクさんはゴーレムをお願いします」

「おう! 任された」

「あかねはあのうっとおしいガーゴイルを落として! 東坂君は那由他君のサポートをお願い」

「ああ!」

「任せて。天音」

みんなの攻撃が相手にクリティカルにキマりだした。

そうだ。みんなの特性を活かしてクエストを優位に進めるのが私の役目だ。

流れが一気に変わった。

その隙に私はポーションでミザードさんを回復させる。

強くなることに気を取られて、大事なことを見失っていた。

私って何度同じ反省を繰り返して来たんだろうか⋯⋯

私の判断でみんなを生かすことも殺すこともできてしまう。

だから私に求められているのはみんなで生きてクリアする選択だ。

「なんだか迷いが晴れたようだね。月野木君」

「ありがとう。陽宝院君」

「僕としてはおもしろくないんだがね⋯⋯」

「え?」

聞き取れなかった陽宝院君の言葉を聞き返そうとしたしたとき、那由他君と東坂君の同時攻撃によって、ワイバーンがついに膝を屈した。

「ガルード!」

エルフの女性がミレネラさんを突き飛ばして、取り乱した様子でワイバーンに駆け寄る。

すぐさま手のひらに光の球体を作り出して、ひどく血が流れている肩の傷口にそっと当てる。

「リルフィン、すまない⋯⋯」

「「「しゃべった⁉︎」」」

「見た目は大きく異なるが彼らもまた人間なんだろうね」

陽宝院君の言葉にハッとさせられる。

だから異世界の人たちは彼らを”亜人“と⋯⋯

「みんな武器を下ろして⁉︎ 攻撃をやめて」

「どうしたの天音⁉︎」

「呆気にとられるよね。ごめんね。だけど彼らとは剣より言葉を交えた方がいいと思うの」

私はワイバーンの目を真っ直ぐに見つめる。

通じたのか彼も肩の力を抜いて私と向き合ってくれた。

「お前たちは、この街に毒をばらまいた人間の仲間だな?」

「はぁ? 毒を吐いたのはあんたでしょ!」

「ちょっとあかね」

すぐさまエルフの女性が反論する。

「ガルードは口から炎は出すけど、毒を出したりしない」

「リルフィンもよせ」

「だけど、広場に人間の遺体を積み上げて何かをやってたんでしょ?」

「弔いだ。火を掛けて丁寧に葬った」

「ウソでしょ⋯⋯食べようとしていたんじゃなくて?」


「違うッ!」


ワイバーンが急に迫力のある顔で迫ってくる。

「ごめんなさい⋯⋯」

と、あかねは萎縮する。

エルフの女性は興奮するワイバーンの顔を抱きしめて、なだめるように優しく撫ではじめる。

ワイバーンもさっきまでの荒々しさがウソのようにおとなしくなる。

なんだろう⋯⋯2人の関係が羨ましく思えてきた。


「「ガルードをいじめるな!」」


突然、壁に空いた穴の向こうから小さな男の子と女の子が出てきて私たちに石を投げつけてきた。

よく見れば穴の向こう側にはたくさんの人たちが身を寄せ合っていた。

「みんな街に広まった毒から逃げてきた人間たちだ。ここに避難させ、こうして俺たちが匿っている」

「え? 何どういうこと⁉︎」

「俺も分からなくなってきたぞ」

あかねと東坂君が頭を抱える。私も頭の混乱がおさまらない。

気づけば私たちが悪者になっているしいったいなぜ?

「げに怖ろしきかなは人間よ。魔王様は人間を根絶やしにしろと威勢を張っていたが無辜の民に手を出すつもりはない。

しかし、同胞の命を容易く奪うお前たち人間には呆れた」

「どうやら月野木君たちの方に誤解があったようだね」

陽宝院君のひと言に頭の中で複雑に絡まった糸が解けた。

「そうか⋯⋯」

私はゴクリと息を呑む。ワイバーンさんとエルフの女性の方にゆっくりと歩み寄って手を差し出した。

「私は月野木天音。司祭です」

2人は顔を見合わせて戸惑った様子だったけど、エルフの女性が私の手を取って、私からの和解に応じてくれた。


***

ワイバーンのガルードさん、エルフのリルフィンさん、ゴーレムのロックガードさん、ガーゴイルのアウス3兄弟は

気の合う者同士で、パーティーを組んで冒険者をしていたそうだ。

魔王軍に参加してからは惨劇のあったこの街で自警団の活動していてくれたそうだ。

「我々もすまなかった。司祭殿とは知らず手荒な真似をした」

「いいえ。私もなったばかりですからまだまだこれからです」

「しかし、斯様なときだ。次に戦さ場で出会ったら容赦はしない」

「はい。私たちは負けませんから」

あかねが首を傾げる。

「それで結局、街に毒を撒いたのって何者なの?」

するとーー


「ガルード、だまされるな!」


さきほど石を投げつけてきた男の子が叫び出す。

「このお姉ちゃんたちは、お父さんやお母さんを殺したやつとよく似ている。仲間だ!」

「え?ーー」

衝撃が走った。凄惨な大量殺戮を実行した人物が私たちのクラスの中にいる⋯⋯

陽宝院君は男の子に歩み寄る。

「ねぇ、君のお父さんたちを殺した人物の舌には紋章がなかったかい?」

男の子の脳裏にその人物の姿がフラッシュバックされたのだろうか。

涙目になる男の子は口を紡いで、陽宝院君の問いにコクリと頷いた。

私たちは一様に言葉を失った。

「どうして稲葉君が⋯⋯」


***

クロム・ハンク子爵は両脇を兵士たちに抱えられたトルトン男爵を引き連れて、待ち構えていた稲葉の目の前に差し出す。

「クロム!我らは幼き頃より学院で一緒に学んだ仲だったはず、その友を騙し討ちにして恥ずかしくないのか⁉︎」

クロムとトルトンの脳裏には勉学と剣術の稽古に励む仲の良かった学生時代の光景が蘇る。

しかし、クロムは冷酷に兵士たちへ「黙らせろ」と命じる。

兵士たちはトルトンの膝を折り、力づくで顔を地面に押さえつける。

「我が友よ。喜べ。これから知事殿より亜人に屈せぬ力を賜るのだ」

「何を世迷言を言う!」

「見よ」

クロムの全身が櫛状に尖った毛に覆われ、蜘蛛を彷彿とさせるボーダー状の模様となる。

「ば、化け物⁉︎」

「安心しろ。お前もすぐにこの姿となる」

稲葉は不敵な笑みを浮かべて口を開く。

「お前たち貴族は、家柄とか爵位などとほざいて素直に俺に従おうとしなかった。

だから俺は考えたんだ。ちっとも言うこと聞かず、終いには裏切る奴をどうしたら従わせることができるかって。

そしたら閃いたぜ。物言わぬ怪人にしちまえばいいんだって。そうすれば従順な家来になる」

すると、大きなサソリの尻尾がトルトン男爵の心臓部を突き刺す。

「うっ!」

トルトン男爵の瞳は紫に染まり胸を抑えながらのたうちまわる。

「うああああああ」

稲葉はもがき苦しむトルトン男爵の様子を見つながら声に出して笑う。

「ハハハハハッ」

そして邪悪なオーラに包まれたトルトン男爵の全身がみるみるうちに蜂を彷彿とさせる異形のものへと変わる。



つづく




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